恐怖の一夜(2019.09.27)

こちらの記事は2019年10月に発行した来襲予告メルマガの追記として何処に公開するでもなく僕が出会ってしまった恐怖と怒りと共に書かれたお蔵入り文章です。(途中までは蜂鳥あみ太ブログにて公開されている内容と同じです)

時は遡って2019年9月頃・・・

えー先日ツアー先の大阪の宿で手酷い目に遭いましてね、何処のナニと詳しくは申せませんが一万飛んで34年間生きてきて初めての体験だったもんでそりゃもうぶったまげたと云いますか唖然と云いますかこんな事ってあるんだなと思わずにはいられなかった出来事であります。

その日は民族系変拍子再構築ユニット"狆-chin-"での"はじめての名阪ツアー"の三日目、名古屋から大阪へ移動して茨木市Dbarさんで演奏がありまして、お客様にね、ご本人様も公式Twitterにてお写真アップして下さってるので言ってしまいますがオール巨人さんが観に来て下さってまして、演奏は全然大丈夫なんですけれども大御所の芸人さんを前にしながら喋るというのはやはり非常に緊張するもので並々ならぬピリピリとした空気感でもってしかしながらそれが良い方向に作用してこの日も全力で演奏が出来たのでありました。巨人さんとても気さくで優しい方でありました。

…と、そこで一日が終わっていれば良かったんですけども、我々の受難はここから始まるのであります。

ライブ後、翌日は大阪市内でツアー千秋楽公演があるという事で終電で大阪市内入りした狆一行だったのですが、ブッキングした宿の最寄り駅へ近づくにつれあまり見慣れない漢字や読み方の駅が続くので皆で「変わった土地なんだね~」なんて言ったりしながら目的の駅に到着しまして、そこが良く言えば非常にレトロな昭和感漂う商店街、悪く言えばひたすらオンボロな飲み屋のシャッター街が続くだけなんですけども、単純に古い町なんだなあと思いながら宿を目指して歩いて行った訳です。

そんな商店街を抜けて少し開けた住宅街に出た時、風もないのにプーンと鼻を突く臭いがして来まして、言うなればそう、熟した銀杏の実が地面に落ちてグチャグチャになった時にするあの刺激臭。と云ってもそこは閑静な住宅街、近くに牧場や畑があるわけでもなし、あったとしてもそもそも風が吹いてない、というか、町全体の空気がずっと溜まったまま流れていないようなそんな感じ。勿論銀杏もなければ銀杏の実が熟す季節でもない…。そんな場所で何故か僕だけが「臭い!臭い!」とひとりだけ過剰に反応していたのでした。

まあ外がちょっと香ばしくても宿に入れば一緒だろうという事で騒ぐ僕を尻目に狆一行はこの住宅街を進んで行くんですけども、この町、ちょっと変なんですよね。道に沿うようにして家が立ち並んでいるのですが、この家がどれもこれも片っ端からおかしくて。だって元々は家の屋上だったであろう場所に更に家を建て、その上に更に家を建てて壁の色もバラッバラという明らかに違法建築な家が一軒だけでなく壁でも作るように一区画分ぐらいギッチギチに詰めて建てられていてまるでここだけミニミニ九龍城みたい。なんだか変わった町に来てしまったねえと言えるぐらいにはまだその時は余裕があったのですが…。

そうこうしているうちにぽつり、またぽつりと街灯が少なくなってきて、それと同時に周りの建物が今時珍しい木造の長屋、それも凄いすすけた感じの年季の入ったものばかりになって参りまして鈍感な僕も流石に嫌な予感がして来たところで辿り着いたのが一区画まるっとな墓地。ナビによると宿はここの角を曲がってすぐだと。辺りには今にも消えてしまいそうな暗いオレンジ色をした木製の古い街灯がひとつぽつりとあるだけでそれ以外は闇。この頃にはもう誰も言葉を発さなくなっておりました。

墓地を背にして住宅の並ぶ人一人がやっと通れる狭い小路を曲がり、そこから先はもう完全な闇。道の両端は全て木造の平屋なのですが深夜と云えどそこまで遅くもない時間なのに明かりの点いている家は一軒もなく、しんと静まり返ってただひたすらに真っ暗。仕方がないので携帯のライトで足元を照らしながら進むのですがダラブッカの空中紳士にナビを見て貰いながら歩いているのに宿が見つからず迷うはずのない一本道を結構な時間彷徨ってしまい。。。

暗い路地をぐるぐる周りながら「これはもしや何かの詐欺に遭ってるんじゃないか」と思い始めた時、「あった!」という声と共に平屋が並ぶ土地の真ん中にその土地には全く似つかわしくない新築のアパートがそびえ立っていたのです。この宿、オリンピックで来日する観光客の需要を見込んで作られた無人の民泊というやつでして、常駐する管理人が居ないので宿泊者が中に入らないと一切明かりが点かないという事で完璧に街の闇に紛れてしまって迷ってしまったんだなとこの時は思ったのですが…。兎に角やっと宿で休めるという気持ちと陰鬱としたその場の空気が嫌過ぎてはやく室内に逃げ込みたいという気持ちであらかじめ用意されていたキーボックスの中に入っていた鍵でドアを開け、狆一行はアニメ・サザエさんのエンディングのような勢いでそのピカピカのアパートへと吸い込まれて行ったのでした。

