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21歳、千円の重みを知る。

友達から2週間前に貸した千円が返ってこない。
正確には貸したというより、お会計のときに電車まで時間がなくてとりあえず私が「立て替えた」のだ。

たかが千円でカツカツしすぎという意見もわかるし、私だって自分にそう言い聞かせている。

きっと彼女に悪気はなくて、ただ単に忘れているだけなのもわかっている。前にも私から言うまで返し忘れていたこともあったし、今回もきっとそうなのだろう。

ただ、私は人からお金を借りていることを「忘れる」という神経がそもそも理解できない。

自分は、比較的小さい頃から母から「仲の良い友達であってもお金の貸し借りはなるべくしないように」と言い聞かされていた。それもあってか、立て替えてもらってもその日解散するまでには崩して返すか、手帳アプリにメモして次に会う時に必ず返さないと気が済まない性分だ。

しかし、大学生になって友達と遊ぶ時間も多くなり、やり取りする金額も大きくなった。毎回細かい金額まで割り勘することの方が面倒だし、相手にも面倒だと思われるのも嫌だ。

だから、「まあ後で返してくれるだろう」ぐらいの気持ちで後日その子に会っても黙っていた。でも、彼女からお金を返すそぶりはなく、ゼミのみんながいる前で彼女に催促するのもなんだか私が「ガメツイ奴」に見えそうで気が引けて、結局その日は返してもらえなかった。

それ以来、私の脳内では朝ドラの劇中歌「潮騒のメモリー」の「ジョニーに伝えて〜千円返して〜」のフレーズがぐるぐると回りながら悶々としている。

ただ、お金に関する価値観の違いもあるし、時と場合によることも社会では多々ある。借りたお金は返すことが前提だが、千円単位でそんなことを言っていられない時もあるし、貸した側も忘れていることも多々ある。きっと私自身もっとお金に余裕があればここまでイライラしないのだろう。

でも、通帳を見れば毎月引き落とされる光熱費に戦々恐々とし、コンビニに行けば色んなものがじわじわと値上げされていることを嘆きながら生活している。おまけに、ゼミと就活でバイトも思うようにできない。

千円でカツカツしている自分を見て、彼女に貸している千円は私にとっては「それなりに大金の千円」なのだと、自分のことながらやっとその重みを知った。

母の言いつけがどれほど最もなことだったのかを、身をもって感じた。ずっと家計のやりくりをしてきた母は、たとえ少額でもお金の重みを知っていた。だからこそ、自分の子どもが損をしないように、他人に迷惑をかけないように、私に言い聞かせていたのだと気づいた。

よく「貸したお金は返ってこないと思いなさい」というが、本当にお金は大事に扱うべきだと身をもって知った。

とりあえず、明日は例の彼女と会うので私にとって貴重な千円を返してもらおう。
彼女も別に悪い子ではないので、これからもそれなりに付き合うつもりではいるが(というかゼミが一緒なので付き合わざるを得ない)、お金に対する価値観が違う時点で、もう貸したり立て替えたりすることはやめようと、心に強く誓っておこうと思う。

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