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香月康男のデーモニッシュなシベリア

香月康男のデーモニッシュなシベリア

3月12日、ウクライナの国内で繰り広げられているロシアの侵攻作戦の戦時下で、香月泰男(1911-74)がシベリア抑留体験を回想して描いた重苦しいタブローを見てきた(『生誕110年香月泰男展』練馬区立美術館〜3/27まで)。香月康男のタブローはここにネットから拾った写真や、画像で提示してみたが全くその作品の重みを伝えられない。写真では香月の重く、ほとんど漆黒のデーモッシュなタブローは、まるでデザイン

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『奇想のモード』とシュールレアリズム

『奇想のモード』とシュールレアリズム

今日(1月28日)鑑賞に行きました。大流行りの「奇想」を冠した三つめの展覧会ですが、本来なら「奇想」は、シュールレアリズムこそあい相応しく使われるべき言葉と言うべきでしょう。今回のこの東京都庭園美術館での展覧会のタイトルは「MODE SURREAL/A Crazy Love for Wearing」(奇想のモード/装うことへの狂気、またはシュルレアリスム)ですから、とんでもないものに出会える期待が

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タイガー立石『昭和素敵大敵』の中の古賀春江『海』

タイガー立石『昭和素敵大敵』の中の古賀春江『海』

(承前)古賀春江の有名な絵と言うのは、「海」と言うタブローで1929年つまり昭和3年に描かれた(写真1)。この作品は日本美術史の上では日本最初のシュールレアリズム作品だと言うのだが、どうだろうか?ボクには昭和初期の風俗を踏まえたモダニズム作品にしか見えない。研究者によってタブローの中にコラージュされた帆船、飛行船ツェッペリン号、ドイツの潜水艦などの元ネタが明らかにされている。いわばコラージュで構成

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大タイガー立石展/彩の国の美術展

大タイガー立石展/彩の国の美術展

立石大河亜「昭和素敵大敵」(1990年)と言うタイトルの大作。時間軸は向かって右側(ここでは三枚目の写真)が、昭和元年でまず描かれている芥川龍之介が亡くなったのが昭和3年(1927年)。柳田國男を経て、山本五十六と戦艦大和が図象として描かれ、古賀春江の有名なモダニズム絵画のパロディで日本髪を結った水着姿の美空ひばり、この辺りは時間軸は曖昧だが、鯛と松本清張の上に煙草ピースとともに霊柩車があり、コー

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