アパートの中にある階段を上って2階の部屋に入るとそこは新築そのもの。壁が薄いのか何やらボソボソと隣の部屋から話し声が漏れ聞こえては来るが天井も高くロフトもあって3人で泊まるには十分過ぎる快適なスペース。近くに墓地があった事なんてすっかり忘れて「これでようやく今夜の疲れをリセット出来る!」と重たい荷物を置き、それじゃあ休む前に夜遅くでもやっている近所のご飯屋さんを探そうという事で自分のスマホでナビを起動したところ少し離れた場所にご飯屋さんは見つかったんですけど、自分が今居る場所を指し示す筈の現在地のアイコンがね、移動してないのにヒョロヒョロ~と勝手に動いていって、それからずっと近くの墓地の敷地内を一点に定まる事なくゆっくり、ゆっくりと回ってるんですよ。

これを見て僕も流石にアチャーと思ったのですがもう夜遅くて他に休める場所も無いしこんな事を言っても皆を怖がらせるだけなので黙っておこうと思ってナビを閉じ景気付けにガッツリご飯を食べようと皆で出口のドアに向かったのです。

そしてここで決定的な事に気付いてしまった。

ドアの内側に避難経路図が貼ってあるのですが、その右下に謎の御札が貼ってあるんです。。。実は部屋に入った時にもその存在には気付いていたのですが管理会社のマークか何かなんだろうなと思ってスルーしてまして、部屋を出る前に改めてその部分をよくよく見てみると「霊から闇夜の襲撃に備えよ、忠告の御札(※画像が見たい方は僕のツイッターの投稿を参照)」などとトンでもない事が書いてあり…状況が状況なだけに「あー、やっぱそうなんだー」と誰に言うでもなく呟いてしまいその姿を見たメンバーも何かを悟ったように無言になって狆一行は足早にその場を離れ24時間やっている夜型人間達の強い味方ことYAYOI軒へと一時避難したのでありました。

気分的にズーンと重い胃腸に無理矢理定食を流し込みながらメンバーに御札の話をする僕。その話を受けて「実は駅を降りた時から嫌な感じがずっと続いていて嫌な気配のする方を見たら花が供えてあった」とピアノの大和田さん。そして極めつけは紳士の「実はナビが墓地を通り過ぎてもずっと墓の周りに居るもんで現在地がわからず迷った」という話。これについては僕も同じ状況を目の当たりにしているのでその場で全員沈黙…。オカルト好きな割りに心霊現象みたいなものに全く興味が無いものでこういう話を僕はあまり信じないんですけど、皆が口を揃えて「あいつらは電気に来る」って言うの。この時ばかりはあるかもしれないなあと思った次第。

なにはともあれ実際問題とんでもない内容の御札は本当に貼ってあるのでこんな気分じゃあの宿には泊まれねえって事になりまして管理会社のコールセンターに電話したんです。そしたら写真を送って欲しいと云われまして、疲れてクタクタなのにこんな真夜中に何やってんだろうなと思いながら宿に戻って御札の写真を撮って管理会社に送り、また連絡したところスタッフさんから謝罪があった後に対応策として「本日隣の部屋が空いてますのでそちらをお手配させて頂きますね」と言われ、、、

あれ?さっき隣の部屋で誰か喋ってたよね…?しかもひとりだけじゃなく何人かで…

ブッキングしたアパートの二階には我々が宿泊予定だった部屋ともうひとつの部屋しか無く、そしてこの物件は全室ロフト付きで通常より二階部分の位置が高く、近隣は全て長屋だもんで隣の部屋以外から声が聞こえてくる筈は無いんです。

更にスタッフさんが言うには「管理会社で御札を貼るなんて事は有り得ないのでルームクリーニング後、お客様が入室するまでに誰かが入っていたずらしたのではないでしょうか?」との事で、御札を貼られていたのは部屋の鍵を開けた先、"ドアの内側"ですよ!!それも絶対クリーニングの人が見落とさないような場所に。もしそれが本当だとしたら我々が寝てる間にも誰かが部屋に入ってくる可能性があるって事やんけ!!!おんどりゃあどんなセキュリティーしとんねん(憤怒)

という結論に至りまして対応策についてメンバーに相談するまでもなく「絶対に嫌です!!!」と断り2日間の宿泊をキャンセルし重い荷物を引きずりながら命辛々悪夢の宿から夜の街へと一目散に逃げ出しまして丑三つ時から朝まで歩いて辿り着いた南森町の漫画喫茶にて仮眠を取り、楽園食堂パラカフェのランチにて粒立ち最高の銀シャリをおかわりしまくり、人生初のスパ大東洋にて出来るだけ疲れを取ってツアー千秋楽の音凪へと赴いたのでありました。その夜の演奏はそりゃもうスパークしましたね。逆境をエネルギーに変える、我々にはそれしか出来ねーのであります。

その後の調べによって貼られていた御札はホラー食玩のおまけ(悪質ないたずらだった模様)であり、そして宿があった場所は土地そのものがとても血生臭い歴史を持ち非常に縁起の悪いエリアだったという事が判明するのですが、特定出来る話かつもう二度と関わりたくないのでここには書きません!詳しくはライブ会場にて僕に直接聞いて下さいね(全然聞きたくないと思うけど)★★★

そんなわけで今更ながら僕は思うんです、あれは本当に警告だったんじゃないかと。もしあのまま気にせず宿に泊まっていたら皆が寝静まった後で知らない誰かが鍵を開けて入って来て殺されてたかもしらんし。そう思うと命拾いしてラッキー!って思えるわけねーだろ畜生め!

そんなこんなで何かとんでもない怪奇現象に見舞われた訳ではないのですが、どちらかというと生きてる人間が一番怖いよね、っていうお話でした。久々にゾーッとした。とっぴんぱらりのぷう。

…さて、ここからが加筆部分なのですが、まず「あいつらは電気に来る」という発言に対して心霊現象に疎い僕が何故そうかもしれないなあと思ったのか。これには理由があるのです。

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