「野獣」のルックスが強烈な、 2つの歴史的理由
『なんか思ってたのと違う…』
2017年に公開された実写映画「美女と野獣」を観て、一際気になったのは、王子の強烈なルックスでした。
数々の「ディズニープリンセス作品」の中でも、美女と野獣が特にお気に入りだった私は公開当初 (18歳)、映画冒頭の社交界シーンでの、あまりに強烈な王子の姿に「大きなショック」を受けたことを覚えています。
しかし、大人になり西洋の歴史を学んだことによって、このメイクには深い理由があったことに気がつきました。
白い肌
まず気になるのは、白雪姫よりも白い王子の顔ですが、これは18世紀のヨーロッパ貴族社会で流行したお化粧スタイルでした。この時代には、《 極端に白い肌 》が美の象徴とされ、顔に「白い粉」を塗り「頬紅を強調」することで、上流階級の社交界でのステータスを示していたそうです。
日本でも「白い肌=美しい」という認識は同じですね!
日本では平安時代から貴族階級の女性たちが「白粉(おしろい)」を塗って美を追求していますが、ヨーロッパでは14世紀〜17世紀のルネサンス時代に「色白=美」という認識になった後、美女と野獣の時代である『バロック・ロココ時代』を通じて流行が爆発したと言われています。
黒い点
王子のド派手な目元は、あくまでも社交界メイクなので置いておき、次に気になるのが大きな黒い点。これは、「つけぼくろ」です。17世紀よりモーレ (mouches) というパッチが、フランスの宮廷で流行し始めました。美しさを強調し、時には顔の傷やニキビを隠す役割も果たしていたとのこと。
国内のヨーロッパ系美術館に行くと、当時使用されていた「つけぼくろケース」が展示されていることがしばしばあります。
(私はステンドグラス博物館で見たことがあります)
このつけぼくろは当時の必需品で、18世紀には「美のアクセサリー」として地位を確立し、あのマリー・アントワネットもつけぼくろを楽しんでいたことが判明しています。付ける位置によって、さまざまな意味合いを持ち、恋愛の駆け引きにも必須のアイテムでした。
ここで、改めて王子のつけぼくろを見てみましょう。王子から見て、「右頬」と「口元」にありますね。これはつまり
『結婚願望があります。女性と出会いたい・・・遊びたいです!』
という、恋をしたくてしたくて堪らない、独身王子の気持ちを表しているのです。
まとめ
私たちから見て王子のメイクが派手に見えるのは、当時の美的感覚が現代とは大きく異なるためであり、それに加えて社交界のシーンということで「華やかさ」や『権力の象徴』が前面にググッと出たことで、現代人が少し引いてしまうヴィジュアルになった(小声)ということなのです。
アニメーション版では、最初の社交界シーンはありません。ですが、実写版では始まるや否や、社交界のシーンが流れ →「18世紀の美に執着した権力者」を強いインパクトで描き → 最後に『ありのままの姿=すっぴんの王子』の姿でダンスを踊るシーンを入れています。
Before&Afterを入れることで、心の変化の対比をしているとは、あまりにも粋な映画監督…!
年末年始にもう一度見直そうと思います🕯️
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?