健康の秘訣

踊りの先生をご自宅まで送ることが度々あり、車内でたわいもない話をするのだが、先生はいつも元気なのでその秘訣を聞いたことがある。

84歳、背中は曲がっていない、声にも張りがあり、豪快によく笑い、言いたいことをはっきりおっしゃる。
「鍼とか整体みたいなもん、行かへんねん。だいたいここが悪いなあ思ったら、湯船に浸かって手で揉むねん。それで大体治る」
高齢者が待合室でよくしてる「ここが痛い、あそこが悪くなった」などの辛気臭い会話は先生には皆無だ。
一度膝を悪くし、医師から手術しないと治らないと言われた際、手術もせず、自力で完治させてしまうほどの執念。「治らん言われたら、よっしゃ、絶対に治したる!と思うんやわ。
せやけど気力でっせ。しんどうても踊りの指導しなあかん思ったらボケられまっか?」
そしてフットワークも実に軽い。
「テレビ見てたら有馬温泉出てきて、あ、いきたいなあ思って、すぐに予約して友達と行ってきましたわ!」
「ちょっとこれから遊んできますねん」
「孫が東京まで行くからおばあちゃんついて来ていうもんやから、泊まりで行って来ましたわ!」
もう高齢者のフットワークではない。

そして先生は電話をLINEのように扱う。
「今、NHKの歌舞伎、義経千本桜見てたか?」
すぐに切り、数分後に電話がかかってくる。
LINE的な?
電話?
新しいのか古いのかもはやわからない境地。
LINEで「あれよかったで」と一言で済むことも
電話で「今日の踊りよかったわあ」と言葉で伝えてくださる。
お手紙をもらったように、胸がほっこりする。
他の人にも良かった時はすぐに電話で伝えていらっしゃる。

今日も家でじっとはせずどこかへ出向き、そして誰かと話して笑い飛ばしているのが、先生なのだ。





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