[小説] 消しゴムから出てこないアイツ 3 [無料]
episode 3 悪夢を見た
かわいい女子3人で誕生日を祝ってあげたばかりの大和が、彼に恋する也実の消しゴムの中に入ってしまった。彼は自分の意思ではないと言うが原因はわからないし、またなぜか彼はやたら高い声になっていて──?
※ episode 1〜5 は全文無料で読めます(有料にした理由)
077/けしゴムからでてこないアイツ
2023年10月26日完/四百字詰原稿用紙46枚
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しかし私は、夜になっても怒りと後悔の一言で表せない気持ちを胸に抱えており、そういえば悪夢を見たんだったっけ。
夢なんか数えきれないほど見ているから、本当は火曜日の朝になっても覚えているほどの夢を見たってこと? 木曜日の今日も覚えているその夢は、悪魔か神様かはたまた自分の投影か、不確かな存在、不確かな影と会話する悪夢だった。
『よく考えなさい、これから起こる課題を』
闇すら認識できない闇の世界に不確かな高い声が響く。
「あなたは誰……? 起こる課題を防げる、手立てがあるの?」
私はどうしてそう訊ねたのだろう、
『ない。何かが起きたあとだから』
「えっ、『起きたあと』って意味が反対じゃ──」
いや違う、起きたあとのこととこれから起こる課題は別なんだ。
『よく考えなさい、何が起きたかを。その影響で起こる課題を』
「だけど、どっちも何のことか、さっぱりで」
話がまったく見えてこない私が心の首を横に振ると、
『敵のこともわからないのか!』
不確かな高い声は突風のように躍りだし、
「だって、わからなもう、あわぁ……」
鋭い音の波が私の言葉を次々飲み込んでいき──、やがて私は何も考えられなくなった。
ああ、あれは本当に悪夢だったのだろうか。登場した不確かな影は悪魔かもしれないし、最後も言葉を奪われて未知の体験へと導かれたけれど、時間が経った木曜日の今はもう悪夢といいきれなくなっていた。
どうでもいいか、現実の問題と関係ないし。
現実の問題とはもちろん大和のこと。あの夢が覚めた火曜日から姿を見せない彼が本当は病気ではなかったという現実である。
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今回は謎の不確かな影が出てきました。呼び名はいろいろ悩んだんですけど、「不確かな影」に決まりました。それにしても、怪しいですねえ……!
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