沼にはまっている

私の友人が

いつもいつも会いたいようだ

恋する人に

彼は先日車を買った

何百万もする高級車だ

モテたいがためにだ

この話は前回の話と

全く同じになってしまうので割愛する

ドライブ遂行より数日後

彼が食事に誘ってきた

私は嫌な予感がした

また何やら相談してきそうな佇まいだ

当然口には出さない

言ったが最後私は確実に断るからだ

私は聞いた

食事をするだけってことでいいんやね？

ちょっと話したいことが・・・

私は1秒かからずに断ると言った

今日はすぐ終わるから。

彼は必殺の決まり文句で懇願している

断る。君の話は長すぎる

夏休み前の校長の話より長い

そう言って帰ろうとする私の右手に

チュッパチャップスのコーラ味を握らせてきた

ニコニコする彼に私は大きくため息をつき

静かな場所でならと承諾した

今度の日曜日会う事になった

静かな和食屋

席に着くなり彼は話し出した

店内にししおどしがあり

砂利で敷き詰められた雰囲気のいいお店なのに

すごいスピードで話し出す

上沼恵美子のようだ

落ち着いてくれワトソン君

料理や雰囲気を楽しみながら話そう

彼は順を追って話し出した

今度の日曜日

大好きな人と

デートすることになった

時間も場所も行先も決まっている

でもどうしても相談したい事がある

今度のデートでキスしたい

そこまで言い終わった彼は

獣のようにお冷の氷をかみ砕いた

ギャリゴォリギャリゴォリッ

完全に狂っている

恋は人を狂わすというが・・・

で、何を聞きたいの？

私が問う

甘いキスの仕方

愚かなり友よ

獣のような男に甘いキスなど

到底不可能だ

私がチュッパチャップスを舐めた後に

キスすればいいと答えると

チッチッチッチッ

そういう事ではないんだよね～

と嘲笑ってきた

冗談も解らないとは・・・

ならば教えよう

非常に簡単だ

ムードと視線

これだ

この二つがあれば

どんな砂糖よりも甘くなる

ムードと視線？？？

彼は聞き直した

昼間から会うの？

いや夕方

どこに行くの

遊園地

日が暮れてからも運営してる期間らしい

ふむ。シチュエーションは既に問題はない

遊園地内でキスがいいだろう

ど、どこで・・

彼は動揺し息も荒い

日が暮れた遊園地

園全体が見渡せる場所などいいだろう

隣同士、並んで立つんだ

間違ってはいけない

キスというのは告白してからだ

気持ちを伝えてもいないのに

唇が触れても意味などない

「楽しい？」

おもむろに聞いてみればいい

楽しいと返ってきたら

告白すればいい

君の事が好きだと。

あなたを大事にしたいと。

僕にだけその権利をくれないかと。

彼女が小さく頷くのか

私も。と言葉で答えをくれるのかは

わからない

そこが合図だ

彼女の瞳だけを見て

ゆっくりとありがとうと言うんだ

そして少しだけ唇に触れるキスを。

甘いキス

完成だ

彼はその後

何故か大きめのグラスでコーラを頼み

おもむろに一気で飲み干していた