アニカ

パキスタン / 民藝 / 編み物

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最近の記事

鎌倉建長寺でパキスタンの仏像と再会する

先日の話。私は鎌倉にある建長寺を訪れた。パキスタンのラホール美術館に所蔵される釈迦苦行像(Fasting Buddha)の複製が、祀られているとの噂を聞いたのである。釈迦苦行像は、ガンダーラ仏の最高傑作とも評される。その複製は、唯一パキスタン政府によりオフィシャルに国外に寄贈され、日本にやってきた。ガンダーラ仏ファンの私にとって、あの釈迦苦行像が日本で見られるとは思いもよらず、これは心が高鳴った。 関東最大の法堂である木造建築に足を踏み入れ、天井を見上げると、力強く美しい雲

    • ニッターの冬支度

      本格的な冬の到来を前に、私は今、一通り編み終えたことへの達成感に浸っている。そして、ホッと息をついている。今年はベストから始まり、セーター、ニット帽、ミトン、マフラーを編んだ。その手芸日誌をここに綴りたい。 このベストはハプニングの重なりで生まれたもの。もともと袖をつけるつもりで編んでいたが、10玉あると思っていた毛糸が7玉ほどしかないことに気づき、急遽ベストに変更。さらに、1玉だけ色が少し違うことが分かり、これまた頭を抱えたが、ネック部分に使うことで不自然を免れた。そして

      • 生活を趣味とする

        それは新学期、新しい出会いに、自己紹介が盛んな時期のこと。趣味を持たないと悩む学生が多いことを、私は目の当たりにした。「答えられないから趣味について聞かれることが嫌」と言う人や、「カフェ巡りや、人と会うことが好き。あ、でもこれ趣味ではないよなあ」と言う人もいた。このことをきっかけに、私は、「趣味」について考え始めた。 趣味を聞かれると、何か答えなければいけない気がする。私は、いつもとりあえず「編み物」、と答えるものの、編み物を趣味と呼ぶことに、違和感を覚えた。趣味とは個人の

        • 不揃いの美

          編み物をしているとき、私はつい完璧に編もうとしてしまう。ガタガタな編み目が目に入ると、気になってしょうがない。これでは見栄えが悪い!と、編んでは解くを繰り返す。私は、完璧主義であった。 しかし、「不完全や不足こそ美しい」とする日本の美学と出会い、私の考え方は変わった。そもそも人は完璧ではない。そんな人の手で作られたものもまた、不完全である。そして、それが何ものにも変えがたいほど、美しいのだ。 きっと、生活の中のちょっとした喜びや葛藤も共に編みこんでいて、完成した作品は私自

        鎌倉建長寺でパキスタンの仏像と再会する

          手芸と葛藤

          夏に向けてストローハットを編み始めた。 どんな形にしようか。何号の針を使おうか。悩みながら編んでは解き、編んでは解く。全くアイデアが浮かばない。そんな日が続いた。 ある時、街を歩いていると、ふとお店に並ぶストローハットが目に入った。参考になるかもしれないと立ち寄ってみると、値札を見て私は驚愕した。「安い…安すぎる」と。 こっちは必死に編んでいるのに、精巧なものがこの値段で買えるのでは、私は一体何のために作っているのだろうか。手芸をする人にとって最も危険な溝に、私はハマって

          手芸と葛藤

          懐古主義な私がパキスタンに行くこと

           私には、懐古主義的な要素がたくさんある。懐古主義とは、過去を美化することを意味する。私は、この最先端なテクノロジーに囲まれた、不自由ない現代よりも、比較してアナログと呼ばれる時代を羨ましく思う。今こうしてMacBookに向かいながらも、この前触ったタイプライターが忘れられない。あのキーを打ち、改行するときの音、感触がたまらなく好きだ。ネット環境関係なしに、wordが使えるのだから、むしろタイプライターの方が便利で良いとさえ思う。  さらに、私はSNSもどうも得意ではない。

          懐古主義な私がパキスタンに行くこと

          パキスタンにイギリス文化?英領インドの遺産を追う【紅茶編】

           パキスタンはイスラーム文化が主流のように見えますが、実は、英領インド時代に受けた、イギリスの文化的影響はとても大きく、その影響は今でも見ることができます。多くは、実際に暮らすパキスタンの人々でさえ、イギリスからきているとは知らないほど、生活に溶け込んでいるのです。そのうちの1つが、チャイです。パキスタンに残るイギリス文化について、今回は紅茶に焦点を当てて、紹介したいと思います。また、ここで「インド」とは、パキスタンとバングラデシュを含めた、当時の英領インドを指します。 イ

          パキスタンにイギリス文化?英領インドの遺産を追う【紅茶編】