#37 名前は泳ぐ。
最近はよく本を読んでいる。
先日、『アーモンド』という小説を読んだ。
韓国の作家さんによる、失感情症の少年の物語だ。
ここに「イス」と「ゴニ」という名前が出てくる。
ゴニは暴力的で荒々しい性格なのだが、ゴニという名前は〝ゴニらしい〟と表現されており、
一方でイスという名前については「弱々しく聞こえる」と書かれている。
韓国のお名前だが、この感覚はとても納得できる。サ行のやさしく聞こえるイメージとか、濁音の持つ力強さとか。
日本と韓国では言語も名前の文化も異なるのに、そういったものが共通の感覚としてあるんだなあと、不思議な感じがした。
さて。
3月はなにかとバタバタしていて(ギリギリまでサボっていたとも言える)、noteに取りかかるのが遅くなってしまった。
前回や前々回のようにがっつり調査をする時間はなかったが、それでも題材をひとつ思いついたので、それについて書いていきたい。
3月にあったことといえば。
競泳のパリ五輪へ向けた代表選考会である。
テレビ放送がある時間に家にいる日は観戦していたのだが、わりと個性的な名前や、ぱっと読めない名前の選手がたくさんいることに気づいた。
そこで、今回は代表選考会に出場していた競泳選手のお名前のなかから、興味深いものをピックアップして、わたしの作成した分類に振り分けながら紹介していく。
Women's name
①ぶった切り
ぶった切りネームというのは非常に数が多く、こちらでもたくさんの例が見つかった。下記はその一部である。
⑤熟字訓・連声ぶった切り
上ふたつが熟字訓、いちばん下が連声のぶった切りとなっている。
⑥部分読み
どうして「彩=き」なのか。ここでは最もシンプルな部分読みと判断したが、もちろん勝手な推測にすぎない。
⑦採取読み
「風」に「らん」という読みはないため、このような採取読みだと考えられる。
⑧二度読み
「珠」という漢字に「す」という読みがあるのかは、辞典によって解釈が異なっている。呉音として載っているものもあれば、名乗り読みとしているものもある。
「ず」については、「数珠(じゅず)」の⑤熟字訓ぶった切りと考えられる。
⑨イメージ読み
「聖」を「いぶ」と読ませるのは、定番のイメージ読みと言えるだろう。
「音=らら」は、イメージ読みとしか説明のしようがない。
⑩外国語読み
リオ五輪や世界水泳の日本代表として活躍する、今井月選手である。「月=るな」の知名度を上げたのは、今井選手なのではないか。
⑪付加読み
とてもシンプルな付加読みだが、一発で読むことは困難であろう。
㉘置き字
ぶった切りと同様、さまざまなパターンがあり、多く見受けられた。⑩外国語読みの「月(るな)」をもとにした名前もある。
「礼依(れい)」という名前は2名確認できた。
⑹唯一無二風
個性的な漢字表記の名前もいくつかあった。
華やかに泳ぐ、で実際に競泳選手になっているのはすごい。
Men's name
①ぶった切り
女子名と同じように、男子名でもぶった切りは非常に多い。その一部を掲載する。
②後ろ残しぶった切り
同じぶった切りでも、より難易度の高いものとなっている。
⑤熟字訓・連声ぶった切り
こちらは熟字訓ぶった切りである。
⑨イメージ読み
どちらもストレートなイメージ読みではあるが、なかなかパッと読むのは難しい。
⑩外国語読み
「騎士(ないと)」はリオ五輪代表の江原騎士選手が著名だが、今回の代表選考会には同じ名前の選手がもうひとりいた。
⑯濁音化
こちらの名前は、音読み「かい」を①ぶった切りした上で濁音化している。
⑱拗音化
分類を複数組み合わせた名前は多いが、特に①ぶった切りとの合わせ技はよく見られる。
㉘置き字
女子名とは違い、男子名の置き字はこの2件のみだった。置き字によって読みにくさが増す場合とあまり変わらない場合があるが、これらはそれほど難読ではないように思う。
⑹唯一無二風
個性的な表記の名前をひとつ紹介する。
「りく」という響きは非常に人気で、さまざまな漢字が使われるが、こちらは「り=哩」も「く=駈」も珍しいチョイスだ。
これで以上となる。
わたしはこれまで、高校野球や箱根駅伝など、さまざまな大会をデータとして実在する名前の分析を行なってきている。
この意義としては、単純に自分の興味や楽しいという気持ちも当然ある。というかほとんどそれだけかもしれない。
しかし、フィクションや真偽のわからないネット情報ではなく、実際に存在する名前に触れることで、今の名付けや名前について明らかにしたいという思いもある。
キラキラネームやら何やら、いろんな意見が飛び交っているけれど、いちばんは、リアルを知ることで、何と言おうとも、そこにその名前が存在していることは事実なのだ、と。
まあ、だらだら書いても、結局は、好きが理由だ。
名前が好きなので、名前をいっぱい知りたい。
そんなふうにこれからも、勝手なnoteを書いていこうと思う。
最後に、女子名と男子名でひとつずつ、特にインパクトの強かったものを紹介して終わりたい。
どちらも、ぜひ由来を聞いてみたい名前だ。
それでは、また次回。
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