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秩序とカオスの狭間にて。

旅客機が着陸してくるのを、空港の屋上から眺めるのが好きだと言う人は多いと思う。こういうときの飛行機っていうのは探すと見えないくせに、目を離すといつの間にか巨大なガスバーナーのような騒音とともに滑走路上に出現している。羽田や成田など、忙しい空港ではひっきりなしだ。

現代の旅客機は、GPSの恩恵をフルに受けていて、FMSと呼ばれる機上コンピュータにどこどこのGPSルートを飛びます、と入力すれば、あとはオートパイロット(AP)が自動的にその上をトレースしてくれる。実際に、国際線を飛ぶめっさでっかい飛行機ボーイングとかエアバスとかは、離陸してすぐAPを入れて、腕組をしてれば飛行機が空港に向かって決まったルートを飛んでくれる。その気になれば着陸すらAPがやってくれる。

厳密にいえば、空港側の支援施設の制約もあるので自動着陸ができる飛行機が、いつでも、どこでもAPで降ろせるということではないのだが、車の自動運転に比べて飛行機の自動操縦は、その秩序立った運航システムの特性から、当たり前のように使われている。なんだ、パイロットってのはなんて簡単な仕事なんだ、って思うかもしれない。


馬鹿言っちゃいけねぇよ。


勝負は、離陸直後に始まる。離陸して、フラップと呼ばれる高揚力装置(離陸した後、翼の後ろのほうがウゴウゴと動くアレだ。)を格納するまでは、シンプルだ。操縦桿を握って、ただ、まっすぐ飛べばいい。問題は、そこからだ。APを入れて、飛行機がFMSのGPSルートにフックアップされたことを確認し、さて、一息つくか、っと思ったとき、キャプテンがおもむろに言う。

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