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まあお訳古今集 恋はいちごを添えて弐拾漆

皆様こんにちは! ずいぶん涼しくなってきましたね、ようやく息を吹き返しました自称作家の あまおう まあお です^ ^ノ

なんだか今年は天気が読めないというか、例年とずいぶん違ってよく分かんない感じですが、もう秋になったと解してよろしいんでしょうか? よろしいですね、反対意見はありませんね? はい、よーし、もう夏来なくていいよ、お疲れマウンテーン!!  ^ ^/~~

というわけで、一年で一番物寂しい季節に恋の歌でもみんなで見てゆきましょうか。では張り切りまして、ヒアウィゴー☆

恋歌五 在原業平
月やあらぬ 春や昔の春ならぬ 我が身ひとつはもとの身にして

月よ、お前は変わってしまったな。春よ、お前も俺の知る春なんかじゃない。俺は去年と同じこの俺なのに、あの人がいないというだけで世界がこんなにも味気ないものだなんて……!

これたぶん、業平様の歌の中でいちばん有名なやつですよ。伊勢物語の四段をご覧ください。
「去年を戀ひていきて、立ちて見、ゐて見、見れど去年に似るべくもあらず」
いやもう泣けてまうわ、業平様~! とは言えいちいちドラマチックな歌を詠むあたりが、まだまだ大丈夫そうなこの人が好きです!

恋歌五 藤原仲平
花すゝき我こそしたに思ひしか ほにいでて人にむすばれにけり

僕の花すすき。ひそかに愛したのは僕が先だったはずなのに、先にあいつが言ってしまったから、花すすきはあいつと結ばれてしまったんだなあ……#いちご訳

仲平さんは基経の次男で、時平の弟なんですね。
で、その兄貴がどうも花すすきこと、伊勢さんを横から取ってったようでして……弟の恋人を横取りする兄。うわー。
ただ気になるのはやはり「花薄」。一応花とは言ってるけど「この薄情女」という気がしないでもない。技巧より昼ドラ感が際立つ一首。

恋歌五 藤原兼輔
よそにのみ聞かましものを 音羽川渡るとなしにみなれそめけん

噂で聞くだけにしておけばよかった。あなたは決して渡らせない川のような女です。渡らせない癖にみなれさせるのですね。(見なれ/水馴れ)#いちご訳

この方、通称「堤中納言」らしいんですが、あの本との関連は?
歌の方は技巧冴える美しい恨み節という感じで、いいですね。渡るが関係するの隠語で、要するに返歌は来るけど逢ってくれない女なんでしょう。
あひ見ずは恋しき事もなからまし 音にぞ人をきくべかりける
を思い出しました。#堤中納言

恋歌五 凡河内躬恒
わがごとく我を思はむ人もがな さてもやうきと 世を心みむ

私が恋するときのように私を愛してくれる人がいたらなあ。それでもこの世は辛いものなのか試してみたいんだ。#いちご訳

さて、この「世」です。男女の仲と訳す人もいますが、直前に「うき」と来る以上「うき世」が意識されるはず。
しかしあるんですよねえ「うき世」で「つらい恋」みたいな用法……
私は「相思相愛ならハッピー」的意味で取りましたが「深く思ひ深く知らむ人のためにはこれにしも限るべからず」#任せた

恋歌五 在原元方
久方の天つ空にもすまなくに 人はよそにぞ思ふべらなる

空ほど遠くに住んでいるというわけでもないのに、僕はどうも圏外の男というわけだ……#いちご訳

アウトオブ眼中を雅に表現するとこうなります。
相当高貴な方なのか、単に相性の問題なのか。元方さんは藤原国経の養子と書いてあるので、藤原の女は在原家を軽くみています、という意味なのかもしれません。
まあでも現代でもこういうことは往々にしてありますから、なかったことにして次に行こう!

恋歌五 詠み人しらず
見ても又またも見まくのほしければ なるゝを人は厭ふべらなり

会いたくて逢いたくて。これじゃキリがないので、あの子は僕に馴れてしまわぬようにと我慢しているんだろうなあ! #いちご訳

そういうことにしておこうか!
男性の歌に挟まれているのでそう訳しましたが、女性の作だとすると、妙に厭味ったらしい感じがしてしまう。男は自虐に読めるのに、女だと変な圧を感じるのが不思議な歌です。
この時代の貴族の女性は基本的には待つだけなので、嫌味にも磨きがかかるんですかね……

恋歌五 紀友則
雲もなくなぎたる朝の我なれや いとはれてのみ世をばへぬらん

わたくしと掛けまして快晴の朝と解きます。その心は「いとはれて」(厭われ/いと晴れ)おります!#いちご訳

ついにダジャレまで……。いや、あなた女の子にモテない原因たぶんそれだと思いますよ? せっかく歌うまおなので、今後一切のダジャレを封印していただきたい。
ここから分かることは。おっさんのダジャレ文化は千年やそこらのものではない、ということです。
モテないのになぜ言ってしまうのか!

