サンタさんは



ある夜、う~ちゃんは
ベッドの中で
お父さんにドキドキしながら聞いた。

「サンタさんは  ほんとは  いないんだよね?」

お父さんは困った顔をして
笑って

「う~ちゃんはサンタさんがいないと思うの?」





クラスでいちばん偉い
こーた君が
「サンタなんているわけね〜」
って言って笑ってるんだ。


僕はドキドキしながら黙って
その話を聞いていた。


(サンタさんはなんでいつも僕のいちばん欲しいものを知ってるんだろう…)


ドキドキしていた。




黙って笑うお父さんに

「わかった」
「ほんとは  お父さんかお母さんかじぃじかばぁばか」

「夜中にイオンに行って買って来るんだよね」

ドキドキしていた。




「もう、う~ちゃんはプレゼントいらないの?」
「サンタさんを信じなくなったこどもから、プレゼントがなくなるよ」



僕は泣いてしまった。

おふとんをかぶり

笑ってたけど寂しそうな
お父さんの顔で

ドキドキしながら、
そのまま眠ってしまった。










それから夏が過ぎ
誕生日が過ぎ
冬休みの話でみんなが
そわそわし始めたころ

あの話を想い出した。

サンタさんは・・・



毎年
このくらいになると
サンタさんに何をもらおうか
考えるけど
今年はお父さんもお母さんもばぁばも
プレゼントを聞かないし
イオンにも行ってない。

お父さんが
「早く寝ないとサンタさんが~」
とか

寝る前にする
サンタさんにお願いもしていない。



サンタさんは…
サンタさんは…


また

ドキドキがはじまった。










イブ

その日がきた。




毎年、そわそわとワクワクでいっぱいの日なのに


クリスマスの音が
不安な気持ちと悲しい気持ちを
なんだか煽るような





いつものように、ちょっといいご飯を食べ

ケーキを食べ

テレビもどこをまわしても…




ああ、夜なんてこなきゃいいのに…




最後まで「プレゼントは?」と聞く勇気がでず、

いつもより少し早く
眠ってしまった。




真夜中

ふと目を覚ますと

お父さんもお母さんもみな眠っていて、

はっ!っと
いつもプレゼントが置いてある
枕元を見た。



「…ない」

哀しくて哀しくて
布団をかぶり
泣いた。

泣いて、泣いて、泣き疲れて

こんどは深く眠ってしまった。



最悪な気持ちのまま朝をむかえた。




かぶっていた布団から少しだけ顔をだし、
夢なのか?明けたのか?考えながら手を伸ばすと

枕元になにやら箱のようなものが…

慌てて這い出て見てみると

赤い包み紙に緑のリボン


いつもより小さめだけど
プレゼントがあった。


嬉しくて、嬉しくて、
飛び跳ね
お母さんを呼ぼうとよく見ると

一枚のカードが挟まっていた。


「…」




う~ちゃんへ



メリークリスマス

お父さんです。



う~ちゃんの「サンタさんはいるの?」
という しつもんに
あのとき答えられなくて
ごめんね。




お父さんもじつは
サンタさんなんていないと
思ってたよ。

う~ちゃんに逢うまではね。



でもう~ちゃんに逢って
サンタさんがなんで
一年に一度
世界中の子どもたちに
プレゼントを配っているのか

そのほんとうの意味が
わかった気がしたんだ。




サンタさんはいるよ。



お父さんやお母さんに
〝君〟という
こんなに素敵なプレゼントをしてくれて
じぃじもばぁばにも


だから

その日もっとも忙しいサンタさんの
〝代わり〟にプレゼントを
用意したり
感謝の気持ちで

みんな少しづつ
お手伝いをしているんだよ。


するとね

きらきらした瞳で
飛び跳ね喜ぶ君がいるんだ

だからまた
そんな君をみて
嬉しい気持ちになって


その君を観て
幸せそうな
周りのみんなの顔をみて


今年も一年がんばれたなって
また嬉しい気持ちになるんだ。



だから
サンタさんはいるし
みんな
愛してるんだよ。




いつものような
ほんとにほしいものでは
ないかもしれないけど
みんなの気持ちです。


だいぶ〝オトナ〟になると
きっと逢えるよ。
ほんとのサンタさんに。

                       お父さん






う~ん…
むずかしいや…

でも
よくわからないけど
すっきりした。


胸のところがスーとして
すっきりした。


すっきりしたら、また眠くなってしまった。


お母さんが起こしにくるまで
もう一度
眠ることにしよう。



                完

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