平成最後の日に美智子さまの短歌にふれる

毎年「歌会始」という行事があるように、今でも皇族方は短歌を詠み続けている。その中でも特に目をひくのが皇后美智子さまの御歌である。失礼な言い方かもしれないが、図抜けてうまい。五島美代子に厳しく指導を受けられていたとの話もあり、それが活きた歌につながっているのだろう。

■被災地に寄り添う歌

平成18年(2006年)の歌会始には、次の一首を寄せられている。阪神淡路大震災の復興を詠んだもので、歌碑にもなっている一首だ。

笑み交はしやがて涙のわきいづる復興なりし街を行きつつ

上の句から、被災地を訪れた際のリアルな感情の動きが感じられる。「涙のわきいづる」には震災の哀しみと復興に向けた努力を積み重ねてきた人々への思い、さまざまな「涙」が含まれているのだろう。結句を「つつ」でしめたのも、歩みながら被災者と会話を続ける、まさにその時間の中にいるようすを表していて適切だ。

■吾子と皇統をおもう歌

平成31年4月末、改元の特番や特集が連日テレビで放送されている。その中で新天皇となられる皇太子さまを詠んだ一首も紹介されていた。

あづかれる宝にも似てあるときは吾子ながらかひな畏れつつ抱く

常に一歩ひいたところで皇統を見守る美智子さまの感慨が率直に現れている一首だろう。「畏れつつ」は、今でも美智子さまのスタンスにつながっているように思われる。この一首の中で詠まれた「吾子」がいよいよ天皇に即位される。どのようなお気持ちで明日を迎えられるのだろうか。



昭和から平成へうつる際に私は小学6年生で、昭和天皇のご病状が連日ニュースで流され、しめやかな雰囲気の中で改元を迎えたのを覚えている。それから30年の時を経て、改元を慶事として迎えられることを嬉しく思う。

【引用・参考】
・宮内庁ホームページ
・『皇后陛下御歌集 瀬音 新装版』大東出版社 平成19年

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