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『たからもの』

「 ママ、お元気ですか。
そちらはどんな様子ですか。
……私がいなくても、少しは愉しく暮らせていますか? 」

 

また、朝がやってきた。
明るい朝がやってくることを
期待など していやしないのに。

いっそのこと
ずっと眠りの中にいられたら。
きっと、わたしも……

   
ああ、ほら。
ひこうき雲みっけ。

 

かみさま、わたし
空に帰りたい、なんて 思うことがあるの。

学校でとなりの席になったカナちゃんが
たからものを見せてくれた。

ふたを開けると ポロン、と鳴りだす音に
小さなバレリーナがすべるように踊ってる。

いいなあ。
欲しいなあ。

   
かみさま、わたしにも
たからものをください。

もう泣かないから。
ママに会いたいなんて 泣いたりしないから。
  

今ごろまた、あのおいしいご飯が
テーブルにそろってる。
きっと。 ぜったいよ。

 

……いいや。 かみさま。
たからもの、いいや。

今夜 あの人を
お母さんて呼んでみようかしら。

ママのいる空に帰る前に、ね。

 

だからバイバイ、かみさま。
またあした。

いってきます、ママ。

 

 

 

 

 

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