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ソロムーブについて

 今日も今日とて柔術が楽しい。
 試合直前の過ごし方について試行錯誤してます。ダラダラと低強度で動き続けると調子がいいです。手足をぶらぶらさせたり、その場で縄跳びくらいの高さでトントンはねてたり、屈伸したり肩を回したり歩いたり。その方が試合の動きがよかったし緊張もほぐれます。今後も試行錯誤ですね。

 今日はソロムーブ。練習の最初にソロムーブをやっているジムは多いでしょう。自分はわりとソロムーブをやる方です。大事ですがやればやるほど強くなるもんでもないと思います。打ち込みや筋トレと同様に「なぜやるのか」を考えてやるようにしています。


最初に 自分のソロムーブについて

 自分は今も昔もけっこうソロムーブをやります。反復練習がそこまで苦ではないタイプです。休日にジムに行って1000回エビとかやったりしてました。効果があったかどうかは分かりません。。。
 今は練習終わりに10分弱。40種目くらい。4~6回ずつ。前は各10回とか20回とかやっていましたが20分以上かかる、集中力落ちる、動きの精度落ちる、でマイナス面も多かったです。今は4回でも集中して丁寧にやる形に落ち着きました。
 一応種目もまとめます。ちょっとずつ追加していったらこんなに増えてしまいました。(読まなくてもOKです)
1 足回し内
2 足回し外
3 自転車こぎ
4 自転車こぎ逆
5 足交差
6 足旋回
7 S字立ち
8 ベース立ち
9 エビ
10 柔道エビ(下の足で床蹴るやつ)
11 逆エビ
12 エビ→エルボープッシュ
13 エビ→腹ばいタックル
14 ブリッジ
15 肩ブリッジ
16 腰上げるやつ(三角の入りみたいな)
17 フックスイープ
18 アームドラッグ
19 オノセスイープの足の振り
20 オモプラッタの足の振り
21 トップスピンで逆サイドにまわるスイッチ
22 ニーオンから逆サイドのニーオンにスイッチ
23 腰切
24 上抜きの腰切
25 腰切からステップ
26 トレアナステップ
27 クロスグリップステップ
28 レッグドラッグ
29 両手床ついてサイドステップ
30 エックスパスステップ
31 側転
32 首抜き前転後転
33 柔術立ち(テクニカルスタンドアップ)
34 バーピー
35 タックル
36 壁ガードリテンション(ニアサイドの足)
37 壁ガードリテンション(ファーサイドの足)
38 壁ガードリテンション(インバーテッド)
39 壁横回り①
40 壁横回り②

 あえて絞るとしたら、
 3つなら、壁ガードリテンションと柔術立ちとバーピー。
 5つなら壁ガードリテンションと柔術立ちとバーピーとエビと肩ブリッジ

1.ソロムーブの重要性(目的・メリット・効果)

ソロムーブの重要性(目的・メリット・効果)

①コンディショニング・コンディションチェック
②ウォームアップや有酸素運動
③動きのトレーニング
④イメトレ・工夫・考えるトレーニング

 思いつくものを挙げてみました。一個ずつ見ていきます

①コンディショニング・コンディションチェック
 自分のコンディションを確かめる手段として優秀です。ソロムーブで体のキレや疲労度を確認できます。コンディショニングの第一歩は自分のコンディションを把握することです。ソロムーブはそのコンディションチェックとして優秀です。毎日やっていれば「今日はなんか動きが悪いな」という風に疲労度や動きのキレを確認できます。
 そして、動きのトレーニングやアップとしてコンディショニングの効果もあります。ソロムーブをやることでスパー等のパフォーマンスが上がります。

