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金がなくともポルトガルで家を持つ方法

今年の3月下旬吉日、妻が「みんなが幸せなマイホーム」の祈願をワープロで認め、僕の祈願(詳しいことは今は内緒)と共にアップルのクラウドに上げておきました。

我が家では、祈願をマックのメモ帳かグーグルドックスか何かに箇条書きにして書いてクラウドに保管していると、いつの間にか叶っていると言う、なんと言うか、一般世間様の常識から考えるとアレな家庭です。

欲しい家は、庭付き一軒家。ジブリっぽい雰囲気にしたい。

別にマイホームを買うなんぞ、金のあてもない。コネもない。時間だけはある。

常識で考えると、どうひっくり返してこね回しても、実現しそうにもない。

しかしながら、金がないのと、マイホームが欲しいのは、論理上何の関係もない。

不動産バブルで沸くポルトガル・困難な物件探し

最近のポルトガル不動産バブルは、ゴールデンビザと言われる外国人が投資すればビザが与えられる制度も原因の一端となっているものと思われる。

ここ数年不動産バブルが始まって以来、リスボンなど主要都市の家賃や不動産価格が上昇したおかげで、一気に都市の郊外へ移り住む人が増えてきた。

そのためか、家賃と不動産価格の上昇が周辺のベッドタウンにまで波及。庭付きの一軒家なんて、とうの昔に高嶺の花。そもそも庭付きの家なんて、普通のポルトガル人が羨望するような贅沢だったりする。そんな物件は高すぎて手を出せるようなものでは無い。

狭いアパートでも最低7万ユーロ。大体は1LDK、運が良ければ2LDKの間取りとなるので、子供が2人になってくると住むのが難しい。

少し都会から外れて田舎に行くとしても、ポルトガルの交通網が凄くお粗末なので、場所がかなり限られてくる。

田舎の方でも、ポルトガル南部と海に面した沿岸地域は人気が高い。ちょっと良さげだと思った物件はすぐに売り切れる。最近では主要都市や沿岸地域以外の内陸部の物件も品薄になってきている。

こんな状況だから、お金が無いとくれば、マイホームを最初っから諦めてしまうのも無理はない。これからインフレに大恐慌、品薄、食糧不足が囁かれていると言うのに、家を買うなんて大博打を打つのはオメデタすぎる。

それでも諦めないバカっぽさが我が家なのです。

新築より廃墟

とりあえず、土地だけ買っておいて、家の方は後で考えるのもありでは無いかと我々は考えていた。

妻の家族や友人は、住宅用空き地を買ってから家を建てた方が廃墟を買うより安いと助言してくれたらしい。一緒に仕事をしている社長に相談すると、社長の母は南仏で古い廃屋をリノベして転売する商売をしていて、その経験からも、廃屋を買ってリノベした方が安上がりだと助言してくれた。

更地の市場も住宅市場と似た感じで在庫が品薄。都市近郊の住宅地の在庫も希少。たまたま妻のお兄さんの近所に2.5万ユーロで空き地が売りに出されていると言う。建築費で更に費用がかかる。小さな平家を建てるだけでも諸費用含めて160,000ユーロ程度かかると業者に言われた。この値段は2022年3月時点の話で、住宅建築コストが去年と比べて12%も上がっているとの報道もある(ポルトガルニュース)。これから更にコストが上がっていくものと思われる。

廃屋の場合、構造が逝っていない場合は、なんとか行けると考えた。大抵の廃屋として売りに出されている物件は、屋根が傷んでいたり陥没していたりするのが殆ど。屋根の修理は数千ユーロ。なんとか最低限住めそうな状態にするのに、屋根の修理費用を捻出することを考えるだけで、あとは何とかなりそうな物を選ぶことにした。少なくとも新築で家を建てるより格段にローコストで済むはず。

廃墟を選ぶ理由はそれだけではない。新築だとジブリっぽい雰囲気を出すには余計金が掛かる。

その他許可などの取得には時間と多少の金がかかるらしいけど、我々には時間だけはある。

廃屋を買ってリノベ。これでマイホームいけるじゃん。

廃墟ハント大作戦

今から1ヶ月前の4月中旬、妻が「こんな物件があるんだけれども」と、ネットのサイトで極上の廃墟物件をみつけてきた。どうしようかと考えているうちに30分で売れていた。

とりあえず、チャンスを逃してしまった事を契機にして、1万ユーロ程度の予算で廃墟を探してみることにした。

探しはじめた翌日に、妻がポルトガル北部方面に面白そうな物件をみつけた。1.5万ユーロで、オーナーが突然1.25万ユーロに値下げ。速攻で内見の予約をして見に行った。

見に行ってみたのは良かったものの、、、サイトの写真や外観からは分からない事があった。中を覗いてみると、どうみても梁が炭のように真っ黒で、細い鉄パイプのつっかえ棒で辛うじて建ってるような気がする。2階の床が抜けていて、端に子供用バービー人形の偽物みたいなものが無造作に放置されているのが生々しい。これってもしかして事故物件なんではなかろうか。トトロみたいに可愛く無い本物のお化けの様な何かが夜に出てきそうな雰囲気だった。オーナー様には丁重にお断りして、ワケありすぎな物件を後にした。

