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『ご飯杖』 #毎週ショートショートnote


「母ちゃん、お腹が空いたよう。今日の夕飯はなに?」
「今日もお芋だよ。」
台所仕事をしているお母さんは、手を休めずに答えます。



また芋か…。
ケントは落胆しました。
ここ最近、国からの食糧の配給は制限されつつあり、各家庭に配られる量も減っていました。



ひと足先に食卓についたケントは、手元にある箸を取ると、ぷいと振ってみました。
「これが魔法の杖だったらなぁ。そしたら、山盛りのご飯をみんなに出してあげるのに。」
そんな風に想像しながら箸を振っていると、居間に入ってきたお母さんに叱られました。
「こら!お行儀の悪い。やめなさいって言ってるでしょ、それ。」
「はぁい。」
ケントはしょんぼりとしました。



「だいたいね、毎日ご飯が食べられるだけでもありがたいんだからね。足るを知りなさい。」
お母さんは食卓にふかしたお芋を並べながらそう言いました。
「足るを知る」というのは、役人もよく使う言葉でした。
大人たちは皆、同じようなことばかり言うのでした。


(410文字)


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たらはかにさんによる、毎週ショートショートnoteという企画に参加させていただきました。

今週のお題は、「ご飯杖」

ディストピアを想像して書いてみました。

毎日美味しいご飯を食べられて私は幸せ者です。


あむの



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