②ウォームアップや有酸素運動
 エクササイズの一種としてのとらえ方。メインの目的ではないのですが、限られた資源である時間を有効活用するためにアリです。
 例えば時間と体力が山ほどあれば、「アップ15分、ソロムーブ15分、有酸素運動30分、打ち込み1時間、スパーリング1時間、筋トレ1時間」の様にそれぞれの目的に合ったトレーニングをできますが、実際は難しいです。
 仕事終わりに1時間だけジムに行ける人ならば「ソロムーブ10分(兼アップ、有酸素)50分スパーリング」みたいにすれば有効に時間を使えます。
 また、運動不足の人にとっては筋トレの効果もあるかもしれません。

③動きのトレーニング
 いわゆるファンクショナルトレーニング(機能性)、そして柔術の動きのトレーニングです。
 ファンクショナルトレーニングについてここでは深く掘り下げませんが、一言でいうと「筋力ではなく動作を鍛えるトレーニングです」(詳しくはググってみてください)。
 武井壮氏が「自分がイメージした通りに体が動かせることが運動能力の高さ」と言っていました。武井壮氏の「目をつぶって両手を水平に上げた時、そこに自身との間隔のズレがあるかどうか」というエピソードがありまして、面白いので検索してみてください。柔術ではこの「「自分がイメージした通りに体が動かせているか」が重要なファクターになります。
 また、柔術のガードの動きは足裏を床につけないためかなり特異的です。慣れていないとスムーズに動かすことはできません。この特異的な動きを身に付けるためにソロムーブは有効です。
 ソロムーブによって、自分のイメージ通りに動かせる機能性を作り、柔術の特異的なムーブを体にしみこませることができます。体操やレスリングのマット運動などに似てるかもしれません。

④イメトレ・工夫・考えるトレーニング
 
柔術を強くなるために一番大事なことは「考えること」です。強い人で考えていない人はいません。動きの意味を考えたり、相手をイメージしながらやったり、「こんな動きがスパーに活きるのでは」と工夫したりしましょう。そういうイメトレ、工夫すること、考えることのトレーニングとしてソロムーブをやると成長につながります。
 
誤解を恐れずいうと練習で得られる成果(RPGゲームの経験値のイメージ)は、ソロムーブより打ち込みやスパーした方がいいのです。でも効率のいい練習をたくさんやれば強くなるとは限りません。
 ソロムーブを通して考える能力や工夫する能力が鍛えられます。最新のトレーニング施設でやっている人より古いジムで工夫しながらいろんな方法で強くなる方法を模索している人が強くなるイメージです。
 ソロムーブはできることが制限されます。実戦とは別物です。しかし、「ソロムーブと実戦の差異を埋める努力」「制限の中で実戦に近い動きを再現しようとする工夫」「ソロムーブの中で動きについて考えること」が、強さにつながっていくのだと思います。

ソロムーブの弊害・デメリット

①時間と体力を使ってしまうこと
②スパーでソロムーブの動きを再現しようとしてしまう

 ①限られた資源である時間と体力を使ってしまうこと
 これは他の練習もそうなのでデメリットというかは微妙ですが、ソロムーブを長時間やることでスパーの本数が減ってしまったとしたらそれはデメリット、マイナスです。また、集中せずにダラダラとソロムーブをすればせっかくの練習時間を浪費することになります。
 大きなデメリットはないですが、やればやっただけいいというものでもありません。その時間をスパーや他のトレーニングにあてた方がいいこともあります。「やったほうがいい」の落とし穴。資源(時間と体力)が無限にあるならそりゃやったほうがいいけど。資源を使ってやる価値があるかです。
 練習とは「できないことをできるようにする」ものです。できない動き(例えばベリンボロのムーブ)を身に付けるために横回りをたくさんやるのはいい練習ですが、すでにできている動きを何十回と繰り返すのはあまりいい練習ではないです。できる動きはメンテナンス的に、数回でいいので正確な動きを集中してやるのを推奨します。

 ②スパーでソロムーブの動きを再現しようとしてしまう
 打ち込みでも似たような現象がありますが、ソロムーブの動きと実際の動きは似て非なるものです。次の2.エビ問題とソロムーブで詳しく書きます。 

