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”映画館とおにぎり”のはなし。【元映画館スタッフおねえさんが話す】

ごきげんよう。雨宮はなです。
前回はムビチケの紹介とおすすめする理由をお話しました。
今回は過去の経験を踏まえて、映画館への飲食物の持ち込みについてお話します。私が働いていた映画館は持ち込みNGだったので、NG寄りのお話になります。あくまで個人の主観によるところですので、ご了承ください。

今回は「ダークサイドおねえさん」として、皮肉や苦情を遠慮なく申し上げます。自分に言われたように感じたり、それで激情しがちな人は「回れ右」を推奨します。私と一緒に皮肉を楽しめる人、マナーの悪い客に憤慨したことのある人に推奨します。

皮肉等なし、フラットな表現ができる方の記事はこちら。(外部リンクです)

よろしいですか?私は忠告しましたからね?では、始めましょう。

”おにぎり”に限った話ではないのですが…

某賞レースの授賞式中に某有名俳優さんのお話された内容がきっかけで「映画館でおにぎりを食べる」話がTwitterをにぎやかしていると知りました。おにぎりに限った話でなく、”映画館に飲食物を持ち込むのはいかがなものか”という論争が巻き起こっているようです。なるほど、それについては私も思うところがあります。

有名俳優さんのインタビュー内容については「当時と現在の映画館の在り方がだいぶ違うし、そういった背景を知らないうえ、実際に現場を見知っていたり迷惑をこうむったわけでもないのにギャーギャー言うな」というのが個人の感想です。この件については、これ以外に言いようがありません。以上、おしまい。

映画館への持ち込みはNGなのか?

先に答えを出してしまうと「映画館により異なる」ものです。近年では多くのシネコンを始めとする映画館で飲食物の持ち込みはNGとされています。一部の映画館はむしろ持ち込みが前提で、コンセッション(飲食物売店)が設けられていない施設もあります。

かつては持ち込みOKが基本でした。90年代後半にかけて映画館運営が大きく変わったタイミングでNGにする映画館が多くなり、時間の流れとともに増えて言っているのが現状です。

なので、その時の感覚のままアップデートされていない方は「持ち込みOK」を前提に行動してしまっている可能性があります。とはいえ、上映前アナウンスで「持ち込みはご遠慮ください」という内容も流れていることですし、気づかないはずはないのですけれども。

持ち込みNGな場合、それはなぜなのでしょう?ざっくりいってしまえば、「映画館を守るため」です。それだけだとざっくりすぎる、ふんわりすぎてよくわからん。では、もう少し具体的に。

NG理由①施設内で購入してほしい

大きな理由としては「施設内で飲食物を購入してほしいから」といえます。これは利益追求とリスク管理のためです。

まずは利益。映画館運営も楽じゃない、チケットから確保できる映画館の取り分なんて微々たるものなのです。それを補填するために、飲食物やグッズ販売が行われています。ドリンク1杯でかなり収益に差が出るとスタッフ時代に教わったものです。映画館を今後も運営するために、経済的に守る必要があります。そのための策のひとつがコンセッション(飲食物売店)です。

そしてリスク。映画館で提供しているものは様々なことを考えたうえで提供されています。売りやすさ、使いやすさ、片づけやすさまで。また、トラブルやリスクまで検討されたうえで並んでいます。特に大型の映画館であればあるほど、そうだと言えるでしょう。

客席側の私たちは「購入」と「飲食」だけをみるため、「値段が高い」だの「求めているものがない」だのという不満を持つ人が一部います。なぜ売られていないのか、まで考えて映画館を利用する人なんてめったにいません。ただ、その答えは明白です。売るに足る理由が無かったからです。その映画館では売らない方が良いと判断されたからです。売った後の責任をとれないとされたものだからです。

施設が把握していない(=販売していない)ものでトラブルになっても困るのです。販売していないものを詰まらせて呼吸困難になっても、それはあなたの責任です。映画館になすりつけてはいけません。

NG理由②施設清掃と衛生を考えた結果

また、施設を守るためでもあります。スタッフ的には”片づけやすさ”はとても重要でした。

ごみの分別、散らかったポップコーンの始末、こぼしてしまった飲み物の処理…。すべて決まっていて、スタッフたちはその決められたものを使い、マニュアルに則って作業をします。館内で売られたものに対処することが前提です。想定外のことももちろん考えたうえで判断、対応しますが、それはあくまで”イレギュラー”です。この”イレギュラー”、非常に厄介です。

過去、私がスタッフ時代に経験した”イレギュラー”にこんなのがあります。勝手にお弁当を持ち込んで食べたお客様がいらっしゃいました。その方が使ったあとの座席には、のり状になったご飯粒がべったりとくっついていました。そのお客様の後に座る方がいるのに!まだ売られていないお席であれば売り止めも検討できますがそうしても、汚したお客様に弁償してもらえると決まっているわけでもありません。かといって、売りに出したまま他のお客様の衣服を汚してしまっては映画館の責任です。それに、清掃時間が伸ばせるわけではありません。お客様の入場中に清掃していては、お客様は快適な空間で過ごしているとは言えないし、自分の座席も汚れているのではと不安をもってしまうでしょう。

