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ハーフガードパスのコンセプト  抑え込みシリーズ⑤

 今日も今日とて柔術は楽しい。育児は大変で楽しい。

 今日は抑え込みとハーフガードの話。

 ハーフガードのコンロ―ル、とハーフガードパスは基本的に抑え込みのコンセプトと同じなので書いてみます。だいぶ長くなったので最初のコンセプトだけでも読んでいただけたら参考になることがあるかもです


最初に。前提。

 今回の記事で説明するメインのハーフはいわゆる4の字ハーフです。ニーシールドハーフやハーフバラフライは足のフレームが残っているのでまずを解除する必要があります。ディープハーフやコヨーテハーフはハーフの名前がついていますが全然別物なので今回の記事のコンセプトは使えません。それ用のパスや解除をする必要があります。

 あと、文中の左手右手等の記載は、トップの右足にボトムが絡んでいると想定しています。

1.ハーフガードパスのコンセプト

 ハーフガードパスのコンセプトは、

「相手の肩をマットにつけさせる」
(相手の上体をフラットにする、相手の背中をマットにつけさせる、腰を制する、相手の体をツイストさせる)

です。要は抑え込みです。相手をしっかり抑え込めばハーフの足が抜けます。ハーフガードパスのコンセプトは抑え込みのコンセプトとほとんど同じです。

 クロスニーやロングステップ、バックステップ、ハーフマウントのパスをしても相手の足を挟む力が強くて足が抜けないという人はこのコンセプトができていない人が多いです。

 ハーフは半分パスしている状態で足のフレームがなく、足でスペースを作られることがないため、上体を抑え込むことが可能です。相手の上体をフラットにすると足を抜くことができます。相手のファーサイドの肩(左肩)をマットにつけさせると、相手の体がツイストされるので足に力が入らず足が抜けます。

 人体は「鼻、みぞおち、へそ、膝が同じ方向を向いている」「肩、骨盤、膝のがライン上にある」だと力が入ります。ハーフパスでは抑え込みで相手をツイストさせて、これをさせないようにします。

2.肩をマットにつけさせるためには

 相手の肩(左肩)をマットにつけさせるためのテクニック。

2-1 脇差し

 脇を差せば相手の肩をコントロールできます。逆に差されると相手が半身になって(肩が浮いて)しまい、相手が強くなります。
 右手でなくとも、右肘、反対の左肘、頭でも脇を差せます。腰切パスやハーフからの肩固めパスは手の代わりに頭と肘を使って脇を差しています。

2-2 マクラ(首)

 ただ、首の下に手を敷いてもあまり意味がないです。自分の肩、もしくは前腕で相手のあご~頬にプレッシャーをかけて相手の顔(鼻)を反対側に向かせましょう。このプレッシャーをかけるマクラをクロスフェイスといいます。
 左手の代わりの頭でマクラ(クロスフェイス)することも可能です。いわゆるトライポッドパス。トライポッドパスもただ相手の顔の横のマットに頭を付けるだけではなく、相手の顔を反対に向かせるプレッシャーをかけるのが大事です。

2-3 脇差しとマクラの組み合わせ

 脇差しとマクラを組み合わせてるのも強いです。クラッチを相手の顔の横で組むより、相手の肩甲骨の下で組むとより強力になります

2-4 胸

 胸と胸を合わせるとめちゃくちゃ強いです。実際は相手の手が邪魔してくるので胸と胸を合わせるまでが大変です。脇差しやマクラで相手の手を処理して胸と胸を合わせます。

2-5 リバースハーフ

 相手に脇を差された時に使うことが多いです。脇を差されると手を使って相手の左肩をマットにつけるのは難しいので、逆サイドに飛んで自分の体重をあびせて相手の左肩をマットにつかせます。
 リバースハーフのポイントはたくさんありますが、相手の膝をこちらに向けさせることです。普通のハーフとは逆。あと脇を差し返せたら再び逆サイド(元のサイド)に戻ってクロスニーしても強いです。