2.エビ問題とソロムーブ

 ソロムーブのデメリットとして、「スパーでソロムーブの動きを再現しようとしてしまう」をあげました。剣道の素振りや空手の正拳突きを実戦でそのままやってしまうようなイメージです。剣道や空手の試合で素振りのフォームで面を打ったり正拳突きのフォームで殴ることはありませんが、柔術ではそのようなことが起きるのです。

 例えば、エビ。ガードリテンションではエビはしてはいけません!(極論!)。パスでは「足を越える」「肘と膝のコネクションを離す」「相手の胴体に自分が入る」といったことを目指しますがエビをすると足を越えられて、肘と膝が離れて、胴体が空きます。アカンのです。ガードリテンションでエビをしてはならんのです。しかしけっこうな割合でエビしてパスされる初心者がいます。空手で正拳突きしたら顔面のガードなくてカウンター打たれたり、剣道で振りかぶって面を打ったら胴を打たれるようなもんです。

※補足すると、正拳突きや素振りは無駄ではなく正拳突きをすることで「下半身の力を上半身に伝える連動性」「拳を作ること」「脱力と出力」などを身に付けることができるので大事です。剣道の素振りも竹刀を扱う筋肉を鍛えたり、手の内の操作を身に付けたりするので同様に大事です。

 ほかにも、「クロスニーの足抜き(足のスイッチ)と腰切」、「ロングステップと上抜きの腰切」などは似て非なるものです。ソロムーブの動きと実際のテクニックはズレがあるのです。そのアジャストができないとスパーでは使えません。

 また空手の正拳突きのように一人で完結する技ではなく、柔術には相手の身体を利用する技があります。三角絞めのセットアップやアームドラッグをソロムーブすることがありますが、それらの技は相手にぶら下がって(引きつけて)自分の体重を支えたり、持ち上げたりするのでソロムーブと実戦では誤差があります。パスのソロムーブも同様です。パスは相手に重心をのせてやるものが多いため、ソロムーブでやっても感覚が全く違います。

 柔術ナビの上記の記事(有料ですがとても面白くて他の記事も見放題なのでぜひ)に加古拓渡先生のムーブに関する考察が書かれていて興味深いです。有料記事なので詳しくは書けませんが、「ガードリテンションでエビはしない方がいいのに初心者がエビをしてしまうのはなぜか」ということやムーブとテクニックについての考察が書かれていて面白いです。ぜひ。

3.ソロムーブのポイント・注意点

①集中する
②正確に丁寧に動かす(自分の感覚とのズレをなくす)
③考える
④スパーでの動きとは別物という意識を持つ

 ①は当然として。
 ②は自分のイメージした動きと1mmのズレもなく丁寧に正確にやるつもりでやるといい動きのトレーニングになります。
 ③が一番大事。「腰切の動きはスパーのクロスニーにつながるかも」「腰を上げる動きは三角の入りに使えるけど、実際は相手の腰や腕を踏み台にしてるよな」とか「エビは実際のガードリテンションでは使わない方がいいけど、この動きは三角をタイトにするときの腰をズラす動きに使えるな」とか。とにかく考えましょう。
 ④は初心者が陥りがち。これについては「2.エビ問題とソロムーブ」で書いた通りです。

ソロムーブが必要な人

①柔術の動きに慣れていない人、ムーブの精度が低い人
②スパーをする体力がない人
③コンディションを良くしたい人、毎日に自分の調子を確認したい人
④停滞していて、工夫が必要だと思う人

①柔術の動きに慣れていない人、ムーブの精度が低い人
→自分のイメージ通りに体を動かせるようになりましょう
②スパーをする体力がない人
→こういった人はまずはソロムーブから。
③コンディションを良くしたい人、毎日に自分の調子を確認したい人
→ソロムーブでスパーのパフォーマンスを上げます。
④停滞していて、工夫が必要だと思う人
→ソロムーブを通して柔術に必要な「考える能力」を鍛えます。先の「1.ソロムーブの重要性④イメトレ・工夫・考えるトレーニング」で書いた通りです。