現場を離れた今、あえて犯人と表現しますが、犯人を突き止める手間暇や突き止めたあとにされるであろう逆上、その間のお客様たちへの対応等を考えると”見逃す”結果になってしまいます。決して「まあ、これくらいはね」なんてほんわか許しているわけではありません。

NG理由③トラブル防止のため

これはもうわかりやすいもので、「あの人は良くて、なんで私はだめなの」を防ぐためです。他にあるのは音とニオイのトラブル。「ビニールの音がうるさくて映画の邪魔だった」「ニオイがきつくてファストフード店にいるみたいだった」と、お客様からの苦情を受け付けた経験があります。なんなら、ビニール音に関しては私が苦情を申し入れたこともあります。

施設内で売っているものであれば「もっと気を付けてください」で済ませるほかないのですが、そうでないものであればそもそも「持ち込まなければトラブルにならないはずのもの」です。「苦情を言う方が神経質なのでは?」という意見もあるでしょうが、持ち込みをした時点でアウトなのです。

「自分はよく持ち込みをしているがスタッフに何も言われたことはない。迷惑かけてないし見逃してもらえるものだ」と主張する方もいるでしょう。そういう方はスタッフさんがほんわかにっこり見逃しているわけではない、とお伝えしましょう。「持ち込みは禁止です。捨てるか預けてください」と言って逆上されるのが怖い、もしくは、面倒なだけです。彼らには山ほど仕事があるし、変な客に絡まれることだって少なくありません。そのエンカウント率を減らしたいだけです。これにはこれで映画館側に問題がありますが、ここでは関係ないので飛ばします。
貴方がすでに危険人物だと認識されているから見逃されているだけです。

持ち込みOKとNGの見分け方

私がおすすめする見分け方は「その施設にコンセッション(飲食物売店)があるか、無いか」です。売店はあれど、パンフレットやグッズしか販売していないという映画館もあります。コンセッションがあるならそこで飲食物を購入しましょう。コンセッションと自販機設置の併合で運営している映画館もあります。これは「なんだ、じゃあ持ち込んでもわからないじゃん!」ではなく、「持ち出しができるぜ、もったいないお化けが出ないや。やっほう!」くらいの考え方でいた方が良いでしょう。

反対に今でも持ち込みOKな施設もあります。昔の運営方法のまま変わっておらず、飲食マナーをお客様に委ねているような映画館です。大きな音を立てないとか、こぼさないというのが当たり前にできる前提(なのか、もしくは治安が悪くても気にしない)で持ち込める。そんな映画館はどこにあるのか。

まずはご自身がお持ちの文明の利器を使用して調べるのが一番良いでしょう。おそらくHP上に案内文があります。確認できない場合は、おそらく掲載されているであろう電話番号から電話で確認をとれば済む話です。

「そんなの映画館の都合だろ」というあなたへ。

そうですね。そうですよ、映画館の都合です。映画館が「運営側も客側も安全で快適でいるためにはどうしたら良いか」を考えた結果です。それが気に食わないなら、あなたが利用しなければ良いのです。郷に入っては郷に従え、なのです。その施設のルールは、施設が決めます。
セーフティーバーをおろすのは誰ですか?そう、ゴーストです。

セーフティーバーに触ってはいけない
それを引くのは私の役目
動きだしても決して立ち上がらぬように
そうすれば亡霊達は喜んで諸君を迎えるのです
もう一つ、絶対にフラッシュを使わないで欲しい
亡霊達は強い光が好きではないのです


─「ホーンテッドマンション」アナウンスより引用

ルールとマナーを守る人は「お客様」として喜んで迎えられます。そうでない人はお金を払っていても喜んで迎えられることはありません。仕方なく入場を許可しているに過ぎないのです。いわゆる「汚客様」です。

あなたは、「お客様」ですか?それとも、「汚客様」ですか?どちらになるのも、選ぶのはあなたです。

さいごに

そうはいっても、「常温の水はなかなか売ってない」し「経済的にそんなに余裕はない」し「ご時世的に自分で用意したものの方が安心」だし…という人はいるものです。その気持ちはよく理解できますし、そういう人がいるのは当然のことです。実際に接客をしたこともあります。

「自分は中学生でお小遣いが少なく、売店のものは高いです。コンビニに行ってはだめですか?」と自分から聞いてきた素直過ぎる中学生に会ったときは感動しました。私は半券を持っているか確認し、「私はスタッフなので、”OK,いいですよ!”とは言えません。なのでお客様は、電波が入りにくいシアターの外で電話をするという口実でお外に出ましょう。すぐ近くに〇〇というコンビニがあるからそこで好きなものを買って、帰ってくるときには見えないようにしまっておいてくださいね」と送り出しました。

コンセッションで売っているものが割高なことくらい、わかっています。外で購入したほうが好みのものが手に入ることだって、わかっています。それでもNGにするには理由があります。その理由に納得ができないのであれば、ご利用はご遠慮いただきたい。この理屈は映画館だけでなく、すべての商業施設で言えることだと思います。今一度振り返ってみてください。自分が、「汚客様」になっていないかどうか。

みなさまの映画ライフが充実しますように。
最後まで読んでくれてありがとうございます。
ではまた次の記事で。ごきげんよう。

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