見出し画像

技術カンファレンスの使いかた

はじめに

こんにちは!
angooでプログラマとして働いている皿海です。

皆さん、技術カンファレンスに対してどのようなイメージを持っているでしょうか?
「他社の開発のノウハウを聞ける」
「同じ分野の開発者と交流できる」

など、技術カンファレンスには様々なメリットがあると思います。

angooはゲーム"開発"会社ですので、開発に関する知見の収集と共有は大切だと考えていますし、もっと活発にしようという動きもあります。

あるとき僕は、知見の収集と共有をさらに文化として根付かせるためにも、技術カンファレンスを活用しようと思いました。

今回は、その技術カンファレンスを最大限に活用するためにどう受けたかという話をしようと思います。

受講方針

漫然と受講しないために

以前にもangooはCEDECの受講補助を出していました。
そのときは受講に当たっての条件はなく、全て受講者に任せていました。
しかし受講者からは、
「なんとなく目についた講演を見ていたが、特にその後に生かせなかった」
「開発の時間が取られるのがもったいなく感じた」
のような意見が出ていました。

今回カンファレンスの受講をするとしても、全て放任とすると再び「特にその後に生かせない」ことが危惧されます。

絶滅が危惧されているラッコ

いろいろな分野を広く学べることはカンファレンス受講の大きなメリットですが、何となく目についた講演を見ただけでは、学べることは少ないでしょう。

例えば、2022年のCEDECで「AIによる自然言語処理を活用したゲームシナリオの誤字検出への取り組み」というセッションがありました。
このセッションを理解して仕事に活用するには、様々な事前知識が必要です。

・自然言語処理とは何か
・AIを実際に使うときに、どのような環境構築が必要なのか
・ゲームシナリオなどのデータを、自社ではどのように扱っているのか

では、その分野について既に詳しくないと受講してはいけないのか?
そんなことはありません。事前に詳しくなっていればいいのです。

要するに、予習をしてから受講していただくことにしました。

実際の受講の手順

単に予習をしてくださいと言っても難しいでしょうから、以下の手順を受講者に共有しました。

  1. 受講方針となるを設定する

  2. に沿って受講する講演を決める

  3. 過去の似た事例を予習する

  4. 受講する

  5. 社内共有する

ポイントは受講の軸を決めることです。
軸を決めることで予習すべきことも明確になり、講演を見る際に必要な事前知識が得やすくなります。
また、この軸はそのまま社内共有資料のタイトルにもなります。

実際の受講例

今回の受講者の一人にフォーカスを当てて、実際の受講がどのようだったかを紹介します。

受講方針となる軸を設定する

当時新卒2年目のプランナーである彼が選んだ軸は「チームでの創造性の向上」でした。

軸に沿って受講する講演を決める

チームビルディングやマネジメント、教育など、軸に沿ったものを事前にピックアップして、見る講演を決めます。

過去の似た事例を予習する

軸に沿った内容の過去の講演などを事前に見ておきます。
過去の講演の資料はCEDiLというサイトに数多くあり、大変参考になりました。

受講する

「軸に沿って受講する講演を決める」で選んだ講演を見ます。
予習時もですが、一つの公演を見るたびに内容をまとめておくことをお勧めしました。
まとめる際には、研究者の落合陽一先生の論文のまとめ方を参考にしていただきました。
https://www.slideshare.net/Ochyai/1-ftma15#48

社内共有する

定義から始まり、組織構造や社内施策、チームとしての価値観やミーティング手法など、様々な観点から「チームでの創造性」を議論している、とてもよいレポートでした。
angooの現在の課題も併せて議論されており、社内のイベントが開催される時によく引用されています。

「チームでの創造性の向上」総ページ数91の大作でした。

社内共有について

共有方法の失敗

受講者のレポートは素晴らしかったのですが、社内共有に当たってイベント主催者の僕が一つ失敗をしてしまいました。

社内共有は、レポートをドライブに上げて、社内チャットで告知をするという想定でした。
これは、各受講者にレポートの共有方法について、プレゼンかドキュメントかを選んでもらったのですが、全員がドキュメント形式を選んだためです。

ところが、資料を共有した後に「いい資料なので全体発表の場を設けたら?」との意見がありました。
それ自体は嬉しいことで、僕としても全体に知って欲しいと思い、軽い気持ちで受講者に発表を打診してみました。

しかし、受講者と打ち合わせする中で、問題があることに気付きました。
元々プレゼンを想定していない資料でしたので、これからプレゼンをするとなると、資料の作り直しになります。
また、そもそも全社員を拘束できる時間を考えると、一人5分程度となってしまい、内容はほとんど伝えられません。

最終的に、全体発表は無理があるということで、発表は無しになりました。
受講者を無駄に混乱させてしまいましたし、何より、初めにドキュメント形式を選んだ受講者に対して、後出しでの裏切り行為となってしまっていました。

反省点は「共有方法」についての事前の想定が足りなかったことです。
来年以降は、プレゼン形式を前提とし、予め発表の時間をとってから動き始めようと思いました。

受講者には予習を課しておきながら、僕の準備が足りなかったってワケ…

受講者の感想

ひと悶着あった社内共有が済んだあと、受講者に感想を聞いてみました。

良かったこと

  • 予習によって論文や講義を調べる習慣がついた、つけようと思った

  • いずれは自分もカンファレンスに登壇したいと思った

悪かったこと

  • 通常業務と並行して予習やレポート作成をするスケジューリングが難しかった

  • 軸に沿うような今年の講演は都合よく何個もないので、技術カンファレンスの意味を感じられなかった。予習だけでよかった

社内勉強会への発展

自分があらかじめ設定している軸に沿ったものしか受講していないからか、感想がどれも前向きなものであったのが印象的でした。

また、予習による価値を感じ取ってもらえたようで、イベントよりも予習の方が良かったという声もありました。
これは、イベントをきっかけに知見の収集と共有を活性化するという本来の狙い通りの感想であり、思わずにっこりしてしまいました。

この感想を聞く中で、「じゃあイベント関係なく、論文を読もうよ」という話が自然と出てきました。
そして今回の受講者を中心として「論文会」の定期開催が始まりました。
隔週で2人ずつ論文を読んできて、内容をまとめて発表するというものです。

すでに15回ほど開催されており、メンバーも徐々に増えつつあります。
今後も続けて、ハイレベルな知見の収集と共有が当たり前に行われるような会社にしていきたいです。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?