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メトロに揺られて

毎日電車に乗って、仕事に行く。

新卒で入試した会社に一年半ほど勤めては

早くも職を変え

現在別の会社で全然違った仕事をしている。


転職前は、毎日最寄りのJR駅から混雑する路線とは逆方向へ、乗り換え含め1時間ほど電車に揺られた後、徒歩5分で職場に赴くという、喧騒からかけ離れた良く言うとゆったりした日々を送っていた。

集中してドラマを見たり、読書をする余裕があるのは長距離通勤のメリットなのかもしれない。

転職してからは

最寄り駅から中心部へ、混雑したJRに乗り

思考などをする暇も与えられないまま、地下鉄に乗り換え、電車に降りて気づけば職場に着いているようなそんな平日の朝を過ごす。
人間が、腸詰めされたソーセージのように満ちた状態で密集する車内。後ろのおばさんのカバンに背中を押され、前方にいる男性のスマホのLINE画面が顕になり過ぎて目のやり場に困るような時間。




有川浩の『阪急電車』のような、一駅過ぎる毎に起きるドラマチックな展開を期待することもない。
皆、一日を全うすることに精一杯なこんな世の中。偶然の恋なんて期待などしていない。

そんなことはお構い無しに、無機質な連なった鉄の箱は仕事人の足となり、走り続ける。


今日もいつも通りのダイヤの時間に電車に乗り、
向かいのガラス窓に映った自分を見て、前髪とシャツの襟元を整える。今日はつけるヘアオイルの量をミスったので、髪質がダサい。イヤホンからはダイアンのTOKYO STYLE。

いつも同じ時間に同じ車両に乗ると、いつも見る人達がいる。ある一定の時間帯で、数分間同じ空間において確かに共存し、主要駅に着くと皆一斉にあっけなく各々の方向へ散って行くあの刹那に感じる感情の正体は、なんたるものか。

メトロに揺られながらそんなことを考え、
私は駅に着き、ヒールの音を感じつつ歩く。

本日はいつもより肌寒い。
大きな成果は求めない。









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