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mtDNAハプログループXとネイティブアメリカンの起源の謎

   北米大陸の先住民というと、誰もがインディアンの名で知られるネイティブアメリカンを浮かべるかと思います。
   
   私達日本人と同じモンゴロイドの遺伝子を持つとされるネイティブアメリカンですが、実は広大な北アメリカ大陸全体に住んでいたその部族と文化はとても多様だったため、あらゆる部族を同じネイティブアメリカンとして一括りに認識してしまうのは真実に蓋をしてしまう行為なのかもしれません。

ネイティブアメリカンの部族マップ

ネイティブアメリカンの部族リスト↓


  今回の記事では、北米大陸に残る古代遺伝子の痕跡や新たな考古学的発見に注目し、一般的には認識されていない多様な北アメリカ先住民の起源の謎を迫っていきます。

ネイティブアメリカンの起源

   まずは、一般的に認識されているネイティブアメリカンの起源を見ていきましょう。

ユーラシア大陸からの流入

   モンゴロイドと共通の遺伝子を持つネイティブアメリカンは、日本人とも兄弟であるという話は多くの方が聞いた事があるかと思います。
定説ではネイティブアメリカンの起源は、今から25000年前の氷河期時代にシベリアを経由し、当時陸続きになっていた現在のベーリング海峡を渡ったモンゴロイドであると結論付けられています。

   しかし、上記の図に示されるように、氷河期には現在のアラスカからカナダの地域は分厚い氷河で覆われていました
シベリアを経由してきたモンゴロイドのグループは通過できなかったため、彼らが本格的に南下し現在のアメリカに流入し始めたのは分厚い氷河が溶けて通れるようになった約15000年~16000年前だと推定されています。

ネイティブアメリカンの遺伝子

   次に遺伝子を見てみましょう。ネイティブアメリカンの遺伝子は以下の通りです。

ネイティブ・アメリカンのY染色体ハプログループハプログループQが大半を占めている。Q系統はケット人セリクプ人などのシベリアの一部でも見られるが、ユーラシア大陸ではあまり見られない系統である。
ミトコンドリアDNAハプログループABCDXが見られる。

Wikipedia ネイティブ•アメリカンより

   ハプログループには父親から受け継ぐY染色体ハプログループ母親から受け継ぐミトコンドリアDNAハプログループの2種類がありますが、今回は母親から受け継ぐミトコンドリアDNAハプログループに注目します。
(※これ以降mtDNAハプログループと表記)
ネイティブアメリカンのmtDNAハプログループABCDはたしかに東アジアに多いグループのためやはりネイティブアメリカンの起源はベーリング海峡を渡ったモンゴロイドと密接な繋がりがあるのは間違いなさそうです。

     という風に一般的な認識では、ここまでの情報で結論が出されてしまい、大半の人々がそうなんだと納得してしまうのが常識の世界です。
でも、わざわざこの記事を読みに来ていただけるほど探求心のある皆さんにはどうしても気になる点がありましたよね?


"mtDNAハプログループ X"

   ABCDからいきなりXに飛んじゃっている時点でとても違和感なのですが、ネイティブアメリカンのハプログループXのはっきりとした起源は未だに不明という扱いになっています。
ではどうして不明なのでしょうか?
北米大陸に痕跡を残すmtDNAハプログループXは一体どこからやって来たのでしょうか?

   その謎を確かめるべく、箱の外の情報にアクセスしてみましょう。


古代アメリカ先住民の遺伝子

   お馴染みの人類学者ロバート•セパー氏の以下の動画では常識を覆してしまうためか、メインストリームメディアでは全く取り上げられない古代アメリカ人の遺伝子解析結果が紹介されています。


