見出し画像

柔術教則レビュー「ルースパスシステム」 岩本健汰

 今日も今日とて柔術が楽しい。指のダメージを回復するために自作のサポーターを作りました。意外といい感じです。指のダメージはなるべく減らしたいところ。痛みもそうですが毎日の練習に影響がでるのが嫌ですね。

 今日は教則レビュー。ルースパスシステム(岩本健汰)。


 前回書いたレビューはこちら、こちらの教則も勉強になるのでお勧めです。

岩本健汰選手の紹介

 以下、BJJLABさんのサイトから引用。岩本選手のすごさは説明不要ですね。

 ■岩本健汰(IGLOO所属)
早稲田大学の入学と同時に柔術を始める。2018年全日本ノーギ選手権においてノーギデビュー戦に関わらず優勝候補を破り優勝。翌年には階級・無差別で優勝。国内敵なしとなる。その後日本では稀少なノーギ専門のグラップラーへ転向し、世界トップ選手として活躍。
世界一のグラップラーを決めるADCCのアジアオセアニア代表(2019年、2022年)。

BODY LOCK PASS SYSTEM ボディロックパスシステム 岩本健汰 | BJJ LAB (bjjlaboratory.com)

内容紹介 (フローチャート)

 フローチャートで教則を解説します。

01.ルースパスのコンセプト 
02.ニーオンベリー 
03.リバースデラヒーバポジション 
04.キャンピングポジション 
05.ヒップスイッチ 
06.リーディングエッジ
07.VSリバースデラヒーバ
08.VSオープンガード
09.三日月ステップを使ったサイドスイッチ
10.レッグドラッグを使ったサイドスイッチ
11.外の足を使ったサイドスイッチ
12.VSレッスルアップ

ある特定の動きをルースパスというのではない
学ぶ機会が少ない削る部分。その削る部分を言語化されたのがこの教則

 ルースパスのコンセプト、角度をつけた各ポジションのコントロール、角度の付け方=回り方、切り方、相手のリアクションとその対応を細かく解説しています。
 ボディロックパスの教則と同様に、手順や形だけではなく技のコンセプトや動きの意味などを説明してくれるで理解が深まります。
 作中のニーオンとリバデラは一般的なものと少し角度や形が違いました。

ルースパスのコンセプト

 上記の図のように特定の動きをルースパスと呼ぶわけではありません。

「ルースパスとはloose (緩い)パスガードを意味して密着系のtightパスとは異なり相手に対して遠い距離から角度や様々な動きを用いて相手を疲れさせてパスガードへと繋ぎます」

LOOSE PASSING SYSTEM ルースパスシステム 岩本健汰 | BJJ LAB (bjjlaboratory.com)

 相手にリテンションさせて腹筋を使わせて疲れさせるのが、ルースパスのコンセプトです。相手がディフェンスで正面に戻せば戻すほど削れていきます。動画内で岩本選手はこのように言っています。

「正面ではなく角度をつける。正面ではなく角度をつけた位置(腰より上のライン)にいる時間を長くする。」

ルースパスのイメージ
削る、攻め続ける、こちらのターンが続く、相手のターンを来させない、後手に回らせる、ディフェンスさせ続ける、ガードを作らせない

ここが衝撃

今までのパスのイメージが変わりました

「パスは距離を詰めるもの」
→「ルース(ゆるく)に遠距離で動く」

「パス(それ以外のアタックも)は相手にディフェンスさせない」
→「あえてディフェンスさせる」

「自分が正しいアタックをしてパスする」
→「相手のミスを誘ってパスする」

メリット(なぜルースパスなのか)

 ・相手を削れる
→パスは難しい。一発で完パスはできないことが多い。ルースパスで削ることで相手の肘と膝のコネクションを解除してパスを狙う。正面から体重をかけて削るのもアリだが、うまい人は正面にいると足のフレームを使って、ガードを作られてアタックされる。

・相手にガードを作られない
→角度を付けたポジション(リバデラ、ニーオン、ノースサウスなど)にいると相手はガードを作れない。こちらが攻め続けられる、相手はディフェンスし続ける。後手に回らせる

・スタミナ消費が少ない
→ルースパスはうまく使うとスタミナ消費少ない。頭を下げた腰の引いた低い姿勢で動き続けるパスはスタミナ消費が多い。上体上げて膝で体重使って圧力かけるのでスタミナ消費も少ない。グリップしないので握力の消費も少ない

