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司法試験に向けて伊藤塾生が使った市販の参考書・演習書

 というわけで、書いてみたいと思います。

 まず前提としてお伝えしておきますが、私はほぼ伊藤塾の基礎マスターと問研のみで予備試験に合格しました。かなり忠誠心の高い(?)塾生だったといえます。他の教材を使わなくても合格レベルまで持っていけると講師はよく言いますがこれはその通りだと思います。

 その後司法試験までの半年間で勉強法を一から見直し、評判なども参考にしつついろいろと試行錯誤し、これなら問研の足りないところを補えるのではないかと思う教材を自分なりに揃えました。ここに挙げた参考書はすべて予備試験後に購入したものです。あくまで中心にあるのは基礎マスターと問研で、市販の演習書はそれを補うために併用して使っていく感じです。私が個人的に良いと思った教材なので向き不向きは人それぞれですが、一例として今後の学習の参考になれば幸いです。

基本刑法Ⅰ・Ⅱ

 この手の話題で必ず槍玉に上がるのが刑法と刑事訴訟法です。最初のうちはなぜそんなに叩かれるのかよく分からなかったのですが、学習が進んでくるとたしかに「この規範は使いにくいな」「これは書く順序が逆じゃないのか」などと思うようになってきました。危険の現実化説と相当因果関係説を混ぜたような論証とか……。

 基本刑法のいいところは学説が対立している代表的な箇所を分かりやすく示している点です。近年の司法試験は学説対立問題がお気に入りのようなので、どちらの立場に立つにせよ複数の学説をある程度説明できるようにしておく必要があります。基礎マスターと問研で一通り勉強したあと特に論点として狙われそうな箇所を素早く復習するのに向いていると思います。

 また予備試験口述の参考書としてもよく挙げられます(口述の待合室は基本刑法だらけでした)。日本評論社のホームページの下部から「簡易問題集」というPDFをダウンロードすることができ、これは口述の仮想問題として役立つはずです。

刑法事例演習教材 第3版

 司法試験のネタ本?として名高い演習書です。実際にこれを見ながら出しているわけではないでしょうが、それだけ試験に問われやすいポイントを的確に網羅しているということなのでしょう。ただ解説部分がかなり薄く答案例もついていないので、何らかの方法で答案例を入手すると最強の本になります(私は講座を取って入手しました)。
 2020年12月に第3版が刊行され、ネット上にある答案例はほとんどが第2版のものですが、問題が4問追加されたのみで第2版の問題はほぼ変更されていないためそのまま活用できます。

基本刑事訴訟法Ⅱ

 論文マスターの刑訴では半分以上講師作成答案例が配布され、「じゃあ最初から問研を修正しておいてよ」という気持ちに誰もがなるのではないでしょうか。相当説ではなく緊急処分説を取っていたり訴因変更の論証がよく分からなかったりする点が指摘されますが、任意取調べと実質的逮捕(予備R1、新司R2等)が載っていないのも辛いところです。

 基本刑訴Ⅱは2021年3月に刊行された最新の書籍で、これを悪く言っている人を見たことがないほどクオリティが高く、伊藤塾の論証の分かりにくい部分を修正することができます。私は読みながら目から鱗がボロボロ落ちました。また捜査比例の原則では問題ごとに天秤のイラストで何と何を比較衡量しているのか図示され、理解に大変役立ちました(新司R4のおとり捜査はこの図のおかげで解けました)。

事例でわかる伝聞法則

 こちらは以前「最高の演習書「事例でわかる伝聞法則」の使い方」というnoteで紹介させていただきました。とても良い本だと思います。

事例研究行政法 第4版

 行政法の問研だけロー入試が大量に含まれていますが、行政法の良問はそれだけ作るのが難しく、適切な演習を積むことがどうしても難しくなります。演習書は解答例がついていないものが多く自学自習が困難なのがネックですが、この本は問題の質に加えて解説部分が非常に分かりやすく、本文を丸ごとつなげると答案としても使える形になっています。規範とあてはめのどちらでもそのまま答案に使える表現を学ぶことが出来ます。
 2021年8月に第4版が出ましたが、約半分が新作と大幅に入れ替わっており、第3版とあわせて手に入れれば問題数が1.5倍に増えます。

民事系

 民事系については私は特に不満はなく、他の教材はほとんど使いませんでした。

 民法の市販の演習書は改正に対応したものが多くないという難点があります。問研は旧司の過去問をすべて改正民法で解き直しているのでそれだけで価値が高いです。以前は定評のあった「事例で学ぶ民法演習」という演習書は改正に対応しないためほとんど使えなくなってしまいました。民法は問題の数をこなして「この条文はここで使うのか!」というひらめきを積んでいくのがいいので、問研で足りなければ新司の過去問、それで足りなければ新伊藤塾試験対策問題集(「赤本」)を使って数を補うといいと思います。

 会社法と民訴は問題数をこなすよりも、基礎的な判例の理解を固めていくほうが結果的に問題が解けるようになると考えていたため、演習書は使いませんでした。この判例はなぜ重要なのか、もし真逆の結論にしたければ事例をどう変えればいいか(判例の射程)、などを考えながら読むと理解が深まると思います。


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