私は、見つける
滴が垂れたコップの端に
ふいに目を覚ました、長い夜の廊下に
ふやけた指でめくるページに
洗濯物の揺れるすき間に
少女たちの、健康的な笑い声の中に

私は、見つける
内側に響く、ささやかな音
生まれ落ちた瞬間から
途切れることなく
自分のためだけに
刻まれ続ける
時の音

私は、見つける
夕焼けが真っ赤に熟れた瞬間に
チカチカと点滅する信号に
使い古されたキッチンに
アスファルトのひび割れに咲く花に
その花に、ふと泣きたくなる瞬間に

私は、見つける
内側から響く、たしかな音
眼を瞑れば
そこから
果てしなく膨らんでいく
ゆっくりと、しずかに、私の中を満たす音

私は、見つける
私が、生きている音を
私のほかには
誰ひとりとして
聞くことのない
たったひとりのための
存在の音

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