失われた正気。
しばらく前に、知人と居酒屋に行った。
俺は酒を飲まないので、酒を飲む場所では「観察者」になる。マラソンで選手のみんなが死にそうになって走っているところを先導する、白バイ隊員のような立場だ。
正気を失った人からすると冷静なシラフに観察されるのは居心地が悪いだろうけど、それはこちらのせいではない。自分で、失われた正気を求めてプルーストして欲しい。
隣の席にいた上司と若い女性社員らしきふたり。両方ともかなり酔っていた。上司が「俺にいい女を紹介してくれよ」と絡んでいる。女性の方が「無理ですね」と冷たく答える。「なんでだよ」と聞かれて「いい女、なんていう女性を下に見てる人に知り合いを紹介できないですよ」と返す。
俺はなかなかいい展開だなと思ったが、その話はそこで終わってしまい、残念だった。もっとモテない上司を責め立てて欲しかったのに。
ここは有料マガジンなのでハッキリ書いてしまうけど、「モテない男には必ずモテない理由がある」ということ。理由がないのにモテないというのは地球の男女比からしてほぼあり得ない。
多分、俺の方がお金は持っていると思うんだけど、どうしてもと言うならありがたくいただきます。