モノローグ

私が好きになったのは、兄の友達でした。

暑い夏の日、兄が友達5人を家に連れてきて、
私は兄の部屋にカルピスを持って行きました。

最初に話しかけてくれたのが、その人でした。
私は、恥ずかしくてろくに返事もできずに俯いてしまったけれど、
そんな私に嫌な顔一つせず、何度も話かけてくれました。
段々といろんなお話ができるようになり、内緒話なんかもして
その日みんなが帰る頃には、もうその人のことが恋しくなっていました。

家に来るたびに、私はあの人と仲良くなっていき
用もないのに廊下を行き来したりして
思い切って「あだ名で呼んでも良いか」と勇気を出して尋ねたら
あの人は笑って「いいよ」と言ってくれました。


でも、ある日、あの人はいつものあの人ではなくなりました。
私は、頭が真っ白になって、なんとか笑顔を作って、何か言ったような気がしますがよく覚えていません。
もし兄が私の気持ちを知ってしまったら、もう、いつものようにあの人と会わせてはくれないのではと思いました。


あれ以来、私はあの人と何を話したのか、何を観たのか、あの人がどんな表情だったのか、よく覚えていません。
いつもの様に目を合わせるのが怖くって、まっすぐ見れなくて、曇ったガラス板を立てたつもりで、時折そっとあの人の横顔を見ていました。


貴方は覚えてくれていますか?
私とどんな話をしてくれていたのか、何をして遊んだか、どんな声で私を呼んでくれていたか、貴方の頭の中に私はいるんでしょうか。
「友達の妹」から「恋人の妹」になった私は、どんな風に貴方の目に映っていますか?

「貴方が、好きです」

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