長浜ユロ

詩や小説。たまにひとりで映画らしきものを撮ったりも。12匹の猫と共棲。 https:…

長浜ユロ

詩や小説。たまにひとりで映画らしきものを撮ったりも。12匹の猫と共棲。 https://lit.link/nagahamahulot

マガジン

  • 孤独な人の生き方

    孤独な人が社会に適応しながらも気楽に生きる方法。

  • 詩たち

    僕の詩たちです。

  • 日記小説

    日記を小説風に綴っています。

  • 眠れぬ夜のために

    不眠からの脱却・快眠へと誘います。

最近の記事

AM3:00 【詩】

気候の変化にただあらがいもせず 薄気味悪い夜半に 机に向かい カタカタ鍵盤を打つ ようやく星の呼吸は穏やかになり 誰もいない高原で 愛する誰かと走り回っている ありふれた理想の風景にたどり着いた

    • 初夏に限りなく近い春の夜半に【詩】

      記憶の鍋をぐるぐる引っ掻き回し アクをとる 顔色の悪い老人の横を通りすぎる 果たして自分なのか別人なのか LINEの通知が鳴る おそらく誰からでもない何かだろう 昼のあたたかい陽気が嘘のように 半袖にマウンテンパーカーを羽織っただけの体は薄寒さに震えながら 要するに晩春の憂愁に閉ざされている

      • 島へ向かう 【詩】

        魚たちが同じ間隔で海面を跳ねる 船が波に押され大きく揺れる 展望デッキでジタバタする僕に 反射的に投げかけられた視線 その顔を見ることもできず、さっきまで座っていたベンチへ戻る 船のエンジンが白波を立て 風を切り、空気をかわしていく もうすぐ島へ着くという船内アナウンスに 立ち上がるそこにいる誰か 僕はまだベンチに座り微動だにしない向こうの島を じっと眺めていた

        • ジレンマ抱えて飛び出した 【詩】

          ジレンマ抱えて飛び出した 雨と薄暗い春の気配 時間が虚しげに前を歩いている 汚れた白のニューバランスのスニーカー 安心のためにいつまでも同じものを履き続けていた 君に会う時は汚れを念入りに取り去っていたけれど もうその必要はすっかりなくなって 汚れすさんだ足元にも目がいかなくなった 道路工事の無機質な鉄を叩く音が頭蓋骨にジリジリ響く 白いヘルメットにオレンジの蛍光ジャンパーを着た 交通整理のおじさんが僕を特別ルートに案内する 会釈して、声にならないほどの声で「すみません」

        AM3:00 【詩】

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        記事

          アダンの木のそばで【詩】

          空港の売店で 迷いに迷って選んだ紅鮭おにぎりと 黄色いペットボトルのさんぴん茶を リュックの隙間へ押し込んだ 沖縄らしいからっとした空が妙に虚しく 海の波打ち際から数十歩離れた アダンの木のそばに腰を落とす アダンの鋭利な葉と葉のすきまから 生温い風が通り抜けていく 紫色の海底から何者かが這い出てこようとするのを 僕はうとうとしながら眺めていた 波はかすかに打ち続け 海中からはバカンスの甘い蜜を味わっている者たちの弾んだ声 どこか遠くの木に留まるアカショウビンも負けじ

          アダンの木のそばで【詩】

          まどろみ 【詩】

          池にかかる小さな橋 まどろんでいた鯉たちが半分寝ながら群がってきた 鯉たちはこちらが餌をあげる気がないのを悟ると またまどろみの中へ消えていく 誰もいなくなった池の橋にしゃがみ込み きたないとは思ってもお尻を地面に落とした 橋の欄干に背中を預け、石のように凝り固まった体は次第に柔らかさを取り戻していく いつも浅く短い呼吸は池の向こう岸へ届くほど長く深く 僕はいつもの間にか眠っていた 眠りから覚めると景色はさっきと変わらない ショルダーバッグの中からタンブラーを取り出し ま

          まどろみ 【詩】

          外へ 【掌編小説】

          時間だけが経過していくのを肌の表面は感じていても、体の中では感じることができずにいた。 「じゃあ少なくとも家の中にはいてね。」 友里はそう言って仕事へ出かけた。部屋で安静にしているようカウンセラーの先生に言われた通り、家の中での生活を余儀なくされていたが、落ち着かず何度も家を飛び出そうとしては友里に止められていた。 友里が出て少しの間が空いてから、私は彼女の言葉をあっさり裏切り、外へ出た。 薄紫のプリムラがアパートの前の花壇に小さく佇んでいるのをチラと見た。 ひとりなんとな

