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「tiny desk concerts JAPAN」初回放送に藤井風が登場!視聴レビュー


歌とピアノだけで音楽が成立する藤井風にもってこい?


「藤井風がtiny deskに?!さすがNHK!」

告知を見た時、この企画で藤井風を聴ける喜びに、うち震えました。
ボーカルとピアノだけでも、上質な音楽を届けられる藤井風。
tiny desk concertsのコンセプトは、彼にもってこいなんですよね。

tiny desk concertsは「小さな机のコンサート」


タイトルが示すとおり、オフィスの小さな机でパフォーマンスするコンサートです。

「斬新なコンセプトから生まれたオーガニックなサウンドと親密なライブの雰囲気」

NHK MUSICブログより

この「オーガニックなサウンドと親密なライブの雰囲気」こそ、藤井風の持ち味だと思いませんか?

彼はデビュー前、岡山の実家にいる時から、小さな空間でピアノ弾き語りをし、YouTube動画で発信し続けてきました。

配信ライブは回数を重ねた「ねそべり配信」がよく知られています。
「ねそべり配信ライブ」は、まるで自分の部屋で演奏しているかのようなラフな雰囲気で、ファンの間でも根強い人気があります。

もちろん、最新のテクノロジーを駆使した大空間でのライブも楽しいです。けれど(わたしを含め)「ピアノ弾き語り」こそが彼の原点であり、真骨頂だと思っているファンは多いのではないでしょうか。

ピアノと身体ひとつだけで挑んだ伝説のライブ記録 ↓


バンドスタイルが多い本家Tiny desk concerts


本家NPR MusicのTiny desk concertsでは、世界中の多彩なジャンルのアーティストが、各々のスタイルで演奏を披露しています。

洋楽が好きな筆者は、お気に入りのアーティストが出演していることもあって、以前から折に触れてチェックしていました。バンド形式でのパフォーマンスが多いのですが、藤井風は当然、ピアノ弾き語りになるだろうと思っていました。

オファーを受けた際、マネージャーの河津氏も「ピアノ弾き語り」だと思っていたようです(’24 3/17 藤井風アプリより)




想像の上を行くバンドでのパフォーマンス

オンエア前日になり、流れてきた「きらり」の告知動画は、なんと……
バンドスタイルでした。

すぐさま

「これは……とんでもないコンサートになるに違いない!」


と確信を持ちました。


全盛期の※アシッド・ジャズを思い起こさせるような、ジャジーなアレンジです。

リムショットをきかせたグルーヴィーなドラム、フックは効いているが前に出過ぎないギター、うねるベースライン、絶妙なタイミングで刻むエレピのコードバッキング……原曲のPOPでキャッチーな4つ打ちサウンドとは、がらりと雰囲気が変わり、しっとりアダルトな表情の「きらり」
まさに”他では聴けない「オリジナルで最高」な音楽体験”ができそうです。期待に胸が躍りました。



※アシッド・ジャズ
'80年代後半に「踊れるジャズ」をコンセプトに生まれたジャズ、ファンク、ハウスなど、さまざまなスタイルを取り込んだダンス・ミュージック全般を指す。アーティストでは、JTQ、ガリアーノ、ジャミロクワイ、インコグニート、ブランニュー・ヘヴィーズなど。

▶ Incognito - Still A Friend Of Mine
アシッド・ジャズの中でも、美しいメロディーと洗練されたコード進行、ベースとドラムのグルーヴ感がたまらない(筆者も学生時代にバンドでコピーした大好きなバンド)


「ワシひとりじゃなくて、バンドとコーラスと一緒に出ないと意味がないでしょ」


(tiny desk concerts 翌日の ’24年3/17、藤井風アプリより)

藤井風のこの発言を読んで、

「ああ、やっぱりバンドなんだ。みんなで声と音を合わせて、ひとつの音楽に共鳴することに、大きな意味があるんだ」

と思いました。

実家にいる間、基本的にひとりで音楽を作っていた藤井風。
その時間が長かったからこそ、バンドセッションで得られる音の豊かさに心揺さぶられ、仲間の奏でる音と共鳴するのが「楽しくてたまらない」のではないでしょうか。

声の魅力とフィジカル(身体性)の力を実感 あっという間の30分


◇テクノロジーの進歩で得たもの、失ったもの

ここ30年ほどの間、テクノロジーの進歩で音楽機材も大きな進化を遂げました。デジタル技術とインターネットの発達により、これまで不可能だったことが可能になり、音楽の自由度も格段に上がりました。