恋歌五 詠み人しらず
花がたみめならぶ人のあまたあれば 忘られぬらん かずならぬ身は

並ぶ花籠の網目、あなたの目には可憐な花花花。私のような平凡な女は忘れられてしまったでしょうね……#いちご訳

占ってよ、恋する……!
秋元氏、勉強家ですね。こんなとこから本歌取りですか。
花がたみというのは花を入れる竹籠のことで、網目がならぶ、と目ならぶ(見比べる)が掛けられている模様。
これはさすがに女性主人公だと思うんですが、これで男性だったらちょっと雅にもほどがあると思いますよね。

恋歌五 詠み人しらず
うきめのみおひてながるゝ浦なれば かりにのみこそあまは寄るらめ

つまらぬ海藻くらいしか採れないこの浦だもの。ほんの今だけ海人がやってくるのでしょう……#いちご訳

謙遜こえて鬱陶しいな?
うきめ=海藻で「憂き目」
なかるる=流るる、泣かるる
かりに=刈りに、仮に
というわけで不遇で可哀想な私に同情してんでしょ、とのこと。これをオシャレにすると
♪ちょっと振り向いてみただけの異邦人
てとこでしょうが海人だの浦だと粘着力がすごい。#個人の感想です

恋歌五 伊勢
あひにあひて 物思ふころの我が袖にやどる月さへ ぬるゝかほなる

何度も逢ったものだから。心にはあなたが、そして涙に濡れたこの袖に月が宿る。みんなみんな泣いているわ。#いちご訳

さすが伊勢さん、歌うま子……!
「やどる月」が濡れた袖に映る月と同時に、夜ごとに来ては朝帰ってゆく人を感じさせる技巧の一首。
初句の「あひにあひて」が関係の深さをねっとりと表現していて、どことなく執念深い……
まあでもこの方確かモテまくるんで心配なさそうですけどね! #噂です


恋歌五 詠み人しらず
秋ならでおくしら露は ねざめするわが手枕のしづくなりけり

白露は秋でなくても降りるものなのですね。今夜も私の腕枕に涙の露が降りている……#いちご訳

え、ごめんどういう状況?
腕枕したら女が泣いてて目が覚めたのか、一人で自分の腕枕で寝てたのか分からん……(アスペ)
ねざめするとは言ってるけど泣き疲れて転寝してたのかもしれんし、やっぱ自分でセルフ腕枕してたんだろうな?
枕くらい使おうよと思いつつ確か昔の枕ってバリカタなんだよね。

恋歌五 詠み人しらず
須磨のあまの塩焼衣をさをあらみ 間遠にあれや 君がきまさぬ

塩焼き職人の衣の目が粗いように、何か間遠なんでしょうか。あなたがなかなか来られないのは? #いちご訳

なんかすっとぼけた味がありますね!
間遠なのは距離なのか気持ちなのか分かりませんが、嫌味にしては軽妙。
きまさぬ、はあれと同じです。クリスマスの「主は来ませり」尊敬の「ます」という補助動詞だそうです。
万葉集に「須磨の海人の塩焼衣の藤衣間遠にしあれば未だ着なれず」がありました。

今回は有名人の作が多く、恋歌五の幕開けを飾りました! こうして見てみるとほんと多彩でいいですね。恋歌四のラストはしみったれていましたが、さらに進んで恋歌五、恋のクロージングを意識した流れになっているはずなんですが、どんな歌が続くんでしょうか。
楽しみにしていきたい所存です……!

そして。秋と言えば皆さん当然「公募の秋」ですよね~?(圧)
大人の事情か、ただの習わしか、今月末締切の賞が滅茶苦茶多いです。私も、せっせと追い込みにかかっています。皆さんも体にだけは気を付けて、頑張って追い込みましょう! 追い込む必要のない非公募勢の皆様はぜひ、私をフォローなどして応援くださると助かります☆

頑張ろうぜ、公募勢!! 以上、いつも心はてんぱってます、あまおう まあお がお送りいたしました~! またね^ ^ノシ


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