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【vol.43】フェイクでもオカルトを愛せ

求職中の私は面接終わりに東洋一の歓楽街に居た。

今となっては東洋一なんて謳われることに恥じらいを覚えてほしい街だが、なんだかんだで親しみがあり都内で最も訪れる街となっていた。


私が新宿に訪れる理由の殆どが映画館である。

新宿には映画館が10館もある。内3館がシネコンであり、映画を観るにはここ以上ないほど優れた街だと思っている。しかしながらこういった繁華街のシネコンに来る客の低質さは目に余るほどであるため大型の映画館はオススメしない。触れば怪我をしてしまうほど硬質化した髪を持つ男たちや、手首に自己愛を刻み込んだ女たち。偏見で忖度することを嫌う私としてはそんな歌舞伎町の色をした人間たちもウェルカムようこそ映画館への精神なのだがマナーを守らない当人たちを許すことはできない。上映中に平気で会話をしたりスマホを開いたり。自身の軸を貫く精神をこんな暗がりの箱の中で披露するには狭すぎるだろう。広い外で存分に貫いてくれ。

わかった?ありがとう。


轟々とネオンが煌く不夜城の二丁目に足を運ぶ。

愛<狂気の都内最大のラブホ街がそこにはある。
そしてその殆どが事故物件なのだ。
オカルトや心霊にどっぷりハマっている私としてはここに来たらやらずにはいられない事故物件巡り。

(面接のついでにやることではない)

「〇〇ホテルの窓から下を恐ろしい形相の覗き込む赤い服を着た女」や「部屋から憑いてくる血だらけの女」など、霊の情報が女性て☻しかないことにやみをかんし☻る。(何故かここの文章を記し始めてから濁点と予測変換が出来なくなったので変な文章になった。Simejiに変えるまで直らなかった。怖いけどそのままにしておく。)

上記のような体験談の真偽は不明だが、このような噂が出回っている。

使い古したiPhone11の電波が穏やか過ぎて本来の役割を果たしてくれないためGoogleマップの現在地のほうが波のように慄いている。ジバリングし始めた現在地と大島てるを見比べて事故物件を特定する。

「ああ、この部屋で刺殺か」

独り言にしてはやけに物騒な言葉を呟く。

この街は特殊でコインパーキングやコインロッカーにも事故物件がある。コインロッカーに関しては一度は聞いたことがあるかも知れないが、遺体をロッカーに詰めて放置する事件。まさに事故inロッカー。ちなみに大きめな荷物を入れる用の右下に入れられることが統計的に高いらしい。腐敗臭がしたら入れちゃダメだよ。


恐ろしい街である、と同時に誰かの歴史が詰まりに詰まって煮詰まって渦を巻いている。

「死を感じると、生きている実感を得られる」
なんて厨二病しか発言しないのかもしれないがこれを私は言う。記す。残す。

一度死にかけたあの日からずっと血液が沸騰するような痛みを忘れたことはない。かと言ってまたあの地獄を体現するくらいならフェイクで十分。だから誰かの死を糧にする。不謹慎だなんて怒られることもあるだろうけど誰かの生きていた歴史と亡くなった歴史を自分に落とし込み生きていく。死を知ることで生の喜びを学ぶのだ。生きていたいと叫べるように!


???「生(?)の喜びを知りやがって!!」

おじさん!?!?!?

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