藤井風と尾崎豊 似ているかどうか考察してみた
結論から言うと「全然違う」し「似てもいない」
と、わたしは感じている。彼らは音楽的にも、キャラクター的にも全く異なるからだ。
尾崎が死を匂わせる「陰」なら藤井風は生命力あふれる「陽」だろう。
生きることの苦悩の塊のように見える尾崎豊。藤井風には「よりよく生きる」ことへの憧れや自身との葛藤を感じても、コンプレックスや苦悩、死を意識した焦燥感などは、みじんも感じられない。
わたしは尾崎豊の音楽を自ら好んで聴いてはいない。ただ学生の頃、知人に強烈な尾崎ファンがいた。彼は尾崎豊に心酔しており、わたしと顔を合わすたび、尾崎の布教をしてきた。
「音楽も歌詞も、すごくいい歌だから。音楽の勉強をしているのなら、一度だまされたと思って、ちゃんと聴いてみてよ」
とCDを渡された。
アルバムで聴いたことはなかったが、「盗んだバイクで」「きしむベッド~オーマイリトルガール」ぐらいのメジャーなフレーズは知っていた。尾崎豊の美しい顔かたちも、なんとなく浮かぶ。ただ、どれだけ繰り返し聴いても、あまり感情移入できなかった。
尾崎豊のピアノ弾き語り映像 藤井風と比較すると違いがよくわかる
原因として尾崎のサウンドが、ギター中心のフォークロック調だったのは大きいだろう。当時は都会的で洗練された音楽が好みだったわたしには、ギターで熱唱する泥臭いスタイルの尾崎は、残念ながら響かなかった。
何より、尾崎豊の「闇を感じる」世界と「本当は育ちが”悪くない”のにつっぱった歌詞」に共感できなかったのだ。
学生時代、クラシック音楽の世界にいたわたしには、濃厚で混沌とした情念渦巻く音楽に日常的に触れていた。尾崎豊の世界観は、わたしには重すぎた。
没後もカリスマ的人気を誇る尾崎豊。彼は「自分探し」の人だったのか。自我と世間との折り合いを付けることに葛藤し、混沌とした世界に疑問を抱く。コンプレックスを抱え、モラトリアム期の真っ只中にいた若者たちには絶大な支持を受けたのだろう。
昭和感漂う藤井風。ルックスの雰囲気は多少、尾崎と似ているかもしれない。「青春病」MVで見られる90年代風の髪形や、ビリージョエルの 「Just The Way You Are 」を歌っている動画を見ればわかる。
才能に恵まれながらも、若くして命を終えた尾崎豊は、短命アーティストの象徴的存在だ。いま、藤井風は、その恵まれた容姿とありあまる才能、チャンスまでもを手にしたところ。ネット上には「尾崎のよう」「才能がありすぎて早死にしそう」だという声が散見される。
だが藤井風は夭折(ようせつ)の天才にはならないだろう。
なぜなら彼にはコンプレックスや闇が感じられないから。ただ、美貌と才能を併せ持つだけに、時折、憂いとペシミズム(厭世観)をまとっているように見えてしまう。
「美しいものは、はかない」私たちは、そう刷り込まれているのだ。
「美人薄命」というように、美しい人は、はかなげで夢うつつに映る。ずっとYouTubeの画面の中から歌いかけてきた藤井風。ライブチケットが取り難く、本人になかなか会えないのも、更に神秘性を高めるのだろう。
藤井風は、まるで水彩で描かれた美人画のごとく、どこか非現実的な雰囲気を漂わせているのだ。
画像引用元:藤井風公式YouTube
藤井風さんの音楽的分析と楽曲考察から「藤井風」をめぐる現象まで。いろいろ書いてます。
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