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こえかぶ 朗読で楽しむ歌舞伎 ~雪の夜道篇~_感想

10月9日月曜日、東京は赤坂にある草月ホールにて、
こえかぶ 朗読で楽しむ歌舞伎 ~雪の夜道篇~
を観劇してきました。

そもそもこの『こえかぶ』というのは、「朗読で楽しむ歌舞伎」という副題のとおり、歌舞伎のストーリーを現代語で分かりやすく、実力のある声優さん方が演じられる朗読劇の事。
しかも、ただ歌舞伎の作品を朗読するだけではなく今回は現代劇×歌舞伎という一風変わったストーリー展開。

ここから自分なりの視点で感想を綴っていきたいと思いますのでお付き合いいただければ幸いです。

あらすじ&出演者ご紹介

まず、今回のストーリーのあらすじから。

舞台は1950年代のラジオ局。
ラジオ番組『こえかぶ』の生放送が迫っている中、台風14号の影響で役者が全員局まで来れないという緊急事態が発生。
本番まで時間がない中急遽集められた女優、俳優、そしてアナウンサー。ラジオディレクターも合わせた4人で本番を迎えることになる…。

すでにあらすじだけで面白そう。

ちなみに、今回取り扱われた歌舞伎の演目は、

『仮名手本忠臣蔵』(七段目)
『雪暮夜入谷畦道
(ゆきのゆうべいりやのあぜみち)

以上の2演目。

続いて、僕が観に行った日の出演者の方がこちらの4名。

この日は3日目の千秋楽。
日替わりで計12名の声優さんがご出演。

『ヤッターマン』(2008年版)ヤッターマン1号役の吉野裕行よしの ひろゆきさん。

『ONE PIECE』サンジ役の平田弘明ひらた ひろあきさん。

『進撃の巨人』ハンジ・ゾエ役の朴璐美ぱく ろみさん。

『ハイキュー!!』夜久衛輔役の立花慎之介たちばな しんのすけさん。

…と何とも豪華な4名。

加えて、なかなか珍しい組み合わせでもあったのでどんな掛け合いが生まれるのかとても楽しみでした。

これは朗読劇なのか

朗読劇というと、出演者が台本を持ってマイクの前でお芝居をする、というのがよくあるスタイル。

しかし、今回は舞台上にラジオ局の一室がセットされ、上演開始直後、ラジオディレクターが3人を連れて来るというところからスタート。

朗読劇というかもはやこれは舞台では?

しかし、舞台形式だからこそアドリブが自然な流れで組み込まれたりと、演劇形式と朗読形式、どちらの長所も兼ね備えたようなお芝居でした。

ちなみに、ラジオ本番(=歌舞伎作品の朗読)はよくある朗読劇のスタイル。

あらすじから演出から、色々な点で「思ってたのと違う!!」を味わえる新鮮味溢れる内容でした。

女性ならではの迫力

ここからは歌舞伎を見たことがある人間として感想を書いていきます。

一番新鮮に感じたのは女形の芝居を女性がやるということ。

原則歌舞伎は男性の世界。勿論女形も男性が演じます。

女性らしさを表現するために優雅さや艶、可愛らしさなどが重要視されます。

それが今回、女性が女形を演じたことで今までになかった迫力や覚悟といった強いものを感じました。

実際、演じられた朴さんは『鋼の錬金術師』の主人公エドワード・エルリックをはじめとした少年や青年も数多く演じていらっしゃるので、とてつもない迫力のある演技をされる方。

まさに大和撫子という言葉がお似合いの演技でした。

また、
男性が女形を、女性が男性を演じる
という組み合わせがされたのも面白かったです。

女性が演じる女形、男性が演じる女形。
このどちらの良さも味わうことが出来るのはこの朗読劇だけです。

時代を超えた言葉の融合性

今回は実際に歌舞伎を見たことがない人でも話が分かるように現代の言葉遣いで物語が紡がれます。

実は僕、小学生の時に地元の歌舞伎公演に役者として出ていた経験があるのですが、歌舞伎って台詞回しが超難しい

当然原作の台詞は今の日本語とは全く違うわけで。なおさら小学生だった当時は自分で何を喋っているのかもわからない状態。もはや外国語喋っているのと変わらない。
そして身分や職業によっても言葉遣いは変わります。今回は遊女がその例にあたりました。

おまけに歌舞伎の場合はただ台詞を喋ればいいわけではなく、アクセントやイントネーションに加えてをつけないといけない(苦戦したなあ)。さらに歌舞伎特有の演出も組み込まれていたり。
…こうやって書くとやること多すぎない(我ながら小学生でよくやったな)?

この点は脚本を担当された方もすごいなと思ったポイントですが、

現代語による台詞 × 作品全体の流れ + 歌舞伎特有の表現技巧

という組み合わせで全く違和感なく、まっすぐな川のように話が展開されていくのが素晴らしかったです。

脚本家の方が水を流すために土を削って、そこに声優さんたちによって水が流されていくイメージ。その川に我々観客は心地よく流される。

基本的に登場人物の台詞は現代語でしたが、途中に原作の台詞がそのまま使われていたり歌舞伎特有の表現が散らされていることで、歌舞伎を見たことがある人でも「この表現を入れてきた!」みたいに楽しむことが出来ました。

終わりに

実はこの朗読劇、12月にテレビ放送されます

3日間の公演が3週間に渡って放送されるとのこと。
日ごとに役者も違うので、それぞれ比べながら見るのも楽しいと思います。
見られる環境で興味のある方は是非この機会に見ることをお勧めします。

また、下の記事から公演中の写真と一緒にレポートが読めます。

朗読劇、歌舞伎のどちらの世界にも新しい風を吹かせた今回の公演。
本当に素敵な時間を過ごすことが出来ました。
また機会があればぜひ観に行きたい!!

今回はここまで。
読んで頂き有難うございました!

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