記事に「#ネタバレ」タグがついています
記事の中で映画、ゲーム、漫画などのネタバレが含まれているかもしれません。気になるかたは注意してお読みください。
見出し画像

異種恋愛譚~『うしみつどきどき古書店譚』tacocasi

(祝!!新装版として電書発行!!
新装版 うしみつどきどき古書店譚 (光文社 BL COMICS / Vinyl)2024年2月23日感想、ネタバレありますのでご承知おきください。)

だいぶ前にサイトで企画して挙げていたBLブックガイドを挙げ直していたんだけど、手持ちの分が終わった。24個挙げるのを目標にしていたのになんと14個。我ながらなんという根性ナシであることよ。
で、同じ企画で再開するなら一番目はtacocasiさんのこの作品にしよう!と自分の中で決めていた。

 私がこの方の作品を最初に読んだのはそもそも電書版だった。Twitterで流れてきた表紙絵が可愛いのでふらっと前知識もナシに購入して読んだら好きすぎて、紙本も買った。他の作品も電書で買った。なんだか現在は別の出版社から電書版の新装版が出ているので契約を変更されたのだろう。詳細は私には不明だけども。今チェックするとこの作品は紙本のみとなっている。事情が色々あるんだろうな~と慮りつつ、全力で応援したい。
補記*と言ってる間に新装版が電書にて発行された!!良かった~~応援しますとも!!(2024年2月21日)

ともかく、絵が好みなのだ。シンプルな線でどこか緩い色香があってそこがいい。
物語はそんなに裕福ではない大学院生・小宮君が下宿先に戻るところから始まる。彼の下宿先は古い民家の二四書房の2階の部屋。
店主・西陽蔵は一見強面だったが、小宮君の好みにはドンピシャだった。
時代も変わったな~とここで思うのが、小宮君はまったく自分の性癖に悩んでいない。自分の好みの店主と帰り道で買ってきた豆もちを一緒に食べて、甘い物好きでぱくぱく食べる陽蔵さんの顔を眺めて嬉しい。
下宿代は月1万。古民家といってもこの破格の条件が、要請があったら店番手伝ってくれ、だった。
大学院生の小宮君は要請に従って店番を引き受けるが、PCで原稿を書いたり調べ物をしたりしながら出来るので、全然Win-Winなのだった。

ある日いつもにまして不思議な二人連れのお客様が陽蔵さんの副業関係で訪問する。どこかクラシカルな服装(大正時代の洋装みたいな)の美人女性と制服の女の子。通した後で大きな地震が起き、直後悲鳴が聞こえて駆けつけると、なんと陽蔵さんが何か液体を被ってしまってしゅるしゅる~~っと縮んでしまう。若返りの薬を浴びて少年の姿になってしまったのだった。
ショタの人にも堪らん展開で、少年の陽蔵さんも可愛い。

陽蔵さんの副業というのがここで明かされるが、神様相手に質屋をやっているのだった。神様の作るものを仕入れて販売したり、逆に人間界の依頼を神様に持って行ったりする。この時点では小宮君は知らないが、実は陽蔵さんも中身は西家の屋敷神なのだった。

ファンタジックな展開なのだけど、すごく地に足がついた生活ぶり。
信仰が薄れつつある現代において神様たちが自分でお金稼いで神社の修繕費捻出したりする。信仰が薄れると実体化の力が弱まったりするという話もある。縁切りの神様が縁結びも兼ねているとか、元々は妖怪だったが縁切りが人間の益になったので奉られて神化したとか。なるほどあるある、と頷く。
元々の西家の子孫である本当の店主・西が友人の裏切りによって生きる気力を失い自死を図ってしまったのが、祖霊が神化した陽蔵さんが中に入ることになった原因だった。

何代も子孫を見守り家を見守ってきた屋敷神ニシ様。それに恋した小宮君は、諸々の事柄が判明してもこの恋は変わらないという。
神様と人間の恋。
それもすごく素直。何も迷いがない。
小宮君のものすごく自然体なキャラと、不器用でどこか抜けてる屋敷神ニシ様のキャラに読んでいて癒される。エピに出てくる各神々も、偉いのに人型取る時に変なTシャツ着てラフスタイルだったりする感覚が新しい。

なんだかんだあって、落ち着くところに落ち着いた二人がいちゃいちゃしながら古民家二四書房で暮らしてる様がとても良い。なごむ。疲れているときには特に染みる。
何回も繰り返し読んでしまう一冊なのだ。

(補足*昔、サイトで公開していたBL作品紹介文の既出原稿再掲が終わったのでここから新しい紹介になります。<24のセンチメント>15
初版はNUUDE COMICS 東京漫画社発行 2021年8月15日)

新装版 弦巻先生の作家生活 (光文社 BL COMICS / Vinyl) Kindle版 2024年1月26日発行
新装版 お守りくん (光文社 BL COMICS / Vinyl)Kindle版 2024年1月26日発行


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?