・体重を使える
→上体上げて膝で体重使って圧力かけるので筋力ではなく体重で圧をかけるので効率がいい。動画内のあるシーンで岩本選手が「この状況では僕のほうが強いです、というか、効率がいいです」と言っていたのが印象的。 

・ノーギで有効
→道着を使えないため、相手が上半身の襟や袖を取れないためつかまりづらい。ノーギでより高い威力がある

・ボディロックパスと相性がいい
→ボディロックパスを組むためには肘と膝のコネクションを離す必要がある。ルースパスを使うことでそれが可能となる

・デメリット
→相手を抑えていないのでレッスルアップされる(カウンターが教則内にある)。慣れないとすぐにつかまってしまう。慣れていないとステップでバランスを崩したときにスイープされる。

向いている人

・軽量級・重量級問わず使える
→足が軽量級より効きづらい傾向があり、重い体でリテンションするとスタミナを消費するため重量級には有効。
軽量級は足が効く。だからこそルースパスが効果的になる。簡単に正面からパスできない軽量級だからこそ、ルースパスで何度もリテンションさせて削ってパスする。また、軽いためトップで動くこちらのスタミナ消費が少ない。

・ステップが踏める人、軽やかに動ける人?
→なんとなくのイメージで向いていそう。でも練習すればステップ踏んで動けるようになる気がする。軽やかにステップ踏める人がルースパスを使うのではなく、ルースパスを使うから軽やかに動けるようになる、たぶん

・ボディロックパスが得意な人
→先ほど書いた通り

有効な相手

・足の効く人
・正面のフレームの強い人
・ガードに一度入ったら強い人
・スタミナに難のある人(最初は強いけど、疲れた時ならパスできる人)

相性のいいテクニック・合わせて覚えたい技

・ボディロックパス
→先ほど書いた通り

・ルースパスでできたスキに使えるパス
→ロングステップ、トレアナ、クロスグリップ、レッグピン、クロスニー、レッグドラッグ、レッグウィーブなど、なんでも

・タックルディフェンス、ガブリのコントロール
→レッスルアップのカウンター(作中にアリ)。
どうしてもルースパスは特性上レッスルアップされがち

・ガブリ系チョーク
→レッスルアップのカウンターに。動画では言及していないが自身が使っていて相性がいいと感じた。

・足関
→エントリーと組み合わせられるし、回してきた足をアンクル一閃で極めることもできる。極められなくても意識させるだけで効果的。動画では言及していないが自身が使っていて相性がいいと感じた

使ってみた感想

 いままで一回止められるとそれでパスを止めていたことが多かったです。特に遠距離系のパスでは止められると仕切りなおすか、相手のガード内に入ってしまうことがほとんどでした。ルースパスを使うことで相手のガード内に入らず、攻め続けることができるようになりました。イメージはこんな感じです↓

この図ではトップは左へ行くほど有利
この図ではボトムは右に行くほど有利
ルースパスに限らずいいトップのアタックは長い時間左側にいる時間が長い。逆にいいボトムのアタックは右側にいる時間が長い。

 スパーでは足の効くジムの仲間相手にパスまで持っていくことができました。足の効く相手ほどリテンションしてくれるのでルースパスしやすかったです。

 あと、やってみて最初の方に感じたのは「ルースパスやるの怖い」です。トップの時のクセで、プレッシャーかけて距離を詰めて、足や襟を持っていないと相手に逃げられそうで不安で怖いのです。でも動画内のテクニックを使ってみると足を持っていなくても体重をかけなくても相手を削ってコントロールできることが分かりました。

 襟や袖も持たれないノーギの方がやりやすいですが、ギありでも全然使えます。むしろ道着に頼った動きが多いギの攻防の中にルースパスの要素が入ると攻めの幅が広がります。

「これが解決した」↓

・すぐにガードにつかまる
・外の足を取られる
・足を絡まれる(ハーフ、リバデラの形)で止まってしまう
・ボディロックにエントリーできない
・足や襟を持っていないと不安になる

まとめ

 自分のパスの幅が広がり、レベルが一つ上がった気がします。トップで今までなかった選択肢が生まれました。パスは一撃必殺で決まるのは少なく、削ってからようやくパスできることが多いです(パス以外も同様?)。今回のルースパスの教則でその削る部分を強化できたと思います。
 いろんなパスを習ったけど、レベルが上の人をパスしきれない人、パスの幅を広げたい人、ぜひおすすめです。

2023/10/31 アンディ

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?