 ちょっとややこしいんですが、「初心者だからソロムーブが必要」「ソロムーブは基礎でスパーは上級者応用」というのは違います。先に言った通り、ソロムーブと実戦はズレがあります。また、動きの意味を全く分からないうちにひたすらソロムーブばかりやってもその動きが上達につながるとは限りません。

ソロムーブが不要な人

①柔術の動きに慣れている人、すでに正確な動きを身に付けている人
②時間がない人
③ソロムーブ以外のコンディションチェックがある人
④スパーの中で「考えること」をしている人
⑤スパーでソロムーブの動きを再現しようとする悪い癖がついている人

 散々ソロムーブ大事、みたいなこと書きましたが。。。ぶっちゃけやらなくても強くなるし、「いまさらソロムーブたくさんやっても強くはならん」的な人もいます。自分に必要かどうか考えましょう。

まとめ

 自分の中でソロムーブはあくまで補助。練習のメインはスパーリングという認識です。練習の成果の9割はスパーリング。しかし試合ではその1割の差が勝敗を分けるのでソロムーブで動きの精度を上げるのは大事です。また、ソロムーブによりスパーリングの質が上がるという効果もあります。
 イメージとしては料理の下味、出汁をとるようなものです。メインの食材でもないし、大きく味の変化を起こすわけでもないですが大事。
 柔術のエビは出汁に使え!!!

最強のエビは存在するのか

 日本人は(←?)反復練習信仰のようなものがある気がします。野球の素振りや1000本ノックみたいなのが大好きです。日本人男児は皆、感謝の正拳突きを1日1万回やれば蟻の王にも勝てると信じています。自分も反復練習信仰的なものはあります。実際、反復練習で動きをオートマチック化して頭でなく体で技を覚えるのは大事です。

拾い画です。ごめんなさい。


 では、柔術においてエビだけを毎日1万回やったら強くなるでしょうか?どんな抑え込みやパスからもエスケープできる必殺のエビが身につくのでしょうか?答えは「否」だと思います。おそらく、一定のレベルまではエビのレベルも上がりますがどこかで頭打ちになると思います。そして実戦ではエビして逃げても別の方向からパスされたり、バックにまわられたりしてしまうのではないでしょうか。同様にパスステップや三角締めのソロムーブを1日1万回やっても、だれでもパスできる必殺のパスや誰でも極められる必殺の三角は身につかないと思います。
 ただ、1日1万回ソロムーブやるくらい熱意ある人ならきっとスパーや打ち込みもちゃんとやるので実際は普通に強くなると思います。ただ1万回ソロムーブする熱意は別のところに使った方がたぶん強くなります。まあ妄想の世界ですね。

 ※補足。正拳突きや野球の素振りはシャドーボクシング的な感じで相手やボールをイメージしてやることでただの反復練習ではなくなり、成長につながると思います。何も考えずやっていても多分うまくなりません。

考えるソロムーブで強くなる

 思考を停止してひたすら反復するのは怠惰だと思うのです。反復の中で考えて頭を使ってこそ成長します。

 ソロムーブの目的やメリットを考慮して自分にどれだけ必要か考えましょう。そしてどうせやるならソロムーブを単なるエクササイズにしないで、頭を使って工夫して考えて、柔術の成長につながる稽古にしていきましょう。

 今の自分(の能力や時間や体力)を考えてソロムーブがそこまで重要でないと判断したらやらないのもアリです。資源(時間と体力)は有限。大事に使いましょう。

 前回の打ち込みの結論と同じで、毎回練習の話は結論が同じになりますが、自分の頭で考えて工夫して練習することが大事です。

2023/9/19 アンディ








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