2-6 キムラロック

 キムラロックは背中側からの脇差しだと思っています。ハーフのトップからのキムラロックは強いです。相手の手と肩の両方をコントロールできます。雑に足を引っこ抜いてもキムラロックが残っていればクルシフィクス(Tキムラ)のポジションについてバックやサイドを取ったりそのままサブミッションを狙えます。
 相手が普通の脇差しの攻防で脇を閉めて小さくなっていると手首を取れるのでそこからキムラロックを狙うと取りやすいです。雑に行くと逆に脇を差されます。

2-7 ニアサイドの袖を引く

 相手の右手をとるのはいい組手です。相手の右手を引いておけば相手は起き上がれないし、上体をフラットにできます。袖でなくともリストをとったり左脇で相手の右手を抱えても強いです。

2-8 NG

 ・袈裟固め
→右手で相手の首を抱くのはNG。脇を差されてバックに回られます。

 ・ニーシールドハーフやハーフバタフライに対して浅いマクラ
→足のフレームを突破せずに首を取ると腕固めを食らいます。

 ・シングルレッグハーフ(膝が抜けたハーフ)で乗りすぎる
→相手の上の足の膝で自分の尻を蹴られて前に崩されます。シングルレッグハーフは後ろ重心が基本です。脇が差せたら前にのって足を抜いてもいいです。

3.骨盤(腰)を制するには

 抑え込みのポイントとして骨盤(腰)を制する、というものがあります。これをハーフパスにも応用できます。ただ、基本的には脇マクラをとって両肩をマットにつけさせた方が強いので脇マクラが取れない場面で使うことが多いです。

 ニーシールドハーフやバタフライハーフでは脇を差せないし、マクラを取れない(マクラをとっても腕固め食らう)ことが多いので腰を制するアタックを仕掛けることが多いです。また、脇とマクラのディフェンスが固いハーフガーダーにも使えます。

3-1 ボディロック(腰を抱くバージョン)

 ハーフでも使えますし、バタフライガードでボディロックを組んでハーフに移行してもいいです。ボディロックで腰を制して時間をかけて上に上がって脇マクラを取りに行くのが定跡です。

3-2 ボディロック(腿を抱えるバージョン)

 相手の足を束ねてバーピーすると足のクラッチが切れます。また、相手の腿の下から相手の足首か裾を取る組手も強力です。

 どちらのボディロックも頭の位置が大事です。腰を制する抑え込みは相手の手が自由なので頭(顔)を押されます。

3-3 レッグウィーブパス

 ニーシールドに対してよく使います。肩で相手の腿に体重をかけるのと、襟を取るのが大事です。

3-4 スマッシュパス

 クロスニーのリアクションに対するプランB的なパスです。自分の腹(骨盤~へそ)で相手右外腿に体重をかけて潰します。スネを使ったワイパーで足を丁寧に処理してパスします。

4.サブミッションやパウンドのプレッシャーを利用する

 これも抑え込みと同じですね。抑え込みだけやるよりもサブミッションのプレッシャーをかけて削ります。MMAならハーフのトップからのパウンドの技術は大事です。何ならサイドからよりもハーフのトップの方が逃げられづらくパウンドしやすいです。

 ちなみに足のフレームが入っているとサブミッションはできないのでニーシールドやハーフバタフライではサブミッションは狙うのが難しいです。

4-1 サブミッションのプレッシャー①首へのアタック

 フロント、ダース、十字絞めなどを狙います。極まることは少ないですが、相手のリソース(手)をサブミッションのディフェンスに使わせることでパスのディフェンスがおろそかになります。そうするとパスが取れます。

4-2 サブミッションのプレッシャー②肩固め

 ハーフからの肩固めは頭で脇を差している形なので、極めのプレッシャー+脇差しでパスしやすくなります。ハーフのままでは極まりづらいですが、パスした後そのまま肩固めも狙えます。

4-3 サブミッションのプレッシャー③脇差しのカウンター

 脇差ししてきた相手に対してフロントやコムロック&つっこみ絞めなどのカウンターやガブリを取ったりします。差されてから考えて動くよりも差されそうだなと感じたら先手をとって動きます。このプレッシャーがあると相手は容易に脇差しができなくなります。

