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オレはスナイパー

 オレとしたことが、昨晩はアラームを掛け忘れちまったぜ。

 だが、今朝は寝坊せずに起きた。

 炊飯器から吹きだす蒸気の音でな。

 スナイパーとして培われた能力を発揮したってわけさ。

   タイマーセットしていたわけだが、炊き上がりの音楽で起きるくらいじゃスナイパーの素質はないぜ。

 さて、今日も獲物を仕留めて来るとしよう。

 今日の獲物は、奴だ。

 太めで引き締まった体格。

 鋭い目だ。実に鋭い。

 それに、やけに澄んでやがる。

 世知辛い世だというのに、荒波に揉まれながらも、奴はひねくれることなく、まっすぐに生きていたのだろう。

 気に入ったぜ。心苦しいが致し方ない。

 オレも生きなければならないからな。

 悪く思うなよ。

 仕留めた奴は、きれいに解体してやったぜ。

 串に刺し、豪快に直火で炙る。

 タレはポン酢。薬味はネギ、ミョウガ、しょうが、大葉、にんにく。

 出来上がりだぜ。鰹のタタキ。

 獲物の命を美味しくいただくのが、オレの流儀なんだぜ。

#小説 #掌編  

 

 


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