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汽車を待つわたしの横でねこは小鳥を気にしてる

やっとこの小さな町を捨てることができる
大きな街で暮らすことへの不安は、もちろんあるけれど
それを大きく越える期待に、わたしの胸は満ちている

あと二十分くらいだ
二十分で、何が起こるというんだ
この町の、このわたしの、何が変わるというんだ

ひそかに想っていたあの男の子が
汽車が発車してしまおうかというそのとき
この駅に滑りこんできて
わたしの想いに応えてくれる
なんてこと、起こりっこない

走ってる汽車の窓から外を見てたら
わたしに向かって手を振ってくれる昔のクラスメイトが
なんて、そんなこと、起こるはず、ないんだから

わたしは、この小さな町をキライなまま
ひとりさびしく、いなくなる

はずだった……

汽車が来て、わたしが乗りこもうとしたときだった
駅員さんが

行ってしまうのかい、さびしくなるねえ
いままで、この駅を使ってくれて
ほんとうにありがとう

言ってくるから、気持ちが
わたしの気持ちが、まいってしまった

この町を、キライなまま行かせてほしかった
最後の最後に、そんなんじゃあ
この町の最後の思い出がそういうんじゃあ
わたし、また
ここに帰ってこなくちゃいけなくなる

まいっちゃったなあ
ほんとに、まいっちゃった
ぜんぜん涙がとまらなくって
ほんと、まいっちゃったなあ

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