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リサーチ2. 生成AI×マッチング〜最適なビジネスパートナーと出会えるGlobality〜

企業経営における5つの脅威を捉えるファイブフォース分析に示されるように、コスト構造を大きく左右する脅威が売り手(サプライヤー)の交渉力にあります。
例えば、建築業界ではウッドショック、アイアンショックによる建築資材の高騰が生じており、仕入れ先の選定や受発注オペレーションの効率化などが生命線となっています。
その課題解決の一手として注目されているイノベーションが生成AIの活用です。

日本国内では2023年5月1日に、「生成AIの利用ガイドライン」が制定され、パナソニックコネクトでは自社業務効率化のConnectAIが実用化されるなど、さまざまな事例が話題を呼ぶ生成AI。

今回は、生成AIを活用したサプライヤーマネジメントの改革事例としてビジョンファンドなどから100億円以上の投資を受けたGlobalityという海外スタートアップを参考に未来の取引社会を考えます!

▶︎補完ツールとして活用される生成AI

生成AIがもたらす社会変革は何か。
OpenAIのChatGPTは超話題のツールですが、その他には、例えば、エンジニアがプログラミングをする時に、自動でコードを生成するツールとしてMicrosoftのGitHub Copilotが注目されています。
GitHub Copilotは大規模な学習データを有して、Python、JavaScript、TypeScriptなど、複数のプログラミング言語を生成することに加えて、プログラミングミスやバグの発見までサポートできます。
ポイントは、既存の業務を大きく変革する開発の補完ツールになっていることです。

さまざまな領域で活用が進む生成AIですが、その他にも、製造業界、建築業界では、設計や材料探索、調達、研究開発、生産管理、品質管理、業務管理など、バリューチェーンの多くの部分でプロセスの効率化、アイデアの探索、膨大な単純作業の代替などを補完することで、大きな経済効果が見込まれるなど、旧態依然の巨大産業をも変革し得る技術として期待をされています。

▶︎生成AIとは

生成AI(GenerativeAI)とは、ガートナーの定義によると、「コンテンツやモノについてデータから学習し、それを使用して創造的かつ現実的な、全く新しいアウトプットを生み出す機械学習手法」とされています。

※筆者作成


従来のAIは既存コンテンツを出力することに対して、生成AIは新規コンテンツを出力します。

今回はその中で生成AIを活用することでサプライヤーマッチングのアイデアを出力するGlobalityを取り上げます。

▶︎Globality

Globalityは、世界初のスマートソーシングプラットフォームというビジネスモデルで、利用企業は自社に最適なパートナーとのマッチングを実現するサービスを提供しています。

2015年にシリコンバレーで創業され、2019年にはビジョンファンドとSienna Capitalから138億ドル(約190億円相当)の出資を受けています。

Globality は、プラットフォーム上の取引を通じて、さまざまなデータを収集し、分析し続けるために生成AIを活用し、QCDにマッチしたパートナーの探索/交渉/発注時間を短縮することで大きなコストを削減をサポートしています。

<サービスのポイント>
①目的に応じて、要件メモを詳細な仕様書に仕上げられる。
②チャットボットとのQ&Aを通じて、絞り込みが行われ、最適なマッチング候補の選定が可能になる。
③既存の取引先と新規の取引先候補を合理的に比較検討することが可能。
④企業規模や場所に関わらず、グローバルで未接点の取引先候補を探索できる。
⑤要点に沿って見積もりや契約に関する必要書類を自動作成できる。
⑥各取引の効果測定可能。
※取引結果から継続的に学習が進み、質が高まる

対象領域は製造、小売、IT、金融、エネルギー、コンサルティングなど多岐にわたり、主には大企業や中規模企業などグローバル展開をしている企業が顧客となっています。

サプライヤー企業は、QCDを評価されることで継続的かつ新規の取引可能性を高めることができるため、サービス向上を軸とした競争力を高められ、また透明性と公平性のある取引を担保することができます。

※筆者作成

生成AIを活用して取引関係の新しい可能性を模索することができ、需要と供給のマッチングだけではなく、ビジネスパートナーとして健全な取引が行われる社会の実現に繋がることも魅力的な事例です。

▶︎まとめ

中国ではタクシー配車プラットフォームDiDi(滴滴出行)が浸透し、品質の高いサービス提供に努めている運転手の信用スコアをが測定されたことで、ぼったくりなど不正を働く運転手が浄化されて信用経済が築かれたように、取引関係におけるテクノロジーの活用は、インテグリティを促進して、そこに大義としてのビジョンが存在する限り、正当な経営努力に報いることになります。

また、生成AIは大量の情報の中から有益な情報を抽出することができますが、最終的に判断して活用するのは人であることに変わりはなく、正しい経営の舵取りのためにはリテラシーが必要です。

生成AIによって従来は不可能だったことが可能となり、これからの社会でどのように活用されていくのか、要注目です!

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