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公園で犬がパーン:写真の部屋

写真とは「他人が目撃した目を借りる」ことでもあります。撮った人だけが見た情景を、他人があとから見せてもらうことができる。追体験です。写真の価値の大部分はここにあって、だからこそ撮る人は見る人より多くの体験をしている必要があると言えます。エベレスト山頂やオーロラや砂漠など、誰もが簡単に見ることができない風景は人を驚かせます。こんな絶景があるのか、と。

そこで、自分が何を撮っているかを振り返ると。

近所の公園に可愛い犬がいたので撮った。もちろんそのパーソナルな衝動がエベレストより劣っているとは言えないのですが、誰でも日常的に可愛い犬を見ることや撮ることはできます。そこで「そんなの、見たことあるわ」で終わってしまうとしまうと写真の価値はなくなってしまいます。どれほど日常的で平凡なモチーフでもいい写真というのは存在できるんですが、誰もが撮れる状況で他人を感動させるには、針の穴を通すような技術と完成度が必要です。

「沖縄の島で、エメラルドグリーンの海を背景にサラブレッドが走っていたんだよね」と言いながらこれを見せたら「へえ」くらいは驚いてくれそうです。写真にはどんな種類でもいいので見た人の「驚き」があった方がいいと思っています。かと言って絶景ばかりを追い求めていても方向がズレてしまいますから注意しないといけませんけど。

面白いモノが写っていればいい写真かというとそうではありません。次の写真はそれの典型です。

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写真の部屋

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人類全員が写真を撮るような時代。「写真を撮ること」「見ること」についての話をします。

多分、俺の方がお金は持っていると思うんだけど、どうしてもと言うならありがたくいただきます。