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閃きと、愛情とか

私達は、とっても仲の良い夫婦で御座います。
こうして婦人雑誌に、取り上げられるなんて
まぁ光栄の極みです。
私の名前は、野辺雅恵、夫は野辺昭夫と申します。
歳の差婚で、私が32歳で彼は58歳です。
実は、私たち夫婦は、ちょっと前までは、
離婚を考えた程なのです。
やはり有り勝ちな、理由でしょうね。
夜の営みが思うようにいかないのです。
夫は、射精障害を患い、勃起不全ですらいました
お恥ずかしい。
でも私(ワタクシ)その程度で、
熱が冷める女じゃあ御座いません。
夫への愛情は確かですし、
何なら私から昭夫さんへ、交際を申し込みましたわ。昭夫さんは、私の気持ちを察して、慈しみ深く愛してくれたのです、しかしたった夜の営み1つで、互いの愛に心苦しさを感じて離婚だなんて、
当時の私達はどうかしていたのです。
では、どうやって改善したのか?
そうなのです、そこなのです。
私達の秘訣というのは‥‥。
ある日、夫の親しくしている同級生が、自身の妻を連れて、私たち夫婦の、お家に訪ねてきたのです。
彼の名前は、笹部信。奥さんは笹部妙と云い
それはそれは仲睦まじい夫婦でした。
久々に、呑んでみないか?
それもお互いの妻を連れてさ。なんて信さんが言い出したそうで、最初は私達のお家で呑んでいたのですが、ふと突然、信さんが真剣な面持ちで口を開くのです。
「それで夫婦仲睦まじく、どうなんだ?夜の方は?」
なんて聞くので、私は昭夫さんと顔を見合わせて、驚きました。
「夜ってそれは‥うむ」
なんて藪から棒に失礼な方だわ。と思い、信さんの方を見ると彼は至って真剣な表情は崩さずです。ますます私、よくわからない焦りを覚えました。
「その表情から、君たち上手く行ってないね」
それはもう図星も図星。恥ずかしなって、一旦席を立ち、水でも飲もう、なんて私が立ち上がろうとすると、信さんは真剣な表情から満面の笑顔を浮かべ、こう言うのです。
「良かったら、僕たち夫婦の
    仲良く居続ける秘訣を知らないか?」
それを聞くや、昭夫さんは赤らめた顔を更に赤らめて
「なっ!君たちもしや今ここで、そんな野蛮な」
「何を言うんだ。そうじゃないよ。まぁ百閒は一見にしかずだ。よし出掛けよう、準備をしてくれ」
なんて信さんは、息巻いて酔いの回った私達は、あっという間に丸め込まれては、信さん夫婦に連れられて、とある雑多ビル街の一室、狭いBAR店内へと、慣れた様子で入っていくのです。
ちょっと風変わりな店主が、
信ちゃんもしかして御新規さん?
とニヤリと笑うのです。
薄暗い一室で、私達は一杯ずつ飲み交わし、
さて一体何がどうして秘訣なんだと、信さんに柔らかくも真剣に訊ねました。やはりあの時の私達は、とにもかくにも必死だったのです。
「まぁまぁもう時期に分かるさ」
なんて言うと、店内奥のステージ上らしい舞台が、ギラギラと輝き出したのです。一組の男女が、登場し、一体何をするかと思いきや、男が四つん這いとなり女が、その男を踏みつけ出すではないか!それだけではない、女は鞭を振るって男を痛ぶること余念なく、その度に男の悲鳴とも喜声とも、聞き及ばぬ声が室内全体を覆い尽くすのです。
一通りの演目が終わり
蝋燭に塗れた男と汗にまみれた女は、
二人してスッキリしたような面持ちで、
そこには清々しい遣り遂げた人間二人が並んでいたのである。
私達、夫婦は呆気に取られながらも、どこかで興奮を覚えていたのでしょうね。昭夫さんは私の手を強く握り、また私も彼の手を強く握り返していました。
「これが後に流行るであろう、SMショーさ。僕達、夫婦はこれらを実生活で取り入れているからこそ、こうして仲良くいられるんだよ。」
信さん夫婦は、誇らしげにお互いの肩を抱き寄せ、
屈託のない笑顔を見せるのでした。

衝撃の一夜から3日後。
私は、どうしてもあの夜の出来事が忘れられず。
また昭夫さんも同じようで、変に微妙な、
例えるなら新婚初夜のような日が続きました。
そして夫が重そうに口を開きました、
「あの夜見た、男女みたいに、できないかな」
重いながらに、ぎこちない口ぶり。
意を決したなんて、大袈裟でしょうが、
私達にとっては正に、
一大決心のような気持ちだったのです。
「わかりましたわ。私やってみせます。」
私は、まず四つん這いになった夫を踏みつけてみました。夫はくぐもった声を出し
「もっとキツく‥」
なんて言うので、私は渾身の力をもって、
夫の尻を蹴り上げたのです。
「あぁぁーーーー!!!」
なんて変な絶叫を上げて腰を落とし、ベッド上で悶える昭夫さん。しかし彼は、続けてこう言ったのです。
「さ、さっき、君の足が尻だけじゃなくて、僕の玉袋にも当たったんだ。そ、そっちも‥」
なんて苦しそうに強請るのです。
「あぁ、昭夫さん‥。」
私は夫同様に、自分が興奮している事を自覚しました。なんて愛らしい、この人に求められるなんて、今まで無かったのでは。全て大袈裟に捉えれてならなく、私は、彼の望むままに、彼の袋を叩き上げました。絶叫に次ぐ絶叫。
それでも
やめないでくれ、罵ってくれ
と彼は続ける。私ももう止まらない、
彼のベルトを持ち出して、彼の背中や腹肉目掛けて、正に鞭振るう如く、激しい殴打が繰り広げられるのだった‥。
「このインポ野郎!」
「ぎゃぁあーーーー!!!」
「この甲斐性なし!!」
「ぎゃぁあーーーー!!!」
「この雄豚野郎!!!吐き気がするわ!」
「ぎゃぁあぁ‥‥‥‥。」
ふと、夫の竿に目をやると、何とまぁ。
膨らみ盛り上がっているのです。
私は堪らず、涙さえ出ました。
ボコボコに腫れ血が下へ下へと流れ出ては、彼の竿にも伝う、そこからはもう止まりませんでした。どれだけ行為に至っても彼を責める事は、忘れず、噛んだり、叩いたり、ベルトで手足を縛ってやったり、そうして私達二人が決して忘れられない一夜を過ごしたのです。

「ねぇ昭夫さん?」
黙って妻の傍らで、腰掛ける彼はどこか照れ臭そうにしていた。夫婦として互いに痛みを知って改めて愛し和えたのであろう。

しかしこの過激な内容から、取材内容は没となってしまったのが、悔やまれる。


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