ウィンドオーバー考古学遺跡

   まずはフロリダ州にあるウィンドオーバー考古学遺跡です。

   遺跡の位置は大西洋に面したフロリダ州の東海岸近くの湿地帯です。

ウィンドオーバー遺跡の案内板

1982年に偶然発見されました。
ウィンドオーバー遺跡は今から7000年から8000年前にこの地に住んでいたアメリカ先住民の埋葬地です。
埋葬地は泥炭に覆われた浅い沼地の水中に位置していました。
この泥炭が通常では風化するはずの人工遺物や遺体の組織の保存の助けとなりました。
遺跡は新世界(アメリカ大陸)における最大規模の人骨のサンプル、そしてメキシコ北部で見つかった最も古い瓢箪(ひょうたん)を含み、この二つは遺跡の重要性をより強調しています。
また遺跡は新世界における最大で最も早期の人体組織サンプル、更新世( 最終氷河期)から現在に至るまでの花粉の記録、さらにはいくつかの最も古い遺伝子の脳組織、骨組織の復元を含んでいます。
とてもいい状態で保存されていたため、胃の中に残っていた物質に基づいた科学分析は考古学者達にアメリカ大陸早期の食習慣を再構築する機会を与えました。
遺跡はアメリカ大陸の古代遺跡において採掘された最大かつ最も複合的な人体組織を提供しました。
また木材や繊維を含む、有機の工芸品が発掘されています。
ウィンドオーバー遺跡はフロリダ大学の考古学者達を中心に発掘されました。

ウィンドオーバー遺跡の案内板


ウィンドオーバーの人骨とその特徴

   Wikipediaによると、新たな住宅地開発の際に偶然発掘された遺跡からは深さ2m地点の沼地に埋葬されていた合計168体の人骨が発掘されたとあります。

当時の発掘作業の様子

  遺体は以下のように沼地に埋葬されていました。

   では今から7000年から8000年前に現在のフロリダ州に住んでいた北アメリカ先住民の人骨を見てみましょう。

   大きな手に、高い鼻、そして突出した下顎が特徴的ですね。
頭部の大きさから見て脳のサイズも大きかったのではないでしょうか。

   発掘された男性達の人骨の平均身長は175cmと報告されています。8000年前に平均で175cmなのでとても大柄であったことが分かります。

   人骨を初めて解析した考古学者は解析結果が出るまでは、てっきり現代のコーカソイド(白人種)の人骨だと思っていたそうです。

   そして、この人骨の特徴を見て以下の記事を既に読んだ方はすぐにピンときたのではないでしょうか?

   もちろん教科書で学んだ既存の常識では、白人種が新大陸へ進出したのはコロンブスがアメリカ大陸を発見した1492年以降であり、現代ヨーロッパ人の祖先であるクロマニョン人が8000年前に大西洋の反対側の北米大陸に渡っていたなんてあり得ない話だ!!となります。

人骨の遺伝子解析結果

   では、本当にあり得ないかどうかを判断するためにWikipediaに記載してあるウィンドオーバー遺跡の人骨の遺伝子解析結果を見てみましょう。

脳組織の保存状態から遺体は泥炭の中に亡くなってから24~48時間以内に埋葬されたことが分かった。
この保存状態により研究者達は脳から遺伝子配列を割り出す事ができた。
遺伝子はアジア人起源であり、比較的珍しいハプログループXであった。
また遺伝子は一つの家族が同じ埋葬地を100年以上に渡り使用した事が分かった。

Wikipedia Windover Archeological site より

   骨格の特徴から予想されたヨーロッパ起源ではなく、なんとアジア起源であると結論付けられています。
   
   そして、mtDNAハプログループXだという結果でした。

   真相を確かめるためにmtDNAハプログループXについてもう少し詳しく見てみましょう。

mtDNAハプログループX


ハプログループX

   ヨーロッパ人、中東人、アメリカ先住民で観察されとあります。しかし、アジア人との関連性は記されておらず、先ほどのアジア人起源説にいきなり矛盾が生じてしまいました。

   では、mtDNAハプログループXの分布図を見てみましょう。

mtDNAハプログループXの分布図

   ご覧の通り、ヨーロッパ、中東、北アメリカには高い割合が確認されますが、一部西アジアを覗きアジア地域にはやはり関連していない事が分かります。

   ウィンドオーバーの人骨がアジア人起源であるという説にはやはり矛盾があり正確ではないようです。

   ではmtDNAハプログループXの割合が最も高いオレンジになっている地域に注目してみましょう。

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