じゃあまたね。
よろしく伝えて。
気をつけてね。

帰省先から
出発の準備をしていたときのこと。

車の中、
虫入ってるよ。

あれ
ほたるじゃない？！

えええ！

確かにこの時期
ほたるが見られると
聞いていた。


悪天候だったので
諦めていたのだけれど。

まさか
ほたるのほうから
来てくれるなんて

なんて奇跡。

うわーすごいねぇ良かったね

ほら。

手のひらに
のせてもらった。

初めて間近でみる
優しいひかり。

黄色、というより
もう少し緑がかったひかり


ふっ、と
ゆっくり消えて

また
ぽわー、と
ゆっくりひかる

不思議なひかり。

調べてみると
ゆっくり光るのは
ゲンジボタル？みたい。

私はその
つよく儚いひかりを

忘れたくなくて

目に焼き付けようとした。

命の灯を。

きっと昔は
もっとたくさん見られたんだろうな。

世界が便利になりすぎて

消えかけてしまったものに会えた喜び。

手の中をちろちろ歩き

2週ほどして暗闇へ飛んでいった。

昼間見せてもらった
庭に少しだけ咲いていた

ホタルブクロに
休みに行ったのかしら。

うつむいて咲く
ホタルブクロ。

初夏に咲くのに
強い日差しは苦手で
日陰が好き。

今の私は
このホタルブクロみたいだなぁ、と
このとき思っていた。

🌟🌟🌟

あたまの中に

今どんな感情があるのか？

そんなことを
時たま妄想する。

・子どもの体調が心配で不安な気持ち
・子どもの成長を感じた幸福感

・いずれは必要とされなくなるだろうという諦め
・仕事をしていない役に立っていないという焦り

・楽しいことがもうすぐ待っている期待感
・美しい光景を目にした時の喜び

・溜まった家事を処理しなければならない憂鬱さ
・怠惰な生活を送る情けない気持ち

一日の中でもこれだけいろんな感情が
浮いては沈んでいく。

昨年からずっと心の三割くらいを
占めている暗闇。

それはじっとりした目で
恨めしそうにこちらを見つめ

ふとした時に出てきて
心をジリジリ焼いていく。

RPGで毒のステータスに
なってる時みたいに
弱い攻撃を受けつづけているような

低温やけどみたいに
気づかないうちに少しずつ
焼かれて傷ついているような。

この負の感情を
傷を

誰かに伝えようにも

どんな言葉にすれば良いのかわからなかった。

最近聴いた曲の歌詞の中で
その感情の言葉がどうやら見つかった。

やるせない。だ。

悲しいとも切ないとも少し違う

紛らわそうとしても
晴らすことができない気持ち。

何もできない。
過ぎ去った過去。

それを思い出すことと
願うことしかできない不甲斐なさ。

そんな暗闇の中に

たのしかった思い出は

かすかにつよく

ひかり続ける
ほたるのように

消えそうで消えずに残っている。

どうか消えないで。
またあなたに会える日まで。

ホタルブクロのような
薄く脆い私の心の中

ささやかでありふれていて

幸福だった
思い出だけは

守りたいの。