読書日記:「殺人出産」
『殺人出産』著:村田沙耶香
※この記事にはネタバレが含まれます。
この本の世界では、「子どもを10人産むと1人を殺すことができる」というシステムがある。
僕はこの本をTVで紹介されていたのを見て知ったが、あらすじから続きが気になり、読んでみた(買ったのは奥さんだが)。
この突拍子もないシステムを100%否定できる人は意外に少ないのではないか?と思う。
かく言う僕も、現代の常識や自分の倫理観からこのシステムを100%肯定することはないけれど、100%否定することはできない。
他に、少子高齢化を解決できる良い策があるわけでもないからだ。
ただ、個人的にはもう少し殺される側に有利なポイントがあってもいいのではと思う。殺される側は1ヶ月前に宣告を受けるが、例えばこの1ヶ月にお金をたくさん使えるとか。
話は逸れたが、こんな突拍子もないシステムがある世界の話がどんな風に終わりを迎えるのか、気になったのだ。
終わりまで見た感想として、正直僕はあまり好きな部類ではなかった。途中の描写にもあまり共感することはできなかった。
作中で”人間は誰しも人生の中で殺意を抱くことがある”的なことが書いてあったが、僕は生きてきた中で本気の殺意を抱いたことはないし、そこも共感することができなかった。(奥さんにこの話をしたら「あんたは幸せな人生を送ってきたんだ」と言われたから、もしかしたら共感する人の方が多いのかもしれないが。)
作中で、このシステムに違和感を覚えていた人物、早紀子の気持ちは共感できるところがある。
自分も違和感はある。ただ、この違和感はもしかしたら今の常識がある前提でのことではないのか?もし自分が生まれた時から、いやもっと前からこのシステムが当たり前のように世界にあった場合、自分は違和感を覚えただろうか?
ここで、強く自信を持って「自分は違和感を覚えた!」と言うことは残念ながらできない。
違和感を覚えたかもしれないし、覚えなかったかもしれない。
話の結末の好き嫌いは分かれると思うが、根本に何かを伝えようとしていることがあることはわかる。
実はこの殺人出産は短編集で、他にも3つの作品を収録しているが、実は似たような話になっている。
いや、話としては結構違うけど、似たように突拍子もない設定が出てくる話なのである。
その設定をすんなり受け入れられる人、受け入れられない人、両方いると思う。自分は受け入れられなかった人の方だ。ただ、この世界にはいろんな価値観の人がいる。最近、TVや社会でも多様性の重要性を説かれることは多い。
僕は異なる価値観に触れた時、それを受け入れられるか、受け入れられないかが問題ではなく、共存できるかが重要だと思っている。
また、話が本から逸れてしまった。結論を述べよう。
この本の結末は僕は好きではなかった。でも、いろいろ考えさせられた。
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