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【午前十時の映画祭11】映画『座頭市物語 (4Kデジタル修復版)』を観てきた【27分の13】

ごきげんよう。雨宮はなです。
前回の『真昼の決闘』に引き続き、モノクロ映画作品です。ビートたけしさん主演のイメージがつよい「座頭市」という言葉ですが、もっともっと古く主演は三國連太郎さんです。

時代劇でヤクザもの…食わず嫌いジャンルの掛け算ですが、楽しめるのでしょうか?!
※ここから先はネタバレを含みますので、ご了承いただける方のみ読み進めてください。

差別

「盲目だが、剣の腕が立つ」という設定の主人公を周囲の人間のほとんどは「めくら」と呼び、馬鹿にします。また、「聾唖(ろうあ:聴覚障碍者をさす)だったら死なずに済んだのにな!」というセリフも出てくるような身体障碍者差別シーンの多い作品で、現代ではとても制作できなかったであろうと考えられます。

作られた時代、描かれている時代、場所を観て改めて思いました。「いつの世も、どこでも変わらないなあ」と。
性別、肌の色、障碍の有無、年齢…体に現れる要素だけでもすでにこれだけの差別に繋がるものがあります。人間は常に差別をしているし、していたいという生き物なのでしょう。程度にもよるでしょうが、種の保存のためのプログラムのひとつなのかもしれません。「許されないことだ!撲滅だ!」という考えが基準の昨今、受け入れられないどころか批判されるでしょうが、差別は今後も無くならないものだという認識を新たにしました。

友情

主人公は障碍(全盲)を持ちつつも、訓練を積むことで剣豪となり、また自立して生活することが可能です。普段は見下されるか、憐れまれるかのどちらかですが、今回であった平手のように自分の本質をみて接してくれる人間に出会え、釣りのシーンと決闘のシーンではお互いへの思いやりが見て取れます。

だからこそ平手との決闘シーンと、倒れた平手を抱えてお別れを噛みしめているシーンはつらかった…。病に気づき指摘しつつも受け流した主人公と、隠しつつも対等でありたいと考え最期を預けた平手。対話はあれど、語りすぎることのない二人に胸が熱くなります。釣りをして並んで座っているだけでも、剣を交えている間にも、彼らの対話は台詞がなくてもなされていたのだと感じることができます。

恋愛

もちろんヒロインも登場するのですが、主人公とはだいぶ年齢が離れている設定(?)で恋に恋している感じです。主人公もそれがわかってか「一緒に行きたい」と旅支度で待っている彼女に見つからないように道を通らず山を越えて出発します。

おそらく美人という設定で自分を慕ってくれる、隠さず「好き」だと言ってくれる女性にだいぶ揺れ動かされる描写がありますが、「自分は日陰者であって、めくらであって、貴方のような人が添い遂げるべき相手ではない」ときっぱり伝えるのは年長者としても男性としても誠意を感じられる言動です。

さいごに

自然な演技といえば聞こえはいいですが、耳が慣れるまで聞き取りづらいので最初のうちは「んん?」と気持ちと頭が前のめりになります。慣れてしまえばこっちのもの、映画の世界に浸ることができ、釣りをしている最中の川や決闘時の砂の匂いまで香ってきそうです。スクリーンで観られてよかったと思える作品のひとつになりました!

最後まで読んでくれてありがとうございます。
ではまた次の記事で。ごきげんよう。

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