いまや音楽経験や知識がなくても、スマホ1台で誰でも手軽に音楽を作ることができます。ちょっとした曲なら、人間が作ったのかAIが生成したのか、区別が付かないほどのレベルに到達しようとしています。

また、サブスクの普及により、多種多様な音楽を簡単に聴けるようになりました。テクノロジーの恩恵にあずかる一方で、聴かれる機会の少ない楽曲も大量に生産され、日々、消費され続けているのです。

以前に比べて、音楽1曲を聴くことの重みが軽くなってしまった時代だからこそ、コンサートで”感情を持つ生身の”ミュージシャンたちのパフォーマンスを楽しめるのは、ぜいたくなことです。

音楽の再現性でなら、人間はAIにかないません。ですが、生身の人間のライブパフォーマンスは、その一瞬限りです。人と人とが出会うことで生まれる偶発的な出来事は、再現できないからこそ尊く、価値があるのだと思います。

藤井風の魅力を余すところなく伝えたミキシングとパフォーマンス


今回のTiny desk concerts Japanでは、藤井風のボーカルを堪能できたように思います。

全体的に抑制の効いたミキシングもさることながら、メインボーカルに寄り添うよう、オクターブで広がりを持たせたYo-Seaにしなの美しいコーラスは特に新鮮で印象的でした。

また、決して前に出過ぎることなくバッキングに徹するDURANの渋いギター、ジャズベースの素養をビリビリと感じる勝矢 匠のファンキーなベース、グルーヴィー、かつ軽やかなビートでスウィングしたくなるような工藤誠也のドラムにも「日本の若手ミュージシャンの底力」を感じました。

そして……忘れてはいけないのはバンマスとして、キーボード担当としてアンサンブルをまとめ上げたYaffleの存在です。デビュー当初から藤井風のプロデューサー/アレンジャーとして、共に音楽を生み出してきたYaffle。

普段は、メディアであまり前面に出ることはありませんが、今回のコンサートで彼が藤井風を見守る優しいまなざしには、グッと込み上げるものがありました。

バンドメンバーそれぞれの卓越した演奏に圧倒され、心をつかまれたtiny desk concerts JAPAN。世の中の憂きことを忘れさせてくれるような、素晴らしいパフォーマンスでした。とても幸せな時間で、翌日も録画のリピート再生が止まりません。次回はどんなアーティストが、どのようなパフォーマンスを聴かせてくれるのか、今後も楽しみな企画です。


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本当は1曲ごとのレビューを書きたいところなのですが、残念ながら働けど働けど……なにかと余裕がありません(笑)できればどなたか(楽器演奏やソングライティングをされる方だとうれしい)のレビューを心待ちにしたいと思います。

素晴らしいパフォーマンスを聴かせてくれた藤井風。バンマスのYaffleをはじめ、ミュージシャンの皆さんの演奏が本当に素晴らしく、久しぶりに音楽にときめきました。本当にありがとうございました!


Special Thanks

Keyboard:Yaffle
Gt:DURAN
Bass:勝矢 匠
Dr:工藤誠也
Chorus:Yo-Sea
Chorus:にしな


【おまけ】

にしな - シュガースポット【Official Video】

NHK Eテレアニメ「ドッグシグナル」エンディングテーマ です。

家族がこのアニメを見ている時に偶然、耳にしました。
「サビのメロディーがヨナ抜き(の変形)でキャッチー、メジャー調なのに切なくなる曲だな……」
と印象に残っていたのですが、藤井風が彼女にコーラスを依頼したことを知り、改めて歌詞を見ながら聴いてみると……

謙遜もしすぎは禁物
自信も過ぎれば執拗
死ぬまで何回も
間違えてばっかだけど


(中略)

シュガースポット
痛みも打ち身も甘く変わる
腐るほどまだ何もやりきっちゃいないだろう
しくじって振り出しだって大丈夫

にしな-シュガースポット

どうでしょう?とってもエモーショナルじゃないですか?
ちょっと自信を無くしそうな時でも、背中を押してもらえて元気が出るような歌です。

河津マネージャーのダイアリーには、藤井風が空港へ向かう車内で「にしなの楽曲たちを聴いて号泣した」エピソードがありました(’24年3月14日付 藤井風アプリ・スタッフダイアリーより)
個人的には、ひょっとしたら「シュガースポット」だったのかも……と。
あくまでも”個人の感想”ですけどね!


藤井風さんのこと、いろいろ書いてます。
この記事で57本目。



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