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New Year Ballet

2022年1月14日(金)

新国立劇場バレエ団

(ネタバレあり)



①『テーマとヴァリエーション』

YouTube等にあまり動画がない同作品。あってもアンサンブルが揃っていない。

新国立なら揃うかなと期待して見たら、期待以上。よく揃っていた。揃えれば偉いわけではない。でも揃える方がきれいだ。そして揃えるのはとても大変。よくリハーサルしたのだなと思う。

3階席から見たが、これは上の階から見て正解(負け惜しみではない)。フォーメーションがよくわかる。

米沢唯は別格。他のダンサーと踊っていても、全然違う。バランシン作品でも「私は米沢唯です」と自己主張のある踊り(褒めてます)。

スタンディングオベーションものではなかろうか。これがラストだったらスタンディングオベーションだったはず。一番目の作品だったので拍手はしても立ち上がるのは躊躇われた。

バランシン財団に掛け合って、YouTubeで動画を流すべき。他の動画とレベルが違う。バランシン作品をやるバレエ団は世界で多いけれど、そのone of themではない。日本のバレエのレベルの高さを世界に知らせるべきだ。

1947年初演の作品も文字通り色あせていない。さすがバランシン。


②『ペンギン・カフェ』

ペンギン、ヒツジ、ノミ、シマウマなど動物が踊る愉快な作品。

と説明するだけでは足りないそうで、「痛烈な文明批判と現代の環境問題にも通じるメッセージが含まれて」いるそうな(パンフレットより)。

うーん。

ダンサーがのびのびと踊っていてよい。クラシックは窮屈だよね。バランシン作品も窮屈。それに比べてこの解放感!

見ていてよくわかる。ただこの解放感は映像では伝わらなかったな。以前無料配信のときは数分で挫折した。

『テーマと・・・』で芯を踊り(けが人が出たので出演することになったそうだ)、こちらもケープヤマシマウマを踊る奥村康祐は、こちらに専念したかったのでは。

広瀬碧、福田圭吾、福岡雄大、木村優里ものびのび踊っている。アンサンブルも男女みなのびのび楽しそう(もちろん簡単な踊りということではない)。

それで「うーん」なのだ。

ペンギンと人間が踊ったり、ノミと人間(民族衣装を着ている)が踊ったり、シマウマの衣装で(明らかに人間が)踊ったり、人間と動物が一緒に踊るのが面白いのだけれど、だったら「熱帯雨林の家族」はいらないし、衣装も変だ。

動物の衣装は凝っているのに、この家族だけ裸同然。妙にリアルである。差別的な表現と突っ込まれたらやばいだと思うのだが、バレエはゆるいのかな?

キャスト表、各動物は日本語とその英語表記なのだが、この「熱帯雨林の家族」は「Now Nothing」

えーと。

「熱帯雨林の家族」って日本語で意訳したのか?新国立のスタッフ、大丈夫か?ビントレーにOKとっているか?

むしろいわゆる未開の人間を登場させるよりも、PC抱えてスマホをのぞき込む現代人を登場させた方が面白いと思う。

最後に船に乗るのは、ノアの箱舟だと思うのだが(「信仰心の厚いビントレーらしい」とパンフレットにある)、キリスト教ですかー。それで救済なのかー。

3階から、しかも暗いから細かい演出は見えないこともあるし、パンフレットには作品の詳しい説明はない。だからいろいろと見落としていることも多い。パンフレットにきちんと書いてほしい。「見る人が自由に見てください」というには作品はわかりにくい。動物の踊る楽しい作品♡ではないわけで。

これはダンサーの問題ではなく振付家の問題。まあカタいこと言わずに見てよーというスタンスなのかもしれないが、それではあまりに浅い。薄い。

動物が踊る作品だと『ライオンキング』の方が何枚も上手。それに対してクラシックのダンサーがどう踊るのか。ただのダンスじゃ意味はない。

さっきはバランシン作品を踊ったダンサーが今度は動物を踊るなんて!新国立のダンサーは踊りの幅が広いですねー。

そのための作品なのか?それでいいのか?

(そのレベルかもねー)

バランシンとビントレーを比較することになり、バランシンは偉大だとあらためて思ってしまった。

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