三歳児の思考



今日は秋晴れ、快晴!ピクニックだ!ゴー!と、近所の大きな公園に出かけた。
偶然敷地の一角で、ウルトラマンショーが始まり、あまり興味のないわたしたちも野次馬のごとく観覧した。快晴の日曜日に、原っぱに、ウルトラマンショーって、梅佳代の写真集に出てきそうだよな、とぼんやり思いながら。

途中で悪役が登場し、何か寸劇でも起こるかと期待していたが、終始平和なお姉さんとウルトラマンと子供たちとのクイズ大会で終わり、出番を終えたウルトラマンは颯爽とポーズを決めながら、仮設テントに静かに入って行った。

アクロバティックな動きや演出を期待していたわたしは、妙にがっかりして「最近のショーってこんなかんじなの?子供たち、おもろいのか?」と首を傾げていると、息子の異変に気づいた。

急に無言になり、神妙な面持ちで、なんだかぼんやりしているではないか。こんな大人しい息子は熱が出た時くらいしか見たことがないので、

「ちょっと、どうしたの?元気ないやん。熱あるんか?しんどい?」と、執拗に息子の様態を聞くと、「ううん」と、一言だけ返された。

え?そうなの?でもテンション低いやん、ウルトラマン見てから。。と、母のやり場のない想いは他所に、息子は黙って遊具の方向へ走っていった。

それから徐々にテンションが上がり始め、あっという間にいつもの息子に戻っていったので安心する。
帰りたくないテンションマックスの息子を自転車に乗せ、のらりくらりと自転車をこぎはじめた。

10分くらいしてからだろうか。秋の爽やかな風が吹き、のんびとしたのどかな川沿いを走っていると、急に息子が喋りだしたのだ。

「お母さん、さっきウルトラマンを見てた時のことやけどね、ぼく静かやったやん。あれはなんでかって言うとね、、」と突如、母がすっかり忘れていたウルトラマンショー沈黙事件の真相を告白しだした。


「あれはね、(司会の)お姉さんの話がよく聞こえなかったから(音響トラブルでマイクの音が出なかったので、地声で喋っていたため)、しっかり聞くためにじっと静かに聞いていたんだよ」と。

え!なんで三時間近く経った今、急に!

すごく深刻そうに告白する内容なのか?と若干思ったが、息子は息子なりに「お母さんあの時、おれのこと心配してたな。違うねんってことを言わな」と、思い立ったのが、三時間後だったということだったのだ。

こんなに小さな三歳児でも、そんなことを頭の中でぐるぐる考えてるなんて、ちょっと驚きでもあり、彼なりにこれからいろんなことを感じ、哲学していくのだろうと思うと、胸がじんとなった、秋晴れの日だった。


2016.10.16『もそっと笑う女』より


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