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ある土曜のスケッチ

眠い。今日は土曜日。只今未来を描こうと模索中の私にとって、平日も土曜日も大差無いのだけれど、やはり休日ムードの土曜日。でも何の予定も無く、ただ眠いままぼーっとしている。だから今日という日はただのスケッチだ。記憶に残るように線を太く上書きしたり、思い出になるような色をのせたりしていない、ただのスケッチの日。

それにしても眠い。理由は分かっている。昨晩飲み忘れた薬を、今朝飲んだからだ。眠くなるから眠前に飲む薬なのに、それを朝から飲んだのだから予想どおりの展開である。

だけどさすがに、ずっとベッドに寝っ転がっていては、今日が味気ないスケッチになってしまう。少しでも何か有意義に過ごさねばと思い、「よし。」と本を手に取る。まるで筆を手に取りスケッチに向かう様に。
しかし、ほんの2ページ読んだくらいだろうか、うつらうつらと頭は揺れ出し、すぐにコックリと頭が垂れた。せっかく色のつきかけたスケッチも、端っこからペロンと捲れ垂れ下がる。ほどなくして、はたと目覚めた私は大きく息を吸い、「いけない、いけない。」と捲れたそれを剥がし取り、クシャクシャッと丸めてポイと投げ捨てる。
そしてまた、今日のスケッチに向き合う。

どうしたって眠気が頭に棲みついているのだから、もう観念して、何もせずにベッドにもたれてぼーっとしてみた。結果、まぁそうだろうが、1分もしないうちに、うつらうつらと頭は揺れ出し、すぐにコックリと頭が垂れる。そしたらスケッチがまた端からペロンと捲れる。ほどなくして目覚めたら、「いけない、いけない。」と捲れたそれを剥がし取り、クシャクシャッと丸めてポイと投げ捨てる。…あとは繰り返しである。

そうやってなんとかスケッチと向き合う私をよそに、空はどんどん色を変え、気づけば日は暮れようとしていた。ふと見下ろせば、彩度を落とした床板にクシャクシャのスケッチがいくつも散らかっているじゃないか。そこに座り込む私は、さながら創作に疲れた絵描きの様で、謎の疲労感を纏っていた。
「これもまだ見ぬ未来のための下書きだ!」などと思ってみたけれど、淡々と流れる川音が、窓の外から聞こえるだけだった。
「あーあ。」と頭を垂れた私の後ろで、今日がゆっくり捲れ落ちた。

#創作大賞2023 #エッセイ部門