5.マウントテイクやバックテイクと組み合わせる


 これも抑え込みと似ています。そのポジションに固執しすぎないで逃げられそうになったら相手より先に次のポジションを取ります。

5-1 ハーフマウント

 ハーフマウントは通常にニーカット(クロスニー)の反対側の膝を割ってもう一本の足も越えている形です。相手がクロスニーのディフェンスで膝を立ててきたときなどに狙うことが多いです。

 相手からできるアタックはほとんどないのでかなりいいポジションです。相手はこっちの右ひざを押し込んで通常のハーフに戻しに来るので、右ひざに体重掛けてマットに刺しておきましょう。上体が高いと安定しないので低く抑え込みます。やることは通常のハーフパスと一緒です。脇マクラを使って上体をフラットにすると足が抜けます。

5-2 ハーフマウントからバックテイク

 相手が右(相手から見て左)を向いてハーフマウントから足を抜かせないようにしていて脇マクラも取れない時、自分の左ひざを相手の肩口あたりのマットにおいてバックテイクを狙えます

5-3 トップからベリンボロ

 ハーフのトップからのベリンボロは、慣れない相手からは簡単に取れて気持ちいいですが、知っている相手だとカウンターの餌食になります。自分の腰を相手の目の前に晒すのでリスクが高いです。

 相手の腰が生きているとカウンターを食らうので、ハーフマウントから仕掛けのがベストです。リバースハーフやワンレッグエックスのパスなどでバックステップしたときのアタックのバリエーションとしても持っておくと便利です。

6.ハーフガードパスの手順と抑え込み

ハーフガードパスの手順

①「太ももを挟まれている」
②「上体を制する(抑え込む)」
③「膝を抜く」
④「足を抜く」

②と③は順番が前後することもある

 ハーフパスが上手い人は②の抑え込みが強烈です。しっかり抑え込んだハーフパスはカウンターも食らいづらく、相手のスタミナを削れるのでかなり効率がいいです。

 あと白帯は③の膝を抜く工程せずにパスしようとする人も多いです。②も③もせずにいきなり最終的なパスの形の④を狙おうとして全然足が抜けないというのはあるあるです。

7.注意!遠間からのクロスニーは別物

 オープンガードやヘッドクウォーターポジションなど足を挟まれてない状態から仕掛けるクロスニーはハーフガードに入った状態からのクロスニーとは別物です。

 ハーフガードからのクロスニーは「上体を制して”挟まれた足を抜く”パス」

遠間からのクロスニーは「”足を挟まれずに”相手の足を内から切って足を越えるパス」です。

 具体的に何が違うかというと組手が違います。遠間からのクロスニーは脇マクラを取りません。というか取れないです。右手で相手の左襟を取るか左骨盤を抑える組手からクロスニーします。

 でも実はこれも抑え込みのコンセプトと似ています。遠間からのクロスニーは相手の両骨盤をマットにつけさせるのがポイントです。相手の左骨盤がマットについてないと左足がついてきて自分の右足にハーフで絡まれます。

8.まとめ

ハーフは抑え込み

 ハーフは足を越えています。足のフレームを突破して半分パスしており下半身の攻防では勝っている有利な状況です。なのであとは上半身の攻防で抑え込めばパスできます。

 ついつい焦って足抜くことばかりをしようとしますが、ハーフのパス(足抜き)で大事なのは足以上に上半身の攻防(抑え込み)です。

 抑え込めたらあとは焦らず膝を抜きましょう。膝が抜けて上体を抑え込んでいれば、相手は体がツイストして苦しくて足に力が入りません。相手が苦しくて勝手に足が抜けていくイメージが大事です。自分から頑張って抜かなくても抑え込んでいれば抜けます。

ハーフガードのコンセプトとポイントまとめ

・抑え込む(上体をフラットにさせる、両肩か両骨盤をマットにつけさせる)
・マクラ、脇差し等を使っ肩を制する
・ボディロックやレッグウィーブなどで腰(骨盤)を制する
・サブミッションのプレッシャーを利用する
・マウントテイクやバックテイクと組み合わせる

ほとんど抑え込みと同じです。

 5000字越えの長文ですが、読んでいただきありがとうございました。

2024/3/16 アンディ







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