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『最後の決闘裁判』で語る(第二回:女性の敵は男性、大敵は女性)

ごきげんよう。雨宮はなです。
前回のおわりに告知したとおり、今回は引き続き『最後の決闘裁判』を題材に「女性の敵は男性、大敵は女性」だと感じたシーンについて語ります。

正しいか否かは別として、今回も思うままに感想を綴ります。
※ここから先はネタバレを含みますので、ご了承いただける方のみ読み進めてください。

男は敵、女は大敵

すでに鑑賞済みの女性にとって、裁判の様子は非常に胸糞悪いシーンだったことでしょう。ひょっとしたら強姦シーンよりも印象に残るものだったかもしれません。なぜなら、年寄りたちによる公開セカンドレイプでしかないからです。女性の敵は男性、なのはこの作品だけでなく常に謳われていることですが、忘れてはならないのが「女性の大敵は女性だ」ということです。

テレビドラマ『ハケンの品格2』でも話題になりましたが、性差別が起こった際(それもセクシュアルハラスメントや強姦において)は、男性が女性の敵であることはもちろん、大敵は同じ「女性」であると言えます。今作でも義母と友人からの心無い扱いにマルグリットが心を痛めるシーンがあります。

大敵1:義母

義母は「過去に自分も強姦された。でも黙っていた」とどこか得意げに誇らしげに告白し、「夫に泣きついてまで何をしたいのか」とマルグリットを責めます。「強姦されたことを明らかにすることがはしたない」というスタンスで、あくまでもマルグリットに非があるという考えです。自分自身が過去に強姦された過去がある(自称)でありながら、なぜ?

本来であれば「その辛さがわかる」ことで、「力になる」と言い出すべきはずの立場の人間のはずです。「思うような結果になるとは限らないから声を上げないほうがいいこともある」という指摘をするならともかく、強姦されたとしても黙っていることが正しいと言い切る理由は何なのか?

それは家名や自分の生活が脅かされることはもちろんですが、結局は自分が否定されるのが嫌だからでしょう。ここでマルグリットが声を上げ、彼女の言い分が認められたとしたら過去の自分は正しい選択をせず損をしたことになります。ただでさえ認めたくない損(過去)を、嫁(現在)によって明らかにされるなんて…と考えたのではないでしょうか。

大敵2:知人(マリエ)

二人目の大敵はマリエです。あえて、友人ではなく「知人」としました。

友人は「私はもうあなたと付き合いたくない」とハッキリ言い渡し、「過去にマルグリットはル・グリをハンサムだと言っていた」と証言をし、裁判所内でニヤニヤしながら裁判の様子を観ています。あまつさえ、決闘が終わりマルグリットの潔白が証明されると、面白くなさそうな感じに表情を曇らせているのです。

マリエがこんな言動をとった理由は2つあると考えます。
1つめは「自分がル・グリに選ばれなかった」という嫉妬心によるもの、2つめは「先進的な行動をとるマルグリットが自分よりも注目を浴びた」という承認欲求にかんするものだというのが個人の見解です。なんだかんだ自分のほうが淑女としても女性としても上だと思って接していたのに、ちょっとでもそれを疑うような事態に陥ったことに我慢ができなかったのだと考えられます。
マリエは現代に生きていれば港区女子系のインスタグラマーになるタイプだったと思われます。

現代に生きているという幸運

二人のマルグリットに対する態度を見て、友人たちの平穏を願いました。これは当時のこととして描かれているけれど、先にも書いたように普遍的なものなのだと悟ったからです。自分がマルグリットの位置に置き換わりなくないことはもちろんですが、大切な友人にもそんな目にあってほしくないと強く感じました。

普遍的、と表現しましたが…現代では完ぺきではないとはいえ、女性を人間として扱ったり被害者に対してまともな接し方をすることができる人間が増えていることも事実です。この様な社会であればいくらか味方もできたのでしょうが、当時のマルグリットは同じ女性からも様々な理由から侮蔑の視線を向けられ、見下される中で主張を続ける必要があり、それは想像もつかないほどのストレスだったことでしょう。とはいえ、主張を下げてしまうと厳罰(≒死)が待っていたわけで…。

途中、息子が生まれてから「こんなことになるなら、私だって過去の女たちのようにした!」と泣き叫んだのはうそ偽りない彼女の言葉でしょう。彼女が声を上げてくれたからこそ、その先が続き現代に繋がります。私たちはそんな現代に生きていることを「幸せだ!」とまではいかなくても「幸運である」と認識し、感謝するべきでしょう。もちろん、現代にも”マルグリット”がいるのはわかっていますし、そうは思えない人がいることもわかっていますが、私は少なくとも現代に生きていることと”マルグリット”にならずにいられる幸運に感謝しようと思います。
だって、知らない間になっているかもしれない。いつ自分もそうなるかわからないのですから。

さいごに

文章を読むのが苦手だったり感情的な人だと「現代にも被害者はいる!」「被害者を暗に馬鹿にしている!」と思われてしまうかもしれないと思いつつ、他に上手く表現できなかったので現在の自分の精一杯で文章を書きました。決して他意は無く、他者を傷つける意図も目的もないことをここに示します。

次回は「科学的でない性知識」について語ります。

今回も最後まで読んでくれてありがとうございます。
ではまた次の記事で。ごきげんよう。

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