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まどろみ 【詩】


池にかかる小さな橋
まどろんでいた鯉たちが半分寝ながら群がってきた
鯉たちはこちらが餌をあげる気がないのを悟ると
またまどろみの中へ消えていく

誰もいなくなった池の橋にしゃがみ込み
きたないとは思ってもお尻を地面に落とした
橋の欄干に背中を預け、石のように凝り固まった体は次第に柔らかさを取り戻していく
いつも浅く短い呼吸は池の向こう岸へ届くほど長く深く

僕はいつもの間にか眠っていた
眠りから覚めると景色はさっきと変わらない
ショルダーバッグの中からタンブラーを取り出し
まだほんのりと温かい白湯をぐっと飲み込み立ち上がる
鯉がまたまどろみから覚めて群がってくる
僕はいつの間にか鯉がいる池へダイブしていた
戸惑う鯉たちのそばを、ただ何もせずに漂っている
鯉たちは奇妙な人間の存在に体を震わせ、まどろみの巣へ逃げようと慌てふためいている
まどろみの渦の中で衰弱していく人間に
だんだん平静を取り戻していった鯉たちは
僕をよそに談笑しはじめる

人間は鯉の食べカスとともに力なく沈んでいき
まどろみの気候変動に犯されながら──

息を吹き返したのはMacbookの銀盤の上
電磁波に犯されながらうつ伏せに
重い頭を持ち上げ、またつまらない作業に取り掛かり始める




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