夢追人に絶対観てほしい!映画「ブリグズビーベア」*ネタバレ注意


「外は有毒ガスが充満しているから出てはいけないよ」
 【両親】からそう教え込まれ、シェルターの中で育てられてきた青年ジェームス。ジェームスの唯一の楽しみは毎週届く教育番組のビデオだった。番組の名前はブリグズビーベア。クマのヒーローが宇宙を舞台に悪と戦う物語だ。
 毎日毎日、ジェームスはビデオを見続ける。そんなある日のこと、家に警察を名乗る男たちが突然やってきた。【両親】だと思っていた【誘拐犯】は逮捕され、ジェームスはその時はじめてシェルターの外へ出る。
 外の世界で、本当の家族に再会するジェームス。自分の【育ての親】は誘拐犯で、産みの親は別にいる。そんな現実を淡々と受入れていくジェームス。しかし、頭の中は毎週届く大好きなブリグズビーベアのことばかり。続きが気になるのだ。両親はそんなジェームスに他に興味を持たせようとするがどれも失敗する。ひとつだけ、父親が映画に連れて行ったときのこと。ジェームスは目を輝かせて、スクリーンを見つめていた。

 ジェームスが大好きなブリグズビーベアの話をしていたある日、温厚な母親が声を荒げる。
「誘拐犯の作った架空の番組よ!もう考えるのはやめなさい!」
するとジェームスは一瞬の沈黙の後に、驚きの声をあげて
「もしかして、映画は作れるの?」
 その一言からジェームスの波乱の映画製作が始まる。

 冒頭からぶっ飛んでいるこの映画。映画の中で何度も主人公は自分の好きなものを貫こうとする場面がある。
 両親に怒鳴られても、爆発のシーンを撮影しようとして警察に捕まっても、病院に入院させられても、ジェームスは映画の撮影をあきらめない。なぜならたとえ誘拐犯が作った番組だとしても、ジェームスはブリグズビーベアが大好きなのだ。

 ただ大好きなだけ。いつの間にか、ジェームスの周りは彼の映画製作を応援し始める。この映画は挫折を経験しながらも最後には夢を叶えるただのサクセスストーリーとは一風変わっている。
 差別や固定観念や、常識にとらわれずに、どこまで自分の中の「大好き」を貫くことが出来るだろう。僕も昔は小説家を目指していた。しかしある一言がきっかけで小説を書くのをやめてしまった。今でもその選択は間違っていないと思う。僕の話で恐縮だが、あきらめた途端に、ずっと死にたいという気持ちがついてまわって離れない。同じように今自分の中に大好きという気持ちがある人がいたら、絶対にあきらめないでほしい。
 ブリグズビーベアでは、主人公を誘拐犯から救った刑事がいる。刑事は刑事になる前、大好きな演劇をやっていたという。そんな刑事に主人公のジェームスがこんな言葉を投げかける。
「好きなことをあきらめるなんて、そんな悲しいことはない」
 本当にその通りだと思う。刑事はその言葉に感化されて、誘拐犯から押収したブリグズビーベアの小道具をジェームスに渡す。そして最後には、ジェームスの制作した映画に出演するのだ。
 夢をあきらめてしまった人にも、今も追い続ける人にも、絶対に観てほしいと、そう思った映画だった。
 

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