物件がある村は凄く美しかったんだけれども。

これにもヘコタレず、物件探しを続行。

今度は、1万程度では微妙なものしか見つからないので、今度は予算を2万ユーロに上げた。

今度は南ポルトガルの村にある物件。これは良い出物をみつけたと妻と一緒に興奮していた。オーナーの時間の都合がつく一週間後に内見の約束したものの、前日にドタキャンされた。以後も掲載されたままなので、何らかの理由で売りたくなかったんだろう。こんな感じでドタキャンする人は面倒なトラブルを抱えてたり精神的に不安定で面倒臭いのが多いから、ドタキャンしてくれて却って運が良かったのかもしれない。

今度はターゲット2万ユーロを維持しながら、物件の表示価格上限を2.5万に上げて探し始めた。

なんのご縁か、ドタキャンされてしまった物件と同じおしゃれな田舎の村にある面白そうな物件を妻が見つけてきた。

今回は不動産屋さんが仲介してくれる物件。希望通りの庭付きの廃墟。問い合わせたのは土曜日。週明けすぐの月曜に現地に行って内見した。要件を満たす物件だと手応えを感じた。既に不動産屋さんが値段交渉してくれていた。だけど、提示された価格が、予算を少々オーバーしていた。これ以上値切れないと言う。

なにしろ、要件を満たす物件そのものが少ないので、比較的良い条件のものを逃したら、次に見つかるのがいつになるか分からない。

ポルトガルでは、14%の物件が一週間以内に売れていると言う(ポルトガルニュース)。約90%が一年位内に売れてしまう。一年以上も売れずにサイトに留まっているのは、売れたのに広告を取り下げ忘れているか、値段が高すぎるか、何か厄介な問題を抱えている物件だと思って間違いない。

金のことはとりあえず後で考えるとして、同じ週の木曜日に買う約束だけして家に帰ってきた。

さて、我々には、ローンと言う選択肢がそもそもありません。現金一括一択。

ポルトガルでは、家を買う人の8割がローンを組む。ポルトガルの住宅ローンは3万ユーロ以下の物件には下りにくい。なので、3万以下の不動産に関しては、これからローン金利が上がろうが下がろうが一向に関係ない。現金を持っている者だけが対象となるニッチ市場。不況時に3万以下の廃墟を買うような酔狂なことをやってるのは、金持ちか、資金に余裕がある投資家か、我々のような浮世離れした貧乏人くらいの物だろう。したがって、我々がやってるような事がブームにならない限り、廃墟市場の様子が変わる事がないものと思われる。つまり、アンダー3万廃墟市場は、景気の波に左右されず、競争相手の数は変わらないはずだ。良い物件を見つけたら即断する。この鉄則は変わらない。

帰宅してから、どこそこの口座の小銭やら、株、仮想通貨数万円分を集計してみると、提示された価格の額ポッキリ持っていた。あらま、そんなに悩まなくてもよかったじゃない。そういや、昔、仮想通貨で家を買おうなんて書いてなかったっけ?当たらずも遠からずになっている気がする。速攻金融資産を全部売って現金に変えた直後に、株式市場が大暴落。1日でも売却が遅れたら買えなくなっていたところだった。危機一髪だった。

代金は貯蓄口座に大事に保管しておいて、支払いの日を待つのみ。社会保障費とか税金の支払いなど色々あるけど、そっちの方は別枠で貯金しているので大丈夫。

廃墟を買ったところで、それからが大変

無事広い庭付きの廃屋を買うことができても、すぐに家の体を維持するのに必要な修繕をしないといけないし、壊れている壁を修理しなければ、不法侵入や不法占拠の恐れもあります。廃墟を買うのはスタート地点。

我が家には、廃墟を買って時間をかけながらリノベーションをしていく大切な理由がある。

この格安な廃墟のリノベーションが終わったあとは、家の価値が数倍程度にはなっている事だろうと思う。

現金で我が家が希望するような完成品の家を買うとすれば、かなりの額を出さないといけない。

いま大金が湧いて出てきたとして、完成済みの我が家を購入して住み始めても、困難に立ち向かうだけの力量をまだ持ち合わせていない。

色々な法的の制度や仕組みに詳しく無いし、家を維持する経験や知識も殆どない。詐欺などへの免疫もない。

この規模の家だと、お金を管理する術もある程度ないと満足に維持できないだろう。金融リテラシーも必要となってくる。

この家をリノベーションするのは時間がかかるので、少しづつ良いペースで家族全員で学んでいけるので、大金を中途半端に持っていなくて却って良かったと思っている。

南ポルトガル・アレンテージョ地方の田舎駅への旅紀行
車窓から垣間見れる朝のアレンテージョの森は更に美しい。全身が身震いするような感動を覚えた。あの感動をカメラに収めるにはかなりの技量が必要になる。今の自分にはできないので悔しくもあった。