          外へ 【掌編小説】

          カモメと僕と海 【詩】

          かもめの声が海のある街に来たことを知らせる 愛想のない駅員さんに あえてにっこりと微笑みかけ 僕は港へ向かう 港には沈鬱な空気が漂い、 鮮やかな海をしらけさせている 途端に雨が降ってきて僕は漁業組合の前の屋根の下で一時をしのいだ 向こうからやってきた猫は僕を一瞥して方向転換して視界から消えていった 人間もおんなじように僕をいないものとするので 僕はこの港との相性を考えて 日はすっかり照ってきていたが、港から立ち去ることにした 駅へ向かう途中、船着場を見つけた 僕はどこ

          カモメと僕と海 【詩】

          砂浜遊戯 【詩】

          砂浜で自由な時間を過ごしていた 大きな手足のカニやサザエが陸へ上がってきて 僕の周りをカサコソしている ある時サザエのひとりが甲羅を脱し みんなの前から姿を消した 他のサザエのひとりは都会へ出稼ぎに行ったと言うし カニの地位あるヤツが言うには サザエは自ら干からびて死んだという まあるく平穏な時間が流れていた 夜の波間が静かに泡立っていた 砂浜の記憶が波に打ち消され まあるく平穏な時間が過ぎ去ることがただ恐ろしかった

          砂浜遊戯 【詩】

          海辺の僧侶 【詩】

          堤防の下で ひとり法を説くお坊さん 僕たちは不気味に思って 遠回りして砂浜へ出た まだお坊さんの声が聞こえてくるビーチには 古風なブレスレット 赤珊瑚じゃない?彼女は嬉しいそうに眺めていた それからひんやりとしてきた時間になると お坊さんの説法は波の華とともに解けて 聞こえてこなくなった 僕たちは消え入りそうに 冬間近の海辺の深遠な空気に包まれながら お互いを求め合った 離れていた頃の時間はやっぱり戻ってこなかった 陰うつな波が僕たちの間を侵食していく 「終わりでいい?」

          海辺の僧侶 【詩】

          卒業生 【詩】

          卒業した大学の図書館2階で ルソーの哲学書広げて うわの空でいる 無碍な時間を過ごしてはいけないと 重い椅子を引いて ナイロンジャケットを羽織り薄寒い外へ 幽暗のキャンパス内を ほのかな学生時代の記憶をふくんだ微風が 音も立てずに通っていく 中庭の狭い花壇の隅にはサフラン似た花のおしべが力無く 優雅な紫の花弁に包まれて微動している

          卒業生 【詩】

          秋のせいにして 【詩】

          秋のせいにして 僕たちはみな塞ぎ込んでしまった 記憶が頭の中で正座したまま 本棚の隙間からジグムントフロイトの肖像画が こちらを睨んで何か言いたげに クーラーを消して窓から駆け込んできた秋の空気に 胸がさわさわとする 自転車で百日紅のトンネルを抜けて 人工衛星がちらちらと明滅するさなか のうのうと流れる川を横目に 秋を齧り付きたい気持ちになった 気候変動にあなたはよく耐えました 気候変動はあなたのようなか弱い人間を萎縮させるかもしれませんが あなたは実際秋に打ち勝ってるん

          秋のせいにして 【詩】

          ゆれる 【詩】

          歩いても歩いても 苦しみは抜け去らず 路上に落ちていた何かの骨を拾い上げ 川に投げ捨てた  このまま臨終を迎えてしまうのだろうか 光のすきまで柳の葉がかすかに揺れる

          ゆれる 【詩】

          ナスタチウムの花が咲いた 【詩】

          ナスタチウムの花が咲いた 丸い葉っぱに緋色の花が伸びている 過ぎた時間の気化熱が庭をまあるく覆っている ナスタチウムの花が咲いたんだから あとでバルコニーで乾杯しよう ナスタチウムは可憐な顔で 私を見つめている

          ナスタチウムの花が咲いた 【詩】

          朝、憂い。 【詩】

          朝日がぽっつり惨めな顔をして 橋の上に浮かんでいる 薄赤く染まった街の人影ない路地で 小さく呼吸する男は 孤独のアンパン食べていた 時代に取り残された虚しい建物を横目に 今日も労働のすみかへ 君は素敵な音楽流しっぱなしで 眠っているかもしれない 夜の月がまだ空に居座っている時間に

          朝、憂い。 【詩】

          夜道をかける 【詩】

          自転車で夜道をかける 山の方からは生ぬるい風がぎこちなく こちらの暗闇向かって流れてくる 車輪に絡まった木の枝がカラカラと苦しそうに回転して やがて飛ばされ置き去りに 向こうからランニングしてきた人の背後には 街のあかりが小さくうずくまっている 夜道は続く。

          夜道をかける 【詩】