お客さんを乗せた最初のフライトの話

先日の記事で書いたタイプレーティング(飛行機の操縦資格)を無事終えて、いよいよライントレーニング、飛行機のOJTが始まった。

これからおよそ1ヶ月間、数にして100セクター(100便)、実際の運航を学ぶ。操縦資格をとったとは言え、私のような、右も左もわからないペーペーのFO(ファーストオフィサー)と飛ぶにはそれなりの経験を持ったキャプテンでなくてはならない。実際に、そういう資格を持った「トレーニングキャプテン」と飛ぶことになる。100セクターが終わった後に、審査があり、彼ら以外のキャプテンと飛んでも安全を損なうことがないと認められると、晴れて一人前のファーストオフィサーとしてスタートラインに立つことになるのだ。

シミュレータのタイプレーティングトレーニングも大変だったが、ライントレーニングはまた違った大変さがある。まず、ディストラクション(横槍)の多さが違う。キャプテンとのブリーフィングの途中にATC(管制)から質問が入ったり、お客さんや荷物の積み込みが遅れたり、FMSと呼ばれるコンピュータに到着経路をプログラムしてさぁ、降下だ、というところで滑走路の向きが変わって全部打ち直しになったり。。。とにかく邪魔が入って計画通りに物事が進まない。着陸後、車椅子が必要なお客さんがいるので、目的地が近づいてきたら無線で会社のオペレーションにあらかじめ用意してもらうよう伝える、なんてこともあった。

タイプレーティングの時は、操縦資格の取得が目的だったから、車椅子のお客さんはいないし、管制官は空気を読むし、滑走路や到着経路はその日の課題としてあらかじめ決まっているので、変更するということはなかったわけだ。

ところが、実戦では、タイプレーティングで言われた通り、習った通りの順番で仕事をやろうとすると、上記のような邪魔が入ることで、中断ややり直しが多くなる。車椅子のような実戦ならではの作業は、そもそもそんなことをするなんて知らないので、作業そのものがおっかなびっくりである。結果、時間のロスが多くなる。時間をロスすると、定時出発・到着に影響が出てきて焦燥感が生まれる。焦るとミスが増え、さらに時間をロスする。スパイラルだ。これはしっかりとミティゲート(対策)されないと安全運航に支障をきたしてしまう。それでも、数本飛ぶと、色々と見えて来る。ミスをしながら、でも、それを致命的なミスにしないように管理しながら、ミスから学び、ひとつひとつ習熟していく。それにしても、最初の数日間は、ものすごいラーニングカーブだった。トレーニングキャプテンは大変だこりゃ。

***

驚いたことに、初めて飛ばす飛行機でも、離着陸はほとんどシミュレータと変わりはなかった。ベースのあるウェリントンは「Windy Welly」と言われるほど、風が強いことで有名なのだが、幸いなことに、私の最初のフライトの日は天気も良く、風も穏やかだった。国内線なので、ウェリントンに1日何回も戻って来る、と言うフライトが多い。数日飛ぶごとにだんだんと風が吹いてきて、難易度が徐々に上がってきたのも幸いした。

風が吹いて来ると、シミュレータとは少し違ってくる。飛行機のスピードやプロファイル(滑走路への進入角)が絶え間なく変化する。滑走路の接地点に狙い通りに着陸するには、エンジンの出力(左手)と姿勢(右手)を微調節して、できるだけスピードとプロファイルを一定にするように、「安定」させた状態で滑走路端まで飛行機を持ってこなければならない。これがちょっと難しい。

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大吉
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Ashzk

ニュージーランドでパイロットをやっています。

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