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「ググらずに何かを思い出す」:Anizine

誰かと映画とか音楽の話をしていて、思い出せないからとスマホでググり出す姿があまり美しく見えない。自分の脳が記憶していないことはもう潔く諦めるというエレガントなスタイルがあってもいいんじゃないかと思っている。

友人と食事をしたとき、ひとりが「全員スマホを出せ」と言ったことがある。食事が終わるまで誰もスマホに手をかけてはいけないというルールだった。これはなかなかいいなと感じたのだが、ひとりだけガラケーがいたのも別の意味で面白かった。癖というのは恐ろしいもので、1970年代の女性歌手の話題になったとき、ひとりが無意識にポケットに手を突っ込みスマホで調べようとした。それがテーブルの真ん中に積み上げられていることすら忘れてしまっているのだ。



ググらずに何かを思い出す、という筋肉を鍛えておかないと何でもかんでも調べればいいと思ってしまう。待ち合わせをしても時間通りに来なかったり、急に場所を変えたりする。それはある意味で便利になったんだけど、どこかしらの括約筋が緩んできたような気がしてならない。

昔、ある友人から電話が来て突然こう言った。

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Anizine

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写真家・アートディレクター、ワタナベアニのzine。

多分、俺の方がお金は持っていると思うんだけど、どうしてもと言うならありがたくいただきます。