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『親切な暗殺』 #毎週ショートショートnote


俺の名はトシミツ。
こう見えても、暗殺者だ。


普通の暗殺者みたいに、依頼があったりして人を殺めるわけじゃあない。
暗殺するかどうかは、俺の判断だ。


どうやって、殺すかどうか見極めるかって?
簡単なことさ。
普段の生活の中、そう、道を歩いていたり、カフェに入ったりしたときさ、そのときに、幸せそうな人間を探す。
幸せに溢れてる人間を、暗殺するのさ。


俺は思うんだ。
幸せの絶頂で死ぬのが、理想なんじゃないかって。


なんて勝手なんだ、と言われるかもしれない。
でも俺は、苦しみの中で死ぬ人間を見るのはもう嫌なんだ。


今日は焼肉店に来た。
隣の卓にいるカップル、女性はニコニコ笑って明らかに幸せそうだ。
それもそうだよな。
好きな人と、美味しいお肉を食べるほど幸せなことはない。


よし。


俺は目にも留まらぬ速さで、女性の頼んだ青リンゴサワーに毒薬を入れる。
家に帰ってベッドに入った頃、この女性は眠るようにして死ぬはずだ。


ふぅ。
幸せな人間のいる限り、俺の暗殺は続く。

(412文字)


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たらはかにさんによる、毎週ショートショートnoteという企画に参加させていただきました。

今週のお題は、「親切な暗殺」



みなさんのお話も楽しみです🍀


あむの

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